アタリがあると、大の大人が「あっ!」とか「うっ!」とか、声にならない悲鳴を上げる、タイラバ釣り。落として巻くだけなのに、釣り人をそこまでに夢中にさせるタイラバ釣りの魅力とは、一体何だろう?
気が付けばいつの間にか、ひと通りのタックルが揃ってしまう。面白いもので、タックルを揃えると釣れなくなるのが、タイラバあるあるだ。
やがて、懇意になった遊漁船通いが始まり、状況に応じたさまざまなパターンを学び、対応する引き出しの数も増えてくる。
料理好きな釣り人なら、季節毎の味わいを探求する楽しみもある。
シーズナルなパターンを克服すると、さらなる大ダイを求め、新たな漁場へ挑戦したくなってくるものだ。
タイラバ沼にハマった人にオススメ
「大ダイ乱舞の玄界灘」
そんなアナタにオススメしたいのが、今年の玄界灘だ。何しろ釣れるマダイがデカい。
4月12日にはチームササラボの小林元太氏がマリブ号で88cmを、4月19日に筆者が釣行した時には、関西から参加したメンバーが今年最大魚の89cmを、そして、今回の5月8日の釣行ではチームササラボの大渕毅氏が82cmを釣り上げている。

小林元太氏

大渕毅氏
出船できれば、憧れの80cm超を誰かが釣り上げている訳で、博多は遠いと思われるかも知れないが、新幹線でわずか2時間半、ランカーを手中にしようと思えば、行かぬ手はあるまい。
乗船場は、博多の中心部からすぐ近く。翌朝3時過ぎに博多湾伊崎漁港に集合し、3時半に出航した。
玄界灘には壱岐の勝本沖、沖ノ島周辺、七里ケ瀬など、数多の漁場がある。ちなみに七里ケ瀬は壱岐の真北、対馬の東に位置する長さ9.3km、幅3.7kmからなる広大な天然岩礁。
南西から流れる暖流がその巨大な瀬にぶつかり、湧昇流を発生させ、大型魚がベイトフィッシュを捕食しやすい環境を作り出している。そこにクロマグロやキハダ、カツオ、カジキも回遊する。だから、キャスティングやジギングで大ヒラマサや10kg超のブリ、乗っ込みの大ダイの好漁場なのだ。
博多から、そんな魅惑の漁場への日帰り釣行を、伊崎漁港の釣り船が実現してくれた。船長は漁師の知己も多く、釣り場を熟知している。乗船者へのアドバイスも実に的確である。
船は私が知る限り、装備と言い、キャビンの快適さと言い、タイラバ船としては日本一。全長66フィート、アンチローリングジャイロを搭載し、海が荒れても揺れずに釣りを楽しむことができる。
エンジンの出力は、何と850馬力、最速32ノットを誇る。通常は3時間以上かかる沖ノ島や対馬の漁場まで、博多からわずか2時間で到着できる。揺れないのでベッドやレカロのバケットシートで2時間熟睡することができる。
トイレはマリントイレではなく、ウォシュレット付きの家庭用のタイプ。そうした、細やかな船長の心配りが嬉しい。
先の小林元太氏に、ここに通い詰める理由を伺うと、「とにかく快適に釣りを楽しむことができること、通常の遊漁船では遠くて行けない漁場まで、この船なら足を伸ばすことができ、大ダイと出合う可能性が極めて高い」と語った。
エンジンの回転も落ち、ベッドから起き上がると、すでに夜は明けていた。対馬の東海域の漁場に5時半に到着し、スタートフィッシング。
船長は、船の流れる方向や魚探反応を見極めながら、ポイント移動を繰り返し、魚影が映し出される水深をアナウンスしてくれる。朝のうちはボトムに集中した魚探の反応が多かった。
ここでの釣り方は、全員が片舷で釣るドテラ流しで、広大な瀬を広く探っていく釣法だ。水深は80~100m、船速は0.6~1.2ノット、風と潮流によってヘッドは80~120gを使い分けた。
船が風で流されるので、1回着底する毎に、タイラバは船から遠退いていく。着底が分からなくなったらピックアップして、ボトムを取り直す。
ラインは200m以上も引き出されることもある。だから、リールはハイギアタイプが断然有利だ。
7時11分、ユーチューバーの沼田氏が60cmのマダイを釣り上げ。7時31分、ミヨシの大渕氏が66cmのマダイをキングコブラのプロトモデルで釣り上げた。

キングコブラのプロト
8時56分、小林氏がマハタをキャッチ。続く9時1分、十川敬夫氏がひと際大きなマハタを釣り上げた。時系列で釣果を列挙するだけでも、この海域がいかに豊かな漁場であるか、ご理解いただけると思う。
そして、9時39分、ミヨシで竿を出していた大渕氏のドラグサウンドが、船上に鳴り響いた。ロッドの叩き方が尋常ではない。
そこは百戦錬磨の大渕氏である。大ダイに主導権を取られることなくリールを巻き続け、少し沖合に浮かび上がったのは、この日最大の82cmの大ダイであった。

大渕毅さん82cmの大鯛
ネクタイはキングコブラのデュアルオレンジゼブラ。「フォールの時からマダイが付いてくる感触があったので、着底後はすぐに巻き上げ、追わせるように徐々に巻きスピードを早めていったのが奏効したのでは」と語った。
船長によれば、「例年と比較して、水温が低いせいか、まだ宙層でガンガンとアタってくるような状況ではない」と言う。重めのヘッドを装着し、タイラバが浮き上がらぬように、できるだけボトムをトレースさせる方が、よいそうだ。

佐々木・小林さんダブルヒット
大型マダイ狙いと言っても、特別にハードなロッドを準備する必要はない。ロッドの調子はミディアムクラスで十分だ。
釣果のみならず、ご当地グルメを楽しむのも、遠征の魅力である。
釣行前夜に博多に入り、博多メンバーの計らいで、九州タイラバの会御用達の「ちゃんこ まる直」に案内された。
地元で愛される豊かな食文化や純米吟醸・鍋島を心ゆくまで堪能し、現地のタイラバ仲間と釣り談義に耽るのも、豊かな釣り人生の一頁である。
筆者のタックル
ロッド:エンゲツ リミテッドFS B66M
リール:オシアコンクエストCT200HG
ライン:ハードブル 8+0.8号
リーダー:フロロカーボンリーダー4号(4.5m)
フック:鯛ラバPEアシストフック「佐々木流IPPON勝負」バーブレスM、L、喰わせ鈎/バーブレス 8号、10号、12号、14号
タイラバヘッド:バクバク TG45、60、70、90g、ドテラバクバク100、120、150、200g
タイラバネクタイ:キングコブラ(プロト)、シングルコブラカーリー、コブラスリムカーリー、トラッドピンテール