待望の大ダイの乗っ込みシーズンがやってきた。陽光に誘われ、ついつい遠くに足を伸ばしたくなるのもこの季節。幸いなことに3月に入って関西の緊急事態宣言もようやく解除、今年も大ダイとの出合いを求めて宮崎へ行こうと決心した。
大ダイを求めての釣行先は日南市の遊英丸
私が懇意にしている遊漁船は日南市南郷の遊英丸。船長の濱名督英氏は子供の頃からの大の釣り好きで、釣具店で働きながら九州各地を釣り歩き、日南海岸の釣り船で3年間の修行を積み、南郷の外浦港で念願のタイラバとジギングの遊漁船を開業した熱血漢だ。
濱名船長に電話を入れ、大ダイ狙いのベストシーズンを伺うと、南国は春の訪れも早く、マダイは3~4月になると、すでに産卵期を迎えて食い渋る。だから、2月下旬~3月上旬の乗っ込みのタイミングがベストと言う。
このタイミングを見極めるのが難しい。それにしても瀬戸内海よりも2カ月早いタイミングである。
次にマダイが食いだすのは5月になってから。この季節になるとイワシの群れが入り、翌年2月までタイラバで安定して釣れ盛ると言う。そんな訳でマスクと手指消毒用アルコールを持参して、陽春の宮崎へ飛んだ。
日南市は宮崎県南部に位置し、九州の小京都と称される飫肥や、風光明媚な日南海岸国定公園を擁する歴史と自然豊かな観光の街。
かつては新婚旅行先として人気を集め、あの坂本龍馬も新婚旅行先の宮崎で釣りに興じたという記録が残されているから興味深い。

鬼の洗濯板と呼ばれる奇岩が並ぶ青島
レンタカーで空港から南郷へ向かう「ひむか神話街道」は神話の宝庫。車窓から眺める日南海岸の雄大な景色は圧巻である。少し走るとギザギザの岩が整然と並ぶ「鬼の洗濯板」と呼ばれる奇岩に囲まれた青島があり、千二百年の歴史を有する青島神社が鎮座する。
神話の山幸彦と豊玉姫のロマンスの地でもあることから、縁結びの神様として人気を集めている。
さらに南下すると「鵜戸さん」の名で親しまれると鵜戸神宮がある。太平洋に突き出した鵜戸崎岬の突端にある洞窟に鎮座する朱塗りの色鮮やかな御本殿だ。
神社としては珍しい「下り宮」で、岬のまわりには奇岩が連なり、太平洋の荒波が打ち寄せる景勝地は平成29年に国の名勝に指定。また、安産の神様とされ、宮崎では大正の初め頃まで結婚すると鵜戸神宮へお参りする風習があったと言う。
瀬戸内に比べポイントが広い日向灘
茫々たる太平洋を眺めていると、島々が散りばめられた瀬戸内海とは異なり、大ダイの居付くポイントが絞り込めない。船長にマダイの漁場を伺うと、北は鵜戸神宮の鵜戸崎岬から、南は日向灘の南端、都井岬(といみさき)までの水深50~100mを超える海域までを攻めていると言う。ポイントは天然・人工の魚礁周りの砂地やゴロタ石のある場所を潮に乗せて流し釣る。
この日は進路を南に取り、潮が動く都井岬沖を目指した。ご存知のように、都井岬は鹿児島県志布志湾の東端かつ日向灘の南端の岬で、砂泥岩の山地が突出した絶壁は野生の御崎馬が棲息する国の天然記念物だ。都井岬前の小島はあのイモを洗う猿で有名な幸島だ。
出港して約45分、船長は乗っ込みのマダイが居付く水深50mラインに船を停め、スタートフィッシング。ここでの釣り方はドテラ流しが中心だ。瀬戸内海のように干満で流れる潮ではなく、海流に左右される。だから、風も利用して極力広い範囲を探るのが有利だ。
ただ飛ぶように潮が流れる時は、スパンカーを張って船を立てて釣る。

しかし、アタリは少なく、1時間後に釣友に40cm超えるオオモンハタがヒット。早春の水温低下と潮の動きがパッとせず、食いが渋いようだ。
目下、私が開発中の、緩い流れでもよく動く、食い渋った時に威力を発揮する「佐々木特性ネクタイ」にチェンジした。
すると、いきなり50cmのマダイがヒットしてきた。このネクタイ、形状にコブラの頭のような膨らみを持たせ、弱い水流でもその膨らみが団扇のように動き始め、生命感溢れるそのアクションはタフなコンディションで威力を発揮する。

まずはマダイがヒット
立て続けに、マダイのようなアタリがあってロッドを締め込んだのは、50cmのシロアマダイであった。
アマダイはマダイのようなアタリではあるが、途中で引かなくなり、いったん宙層であがいた後に、最後に船べりでもう1度暴れるのが特徴である。「これはアマダイかな?」と言いながら、釣り上げてみると、高級なシロアマダイでびっくり。
これもコブラ型の手作りネクタイでの釣果であった。船長によれば、70cmを超えるシロアマダイがタイラバによくヒットしてくると言う。このサイズのシロアマダイがコンスタントに釣れているということは、まだ漁場が荒れていない証拠であろう。
船長は50mラインの漁場を見切り、70~80mラインの魚礁から少し離れた実績のあるポイントに船を移動させた。
ポツリポツリと根魚のマハタやオオモンハタ、アオハタ、ガシラが釣れ盛る。たまに、マダイのアタリかと思うと、よいサイズのレンコダイであった。
いつもの乗っ込みポイントにまだマダイが少ないということは、少し時期が早かったのかもしれない。乗っ込みのタイミングを見極めるのは難しく、ましてや遠征釣りとなると、そうそう簡単にスケジュールを変更することもできない。
そんなことを、考えていると、突然私のロッドが海面に突き刺さった。これまでにない重量感である。グイグイとラインを引き出していくが、どうもマダイの引きではない。サメならば頭を振るし、青物のような走りもない。
ドラグを引き出したり、巻き上げたりと、やり取りを繰り返すうちに、白い魚体が海面に浮かび上がった。何と80cmのオオニベであった。それにしてもタイラバに巨大なオオニベがヒットするとは恐るべしである。
通い慣れた漁場でスキルアップを積み、記録更新を狙うのも、釣りの楽しみである。また、大ダイが潜む魅惑の漁場に足を運び、地域の文化に接し、地の酒や産物に舌鼓を打つのも釣りの楽しみである。
いち早い、コロナの収束を願い、今年こそはさらなる記録更新を目指したいものだ。