11月30日、大阪・泉佐野を舞台に開催された「大阪湾タチウオKINGバトル2025」ファイナル。予選を勝ち抜いた精鋭たちによる頂上決戦は、今年もハイレベルな攻防が繰り広げられました。
結果速報は既報の通りですが、本記事では「なぜ彼らは釣れたのか?」という核心部分を深掘りします。 第13代目の頂点に立った小牟田俊寿選手をはじめ、上位3名が入賞を手にした「思考」と「戦略」、そして勝負を分けた「タックルセッティング」を詳報します。

【第1位】 13代目キング・小牟田俊寿選手「『追わせる精度』を極めた王者の戦略」

見事、激戦を制し第13代目キングの座に就いた小牟田選手。 その勝因を尋ねると、返ってきた言葉は「追わせる精度」。セミファイナル以降、これだけを突き詰めたと言います。1回のアタリを確実に1尾の釣果に変える、その精度の高さが勝敗を分けました。
■状況判断:水深の変化に合わせた「剛」と「柔」
当日は、時間帯によってタチウオの活性と水深が大きく変わる展開でした。小牟田選手はこれを明確に二分して攻略しました。
前半(高活性・浅場): 魚探の反応に素直な個体が多かった朝イチ。「ストップ&ゴー」を主体に早めの巻きで誘いました。
後半(深場・120〜140m): 水深が深くなり、底中心の展開へ。ここで小牟田選手が意識したのは「糸フケの排除」です。 水深130mラインでは、手巻きだけの誘いではラインのスラック(糸フケ)が出てしまい、テンヤが動きません。そこで「電動微速巻き」を常に入れ続けることでラインテンションを張り、その上で「強めのジャーク」を入力。深場でもしっかりとテンヤを動かし、アピールさせる技術が光りました。
■勝負の鍵:エサの「硬さ」を使い分ける
エサはサンマを使用しましたが、ここにKINGの細やかな戦略がありました。用意したのは「硬め」と「柔らかめ」の2種類。
硬め(高活性時): エサ持ちが良く、交換の手間を減らすため、手返し重視の前半戦で使用。
柔らかめ(渋い時): 食い込みを重視。後半の渋い時間帯、小さなアタリでも違和感なく食い込ませ、追わせるために投入。
この「エサの質感」へのこだわりが、バラシを減らし、キャッチ率を高める要因となりました。
■タックル&テンヤ:迷いなき「一点突破」

多くの選手が迷う中、小牟田選手はテンヤを「船太刀魚テンヤ TG フッ素コーティングフック」のバーストシュリンプのケイムラカラー 1種類に絞りました。 プラクティスの段階から「明らかにケイムラが効いている」という確信を得ており、迷いを排除して釣りに集中したことが奏功しました。
【Tackle Data】

ロッド: 極鋭タチウオテンヤSP EX 91-170
リール: シーボーグ100J
テンヤ: 船太刀魚テンヤ TG フッ素コーティングフック・バーストシュリンプ(ケイムラ)
エサ: サンマ(硬め・柔らかめの2種ローテ)

「勝因は『追わせる精度』これに尽きます。タチウオがテンヤを噛んだ状態でついてくる、その状態を作り出すコツをプラクティスで見つけました(※詳細はご本人のYouTubeで公開予定とのこと!)。来年は子供が生まれるため、家族との時間を大切にしたいので、今までのように完璧に仕上げるのは難しいかもしれませんが、KINGとしての誇りを持って、挑みたいと思います」
【第2位】 石永浩章選手「1尾に泣いた準優勝。徹底した『色』と『針』の戦略」

優勝まであとわずか1尾。この接戦を演じた石永選手は、極度の緊張感の中でも冷静でした。 「プラクティスの段階で答えは出ていた」 彼が迷いなく選択し続けたのは、特定のカラーと、状況に合わせたフック(針)のローテーションです。
■「グローは捨てた」迷いなきテンヤセレクト

