1尾差の死闘。その裏にあった「選択」とは?

2025年、大阪湾タチウオKINGバトルファイナル。 のべ約1000人の参加者の中から勝ち上がったファイナリスト18名と、前年KING、初代QUEENの全20名による頂上決戦は、優勝・小牟田俊寿選手(51尾)、準優勝・石永浩章選手(50尾)、3位・坂匠選手(50尾)という、上位3名がわずか「1尾差」にひしめく激戦となりました。
極限のプレッシャーの中で、彼らは何を選び、どう戦ったのか。 つりそく編集部では、ファイナリスト全20名にアンケートを実施。ここには、2026年のKINGを目指すためのヒントが詰まっています。
まずは、20名のデータから導き出された「最新トレンド」を分析します。
Part 1:ファイナリスト20名の傾向分析
【ロッド】「掛け」と「乗せ」の使い分けが勝負の鍵

使用率No.1はダイワ『極鋭タチウオテンヤ SP EX』シリーズ、次いでシマノ『サーベルマスター』シリーズが続きました。 特筆すべきは、「状況に合わせたロッドチェンジ」です。優勝した小牟田選手をはじめ、多くの選手が9:1調子(即掛け)と8:2調子(追わせ・目感度)の2本を船に持ち込み、その日の活性や時間帯によって使い分けていました。「1本で通す」よりも「アジャストする」柔軟性が求められています。
【リール】「シーボーグ100J」が席巻
リールの小型・軽量化が止まりません。特にダイワ『シーボーグ 100J』の使用者が急増。「軽さは感度」であり、長時間の集中力を維持するための武器となっています。シマノ勢も『フォースマスター200/400』などの小型番手が主流です。
【エサ】9割が「サンマ」。勝敗を分けたのは「加工」
エサは「サンマ」が圧倒的シェア(約9割)を獲得。しかし、市販品をそのまま使う選手は皆無と言ってよいでしょう。 「アミノ酸リキッドで締める」「内臓を見せるように巻く」「干し芋くらいの硬さにする」など、各自が「エサ持ち」と「食い込み」のバランスを独自に追求していました。
Part 2:ファイナリスト20名 タックル&戦略データ
ここからは、ファイナリスト全20名のアンケート回答を公開します(ファイナル開催前に回答いただいています)。トップランナーたちの「手の内」をご覧ください。
【TOP 3】表彰台に立った3人の選択

テンヤタチウオ歴: 6年
ロッド: [Main] 極鋭タチウオテンヤ SP EX 91-170 / [Sub] 同 82-174
リール: [Main]シーボーグ 100J
愛用テンヤ:船太刀魚テンヤ TG フッ素コーティングフック
エサ: サンマのみ。柔らかめに仕上げてこまめに交換するスタイル
こだわり・スタイル: 状況に合わせ、即掛け(9:1)・追わせ(8:2)を使い分ける。リアクション系が得意
勝因: 釣座と経験値。数釣りルールでもNo.1になるため参加

テンヤタチウオ歴: 2年
ロッド: [Main]極鋭タチウオテンヤ SP EX 91-170 / [Sub] 同 82-177
リール: [Main] シーボーグ 100JL / [Sub] フォースマスター 601DH
愛用テンヤ:船タチウオテンヤSS TG
エサ: フィールドでイワシとサンマを使い分け。アミノリキッドで軽締めし、専用の粉で締める
こだわり・スタイル: EX91-170での即掛け基準。渋い状況でいかに釣るかを考えるのが好き
勝因: 仲間の声掛けで緊張がほぐれ、いつも通りの釣りができた

テンヤタチウオ歴: 5年
ロッド: [Main] 極鋭タチウオテンヤ SP EX 82-174 / [Sub] 同 82S-177
リール: [Main] シーボーグ 100J / [Sub] 同 200J-DH
愛用テンヤ: 船タチウオテンヤSS TG、掛獲船太刀魚テンヤ
エサ: サンマとイワシ(サンマメイン)。とにかく丁寧に真っ直ぐ付ける
こだわり・スタイル: 当日のアタリ方や海の状況でロッドを選択。アタリダナ発見後、連発まで持っていくスピードの速さが自慢。カーブフォール中のアタリを捉えるのが好き
ファイナリスト データファイル(順不同)

テンヤタチウオ歴: 8年
ロッド: サーベルマスター エクスチューン テンヤ 82H 172
リール: フォースマスター 200DH
テンヤ: 船太刀魚テンヤ TG フッ素コーティングフック
エサ: サンマ。エサ持ち重視で硬めにしている
スタイル: 追わせの釣りがメイン。タナが絞られている時が得意
こだわり: フロロリーダー12号に大きめのスナップ(切られにくいように)
テンヤタチウオ歴: 5年
ロッド: 極鋭タチウオテンヤSP EX 91-170
リール: フォースマスター 401
テンヤ: 船タチウオテンヤSS TG
エサ: サンマ。年中硬めで尻尾を長めに
スタイル: 即掛け、強ジャーク
こだわり: 9:1ロッドのみ使用(82Hは9:1感覚で使用)

テンヤタチウオ歴: 2年
ロッド: サーベルマスター リミテッド91 HH 170
リール: シーボーグ200J
テンヤ: 船太刀魚テンヤ TG フッ素コーティングフック
勝因: よく練習すること
テンヤタチウオ歴: 5年
ロッド:極鋭テンヤタチウオ 91-172
リール: シーボーグ100JL
テンヤ:船タチウオテンヤSS TG
エサ: サンマ。切り方に少しこだわりあり
スタイル: 変幻自在。強弱、遅速、即掛け・食わせを使い分け、コロコロ変わるパターンに対応する

