初夏から夏にかけては、比較的さまざまな魚種が狙えるようになってくる季節。
オフショア(船やボート)からの釣りで、その地域ごとに多彩な魚種を狙える釣りのひとつがスロージギング。
今回はそんなスロージギングのお話。
スロージギングってナンだ?
スロージギングって、ではどう定義するの?というと意外や難しく、正直分からないというのが個人的な感想。
誘いがスローなの?といわれれば、スローな時もあれば、そうじゃない速めのピッチで攻める時もありますし、また魚種によっても違う。
ひとついえるのは、「フォールを入れて食わせる」というのがキーになるのではないかと思います。
竿をシャクって(シャクり方の速い・遅いはひとまず置いておいて)、メタルジグを持ち上げ、持ち上がったジグが一瞬止まってそこから落ちていく(フォール)。

根魚はスロージギングで狙うのに最適なターゲット。写真はウッカリカサゴ
ジグの特性や潮の速さなどによってヒラヒラと落ちたり、割とストーンと落ちたりするのですが、いずれにしても、しっかりフォールでジグを見せる時間を取る。
基本的にはメタルジグをフォールでいかにエサに見せられるか、そのために道具や誘い方、ジグをパズルのように組み合わせていく釣りだと思います。
狙える魚も、根魚や青物、ヒラメなどのフラットフィッシュ、タチウオなどなど、バラエティー豊か。釣行エリアや時期に応じて楽しめる釣りといえるでしょう。

ダイワ・フィールドテスターの清水一成さん。ご一緒した釣行では、根魚主体にアマダイまで!
スロージギングはその釣り方というか、アプローチ法を指す言葉で、前述したようにフィールドはさまざま。比較的浅場でやることもあれば、水深200m、それ以上なんてこともあります。

出船は島根県・鹿島マリーナのGRANDEより
そのため、今回はダイワ・フィールドテスターの清水一成さんと先日ご一緒させて頂いた、水深80m前後の根魚主体のスロージギングを具体例として挙げさせていただきます。いわゆる「近海スロージギング」なんていわれるシチュエーションですね。
その中で、どんな道具を選べばいいの?というところを中心に紹介していきたいと思います。
基本タックル
まずはタックルから。
具体的にメインで使った2セット(ロッド&リール)が以下になります。
ロッド:キャタリナSJ 60B-1
リール:ティエラA IC150H

△キャタリナSJ 60B-1

△ティエラA IC150H
ロッド:キャタリナSJ 60B-0
リール:ティエラA IC150H-DH

△キャタリナSJ 60B-0(ダイワ)

△ティエラA IC150H-DH
ともにリールに巻くPEラインは1.5号、PEの先にはフロロカーボンリーダー8号。このあたりは水深、魚種によりますが、今回挙げたような場所ならPE1.2~2号、フロロリーダー6~10号といったところが目安でしょうか。
高反発でスローテーパーなロッドを
ロッドに話を戻して。
まず、スロージギングでは高反発な専用竿が用いられます。そしてスローテーパー(胴調子)。
竿の胴付近から穂先にかけてしなやかに曲がって、曲がった後に元に戻ろうとする復元力が高い竿といえばよいでしょうか。
スロージギングでは、リールを巻いた時に竿の先端付近が追従してしなやかに曲がり、高い復元力で元に戻ろうとした力でジグを動かすという操作がひとつ。
もうひとつは竿を持ち上げて(シャクリ)、持ち上がったところで一瞬止めて竿を元の位置に戻しながらリールを軽く巻くという操作があります。
これがガチガチに硬い棒のような竿であれば…。
リールをシャクった時に竿先から追従せず操作できませんし、ジワ~ッと持ち上げてジグが一瞬止まるような「間」も与えづらい。
そのために、高反発でスローテーパーな竿が求められます。
では、1本の竿ですべて同じような使用感なのかといえばそうではありません。
そうなんです。さまざまなフィールドで楽しめるスロージギングは、場所や潮の速さに応じて使うジグの重さが異なるからです。
例えば300gのメタルジグを使用していて「丁度よい使用感」の竿でも、その竿で100gのジグを使えば「アレ?なんかスカスカしてジワ~ッと感がない」となるのは当然。
あるいは丁度よいセッティングでも、潮が突然緩くなったらこれまたスカスカ感を感じてしまうでしょう。
つまりは、使用するジグの重さを柱に、潮の速さなども加味してロッドをセレクトするとベストです。

