りそくのオフィシャルクラブ、「つりそく船釣りクラブ」のメンバーが、釣りの魅力を紹介。
この記事を参考に、皆さんもどっぷりと釣りの世界にハマってください。

南 雅文(Masafumi Minam) プロフィール
大阪湾唯一の中深海釣り「クログチ」
「グチをこぼす」と言えば、よいイメージはありません。魚のグチもニベ科の魚で、こちらも「ニベもなくふられる」と言うように、残念な例えに使われてしまいます。
投げ釣りではイシモチ(石持)とも呼ばれますが、とかく残念な標準和名「シログチ」は、船釣りでも「なんだ、グチか。あまり美味しくないんだよね」とリリースされてしまう、かわいそうな魚です。
ところが、同じグチでも白とは違う黒。おっとりして優しそうな白に対して、黒は獰猛で鋭い牙があり、口の中が真っ黒の皮膚で覆われるため、「大阪湾のノドグロ」と称されることもあります。
美味であるからこそ「ノドグロ」と比喩されたように、九州では「窯がり」、つまり「お釜ごとを借りてこないと、ご飯がなくなってしまうぐらい食べて美味しい魚」という異名が付くのが、「クログチ」なのです。
水深100mを超える中深海に生息域を持つため、長年、明石海峡と紀淡海峡の最深部に隠れ住み続けてきました。そのおかげで、遊漁として確立されたのも、ここ5、6年のことです。
釣期はタチウオのシーズンが終わってから春まで。エサはサバ、サンマの短冊、ホタルイカなどが使われます。仕かけは2、3本針の胴突き仕かけが市販されており、光り物に反応がよいことも多いため、蓄光のタコベイトや発光するケミ蛍が効果的な場面もあります。
タックルは「タチウオの流用で」と言う方もいますが、私はニベ科の魚は、ファーストアタックでエサを離させないため、食い込みがよい、6:4調子、もしくは5:5の胴調子の竿がよいと思っています。
実は関西ではあまり振り向いてもらえないシログチですが、東京湾では専門船が出ているぐらい釣魚として確立しています。そこでは常連さんたちが軟らかい竿を使い、さらにPEが伸びないため、あえて道糸にナイロンを使用しているほどでした。
また、シログチが美味しくないと言われている理由の1つに、氷締めすると味が淡泊なため、血液の雑味がまじってしまうという点があります。これを防ぐために、横浜の小柴丸の船長に教えていただいたのが、「玉絞め」と言う、グチ独特の血抜き方法です。
やり方は、魚をひっくり返してエラの下を真一文字に切ると心臓が見えます。ここをハサミで真っ二つにすると、短時間で血液が抜け、すぐに氷締めを行えます。私はクログチもこの方法で締めて、美味しく持ち帰っているので、ぜひお試しください。
釣り方のキモは「誘い」です。ただし、ヒットするパターンはいくつかあり、海底から2m前後を大きく誘い、誘い下げでアタリがでる場合と、小さく小刻みに速く動かすパターンがあります。
私もまだ確証は持てていないのですが、潮流の変化に応じて魚の活性がかわることが、その原因ではないかと考えています。
皆さんも釣行前には、海上保安部の潮流情報などを確認して、その日の計画を立てられていると思いますが、例えば、6時半の潮流最速「-1.1㌩」の時は、ゆっくりしたフォールでしか乗ってこなかったのに、転流後の11時過ぎ、潮流「+0.4㌩」では、ゆっくりでは全く反応せず、小刻みに速く動かすパターンで、ようやくアタリがでたなど、パターンの読み取りと、引き出しの多さが問われる、面白い釣りなのです。
クログチは、60cmクラスの怪魚もいて、引きも抜群! とくれば、ファンがどんどん増えそうですが、生息域が狭く、資源保護を考えながら楽しむべき魚であるということは、どうぞご理解ください。
注目レシピ
クログチのオススメ料理を紹介。中深海系の魚は、熱を通した方が脂が旨味にかわるので、塩焼きがよいです。中でも私のオススメは、唐揚げの中華あんかけ。子供たちも、残さずに食べてくれます。