
3月に入りました。冷たい風の中に、ふとした瞬間に春の匂いが混じるようになると、三重県名張市の釣具店「プロショップかつき」さんの店内は、どこか独特の熱気を帯び始めます。
狙いは、産卵を控えて浅場に差してくる「春のアオリイカ」です。 エギングも魅力的ですが、生きたアジを抱かせ、イカとの距離をじりじりと詰めていく「ヤエン釣り」には、他の釣りでは決して味わえない、心臓の鼓動が耳元まで聞こえてくるような緊張感があります。
「春のヤエンは、一投の重みが違いますからね」

プロショップかつきの西森店長
そう笑顔で迎えてくれたのは、西森店長です。 プロショップかつきさんは、アユ釣りやバスフィッシングの聖地としても知られていますが、実はソルト、特にヤエン釣りに関しては、遠方からベテランが通い詰めるほどのディープな品揃えを誇っています。

品揃え豊富なヤエンコーナー
今回は西森店長に、「これさえあれば、春のモンスターに出会える」という、信頼の4アイテムを厳選していただきました。
1. 迷ったらこれ。王者の安定感「アオリヤエン必掛」(ヤマシタ)

まず西森店長が手に取ったのは、定番のヤマシタ『アオリヤエン必掛』です。
特徴は、何と言ってもその「直進安定性」にあります。3点式の支柱がラインをしっかりホールドし、投入からイカへの到達まで、まるでレールの上を走るようにスムーズに進んでくれます。
「春のデカイカは警戒心も非常に強いです。ヤエンが途中でフラついたり、ラインに絡んだりするだけでチャンスを逃してしまいます。この『必掛』は、その名の通り、確実にイカの元まで届いてくれる安心感があります。初心者からベテランまで、最初の一手としてこれ以上の選択肢はありませんね」
2. 驚異の滑走性能でイカに迫る「A-RB ラインローラーヤエン」(シマノ)

続いて紹介されたのは、シマノが誇るロングセラー、ハイテクヤエンの代名詞とも言える『A-RB ラインローラーヤエン』です。
「これは、とにかく滑りの良さが段違いです」と、店長はラインローラー部分を指差します。 ベアリングに「A-RB」を搭載したラインローラーを採用しており、摩擦抵抗を極限まで軽減。緩やかな角度でもイカの元へとスルスル滑り落ちていきます。

「特に遠くのポイントでイカを掛けた時や、足場が低くて角度がつきにくい状況で威力を発揮します。この滑走性能があるからこそ、イカに違和感を与えずにヤエンを潜り込ませることができるんです。お値段は少し張りますが、確実に一歩先を行くための、まさにハイテク武装ですね」
3. 知る人ぞ知る、和歌山の職人魂「のんきヤエン」(マル呑印)

「実は今、一番手に入りにくいのがこれなんです……」 店長が申し訳なさそうに、しかし誇らしげに見せてくれたのが、和歌山の職人が一本ずつ手作りしている『のんきヤエン』です。
一見オーソドックスな形状ですが、そこには現場主義のこだわりが詰まっています。ローラー付きで滑りが良いのはもちろん、サイズごとに針の数や角度が絶妙に調整されており、どの角度から突っ込んでも「勝手に掛かる」と言われるほどの捕獲率を誇ります。
「手作りなので生産数が限られていて、入荷してもすぐに売れてしまうんです。あえて飾らない美しさと、現場で叩き上げられた本物の機能。もし店頭で見つけたら、迷わず手に取っていただきたい逸品ですね」

4. 命のアジを、最高の状態で。「ライブウェル循環生簀ハイパワーTC50ストロング」(プロックス)

ヤエン釣りにおいて、ヤエン以上に重要なのが「活きアジ」の存在です。元気のないアジには、春のデカイカはなかなか振り向いてくれません。 そこで西森店長が「これが今のトレンドです」と太鼓判を押すのが、プロックスの『ライブウェル循環生簀ハイパワー TC50ストロング』です。

「これは単なるバッカンではありません。強力なポンプで海水を循環させ、アジに常に新鮮な酸素を供給します。特に春は移動距離が長くなることもありますよね。釣り場に着いた時にアジがピンピンしているかどうかで、その日の釣果の8割が決まると言っても過言ではありません」

シガーソケットから電源を取れるハイパワー仕様。遠征派のヤエン師にとって、これはもはや「最強の武器」と言えるでしょう。

「春の海は一見静かですが、水面下では熱いドラマが起きています」と西森店長は締めくくってくださいました。
名張の街から海へ向かう道中、期待に胸を膨らませてプロショップかつきさんに立ち寄る。店長と交わす「最近、どこで上がってる?」という何気ない会話も、釣りの楽しみの一部です。
最高の道具を揃え、万全の体制で海に立つ。 糸の向こう側に潜む、キロオーバーの衝撃。その準備を整えるなら、今が絶好のタイミングです。