テンヤタチウオ歴: 1年
ロッド: サーベルマスターエクスチューン 91 H 173
リール: フォースマスター 400DH
テンヤ:船タチウオテンヤSS TG、船太刀魚テンヤ TG フッ素コーティングフック
エサ: サンマ。状況によりシルエットを大小させて使う
スタイル: 初期アタリまでは強めのジャーク、そこから小刻みに動かして追わせる
こだわり: タックルは軽さ重視。潮が速い時は基本、硬い竿を使う
テンヤタチウオ歴:4年
ロッド:極鋭タチウオテンヤ SP EX 82-174
リール: シーボーグ 200J
テンヤ: 掛獲船太刀魚テンヤ、船タチウオテンヤSS TG
エサ: サンマメイン。極度の渋り時にイワシも使う
スタイル: 激しい釣りはしない。中活性での釣り
こだわり: 8:2調子のロッドのみを使っていること
テンヤタチウオ歴:3.5年
ロッド:極鋭タチウオテンヤ SP EX 91-170
リール: シーボーグ 200J
テンヤ: 船タチウオテンヤSS TG、船太刀魚テンヤ TG フッ素コーティングフック
エサ: メインはサンマ、しっかり目に巻く。後ろから前へ巻く
スタイル: 積極的な誘い。釣座によって戦略を変更・修正する
こだわり: 自分がしたい釣りを展開しやすいタックル選び

テンヤタチウオ歴:7年
ロッド:イグレイCutlass fish TENYA 太刀魚テンヤ CFT-66M
リール:フォースマスター 400
テンヤ: 船タチウオテンヤSS AH(フルグローブルーゼブラ)、同SS ST(威嚇チャートグローポイント)
エサ: サンマのみ。干し芋の硬さ基準。三枚おろしの半分を身表につけ、25cmの短いワイヤーで手返しアップ
スタイル: ストップ&ゴーのみ。7:3調子での大きなアワセの即掛け
こだわり: 予備も同じセッティング。ノーマルフックのみ使用。カラーを1種に絞り込み、迷わない

テンヤタチウオ歴:5年
ロッド: 極鋭タチウオテンヤ SP EX 82-174
リール: シーボーグ 100JL
テンヤ:船タチウオテンヤSSシリーズ、ザ・タチウオテンヤ
エサ: 大阪湾ではサンマ。状況によるシルエット調整
スタイル: ノンストップバイブレーション
勝因: 「必ず自分のターンはやってくる」と思い諦めないこと
テンヤタチウオ歴:6年
ロッド:極鋭タチウオテンヤ SP EX 91-170
リール: シーボーグ 200JL-DH
テンヤ: 船タチウオテンヤSS TG (ゼブラ系)
エサ: サンマ、上丸イワシ。状況にもよるが、テンヤの針よりはみ出さないように付ける
スタイル: 即掛けせず、アタリがあれば竿でさびき、引き込むまで追わせ続ける(上丸掛け)

テンヤタチウオ歴:5年
ロッド:タチウオテンヤ MS H173
リール:シーボーグ 100J
テンヤ: 船タチウオテンヤSS TG、ハルトオリジナルカラーテンヤ
エサ: サンマ、イワシ
スタイル: ノンストップバイブレーション中心。当たってからはしっかり追わせて掛ける

テンヤタチウオ歴:5年
ロッド: 極鋭タチウオテンヤ SP EX 82-174
リール: シーボーグ 200J
テンヤ: 船タチウオテンヤSS TG
勝因: 釣座が良かった
テンヤタチウオ歴:9年
ロッド: タチウオテンヤ MS H173
リール: フォースマスター 400
テンヤ: 船タチウオテンヤSS TG
エサ: サンマメイン。エサの締め具合を変えている
スタイル: 基本は即掛け。活性に応じて竿の硬さを使い分け
テンヤタチウオ歴:4年
ロッド: サーベルマスター エクスチューン 91 H164
リール: フォースマスター 401DH
テンヤ: 船タチウオテンヤSS TG、船太刀魚テンヤ TG フッ素コーティングフック
エサ: サンマのみ。シルエットが大きくなりすぎないよう注意
スタイル: 東京湾×大阪湾のハイブリッド。強い誘いでスイッチを入れるのが得意
テンヤタチウオ歴:4年
ロッド: サーベルマスター エクスチューン 82改
リール:フォースマスター 600
テンヤ: 船タチウオテンヤSS TG
エサ: サンマ。めちゃくちゃ柔らかくしている
スタイル: 誰もしていない誘い(アジングから着想)。探見丸を使えない船にあえて乗って鍛えた

テンヤタチウオ歴:6年
ロッド: 極鋭タチウオゲーム RT SC
リール: シーボーグ 100JL
テンヤ: 船タチウオテンヤSS TG ミドル/早掛けショート
エサ: サンマのみ。下から包み込むように付け、ハリスの軸を隠す
スタイル: 高活性ならノンストップバイブレーション、低活性なら「こんにゃく」。人と被らないテンヤを使う戦略

テンヤタチウオ歴:3年
ロッド: 極鋭タチウオテンヤ SP EX 91-170
リール: シーボーグ 200J
テンヤ: 船タチウオテンヤSS TG
スタイル: ワンピッチジャーク
勝因: いち早くタナを見つけたこと(QUEENバトル優勝)
まとめ:1尾の重みを知る者たちのデータ
20名のファイナリスト、それぞれの戦略がありましたが、共通していたのは「自分のスタイルを信じつつ、状況にアジャストする柔軟性」でした。 51尾と50尾。この1尾の差は、タックル、エサ、そしてメンタルの全てが噛み合った瞬間に生まれるものなのかもしれません。
今回のデータが、皆さんの普段の釣行、そして来たる「大阪湾タチウオKINGバトル2026」への挑戦の一助となれば幸いです。

























