関西では「麦わらダコに祭りハモ」と言われるように、タコとハモは初夏から盛夏に特に好まれる食べ物のひとつ。
兵庫県明石周辺では、梅雨の水を吸って大きくなると言われているが、今年も梅雨明けを待たずに早々とタコ釣りが始まった。
今期のタコ釣りは釣況がよく、連日釣り人で賑わっている。
タコは頭足類八腕目に分類される軟体動物だ。
頭足類と言うのは、頭のすぐ下に足があり、頭のすぐ上に胴が乗っている面白い生き物だ。
イカもこの仲間なのだが、イカの場合は腕が10本あるから10腕目になる。
タコもイカも、皆さんが頭だと思っている部分が実は胴であり、胴の真下にある目が付いた部分が頭なのだ。
タコは異様ななりをしているため、外国ではデビルフィッシュ(悪魔の魚)と呼んで食べない国が多い。
しかし、タコが大好きな日本人は世界一の消費国として知られている。
ちなみに、世界で消費されるタコの量は約24万トンと言われる。
そのうちの約3分の2、16万トンが日本人の胃袋に収まっているそうだ。
マダコの中には「地付き」と呼ばれるものと、「渡り」と呼ばれるものがあり、渡りは季節によって100km近くも移動するものがいると言われる。
そして、この渡りは、秋から冬にかけてグンと肥え、冬に大ダコになって春に産卵する。
一方の地付きは、明石周辺に多く、年中同じ海域にいて、夏に大きく成長して秋口に産卵する。
明石のタコが夏に珍重されるのは、このためであり、これを浪速っ子が好んで食べたのだ。
東京湾のタコが冬に珍重されるのは、冬によく太る渡りの群れだからかも知れない。
さて、タコ釣りと言えば、羽子板とも呼ばれるタコ掛け道具に、小アジやイワシのエサを縛り付けて、海底をゴトゴト引きずりながら釣るのが定番だった。
ところが、ここ数年の間にタコエギやソフトルアーを使ったタコ釣りが、テンヤの釣りを見事に席巻してしまった。
テンヤよりも軽い仕かけで釣れるから、タコがエギやソフトルアーを触りにきた微妙な感触まで分かるようになった。
小まめに小さく誘いを掛けたり、大きく誘い上げて落としたりと、ゲーム性の高い釣りに変身して、一大ブームが起きたとも言える。
通常、エギは2個付けで釣る人が多いが、中には3個付ける人もおり、エギとソフトルアーを組み合わせたりする。
また、潮や天候によってエギのカラーローテーションを考えたりと、テンヤの釣りにはなかった奥の深さ、面白さが今日のブームを起こしたと言えるだろう。
これから夏場にかけてベストシーズンを迎えるので、週末のタコ釣り乗合船は、予約が取れないほど賑わう。
今年は大型が多く、数も釣れているので、余計に活況を呈しそうだ。