多くの選手がカラーローテーションに悩む中、石永選手は「船タチウオテンヤSS TG」のケイムラアカキンを1日通して使用し続けました。 その理由は「グロー(夜光)系が入っているとアタリが弱くなる。逆にケイムラアカキンなら明確なアタリが出る」というプラクティスでの分析。当日の状況でもその仮説を信じ抜き、カラーに迷う時間を排除したことが、ハイペースな釣果に繋がりました。
■逃さないための「フック・ローテーション」
タックル構成で特筆すべきは、時間帯による「フックサイズ」の使い分けです。
前半(小型・高活性): 「ショートフック」を選択。小型のタチウオがジャレついてくるようなアタリに対し、即掛けで手返しよく数を稼ぐ攻撃的なセッティング。
後半(良型・底狙い): 「ミドルフック」へ変更。型が良くなったことで、ショートフックによるバラシや身切れのリスクを回避。確実にキャッチする「守り」のシフトチェンジを行いました。
【Tackle Data】

ロッド: 極鋭タチウオテンヤSP EX 91-170
リール: シーボーグ100JL
テンヤ: 船タチウオテンヤSS TG・ケイムラアカキン
フック:ショート(前半)→ミドル(後半)
エサ: サンマ(エビ粉を大量にまぶして集魚力強化)
【第3位】 坂匠選手「状況変化を捉えた『柔』と『剛』のシフトチェンジ」

ハイレベルな接戦の中、2位と同数、長寸差で3位に入賞した坂選手。「優勝以外は負けと同じ」と語る彼が、激戦の中で見せた冷静な状況判断と、後半にハマった独自の「電動誘い」メソッドを紹介します。
■即掛けから「寄り添う」釣りへ。ロッドチェンジの判断
スタート直後の高活性時は、「極鋭タチウオテンヤSP EX 91-170」を選択。レスポンスの良い硬めのロッドで、アタリを即座に掛ける攻撃的な釣りを展開しました。
しかし、2流し目以降に状況が一変。「タチウオがエサを追わなくなった」と判断するやいなや、ロッドを「同 82S-177」へ持ち替えました。 活性が落ちたタチウオに対し、カーブフォールや縦のフォールを織り交ぜながら、違和感を与えず「タチウオに寄り添う」アプローチへシフト。この柔軟な対応力が、タフな時間帯でもアタリを引き出し続ける鍵となりました。
■後半の切り札は「電動ピックアップ誘い」
後半戦、さらなる釣果を上積みさせたのが電動リールの機能を活用したテクニック。 「ピックアップボタン(チョイ巻き)」を活用し、「チョンチョン」と機械的かつリズミカルに誘い上げることで、リアクション気味にスイッチを入れるパターンが炸裂。特にこの誘いの後のフォールで強いアタリが多発しました。
【Tackle Data】

ロッド: 極鋭タチウオテンヤSP EX 91-170(朝イチ)→82S-177(2流し目以降)
リール:シーボーグ100J
テンヤ: 船タチウオテンヤSS TG 早掛けショート・ホロマイワシブルーグローゼブラ、船タチウオテンヤSS TG・ケイムラアカキン、船タチウオテンヤSS ST ミドルフック MR・UVパッションピンクグローゼブラ、UVパッションゴールド
エサ: サンマ(軽締めアミノリキッド漬け、ウマミパワー 大漁ボトル エビ、アミノソルトガーリックシュリンプ等で硬さを調整)

上位入賞者に共通していたのは、「事前のプラクティスで得た確信(カラーやエサ)」を迷わず実行する精神力と、「当日の時間変化(水深・活性)」に合わせてロッドやフック、エサの硬さを微調整する適応力でした。
KINGに返り咲きを果たした小牟田選手。優勝が決まった瞬間、「前回泣いたので、今回は泣かない」と言っていたものの、こらえきれずに涙する姿。1尾差で優勝を逃した2位の石永選手と3位の坂選手。それぞれにストーリーがあり、バトルがあります。今回も熱き戦いを見せてくださって、ありがとうございました。
次回の記事では、ファイナリスト全選手の「使用タックルデータ」を一挙公開予定です。

