ジグのウエイトが穂先に乗ったら入力(シャクリ)

ジグが弾かれるように飛ぶのではなく、まっすぐ持ち上げるようなイメージでついてくるとよい

専用竿は高反発。ロッドがオートマチックに追従するように元に戻る。ここでジグには一瞬の間ができ、その後キレイにフォールが入っていく。この後は竿を元の位置に戻し、繰り返す
もちろん、そんなに何本も竿を買えないというのがリアルなユーザー目線ではないでしょうか。
そんな時は、使うジグの重さや抵抗の大きさ(持ち上げた時にブレーキがかかりやすいジグかストーンと落ちる系のジグかなど)で調整するとよく、基本的にはジグのウエイトを感じながら操作でき、シャクり上げた時にスコーンとジグが抜けるような感覚がない組み合わせがグッド。
このあたりは言葉にするとなかなか難しいのですが…。経験あるのみです(笑)!!
そしてこれが、なぜ清水さんが2種類のロッドを用意したのか…という部分につながるわけです。
今回使用したキャタリナSJを例に取ると、ロッドの表記は60B-0、60B-1の2つ。
品名 | 全長 (m) |
継数 (本) |
仕舞 (cm) |
自重 (g) |
先径/元径 (mm) |
ジグ重量 (g) |
ラインPE (号) |
カーボン 含有率 (%) |
メーカー希望 本体価格(税別) |
SJ 60B-0 | 1.83 | 1 | 183 | 100 | 1.7/7.4 | 60~100 | 0.4~1.0 | 88 | 32,500円 |
品名 | 全長 (m) |
継数 (本) |
仕舞 (cm) |
自重 (g) |
先径/元径 (mm) |
ジグ重量 (g) |
ラインPE (号) |
カーボン 含有率 (%) |
メーカー希望 本体価格(税別) |
SJ 60B-1 | 1.83 | 1 | 183 | 100 | 1.7/7.4 | 90~150 | 0.6~1.5 | 93 | 33,000円 |
これはご存知の通り60=6’0″(つまり6フィートですね)、B=ベイトを表し、その後の数字「0」とか「1」がパワーを表します。
パワーというと大雑把ですが、まぁそう思ってください(笑)。
0番は最も繊細でしなやか、1番はワンランク上…みたいなイメージで、キャタリナSJには0番から6番までの7機種がラインナップされています(ちなみにレングス6フィートの全ベイトロッドというのは共通)。
例えば、1番を使っていてスカスカ感があるなら、0番にしてみるとか、あるいはもう少しジグを飛ばしたいというなら2番にしてみる、もしくは1番でもより抵抗の大きいジグにしてみる(もしくはその逆)など、ロッド・ジグの特性・潮流などを考えて、その時にマッチしたセッティングをするのが大事になってきます。
スロージギングはセッティングの釣り、という側面もあります。
剛性の高いリールを
今回使用したリールは150番の小型ベイトリール。しつこいようですが、もちろんこれもフィールドやターゲットで変わります。今回の根魚主体の近海スロージギングでは、それを使用したと。
前述の通り、具体的にはティエラA ICのハイギアモデルのシングルハンドルとダブルハンドルの2種。
スロージギングでは今回のように根魚をメインターゲットとしても不意に瞬発力のある青物が掛かったり、大型魚がヒットすることもあります。
ボディがヘタらない剛性の高いリールが安定したリーリングにつながります。今回使用したティエラA ICですが「A」とはアルミフレームを指し、剛性の高さも魅力。
またIC(デジタルカウンター)付きで、水深やレンジを把握しやすいのも特長です。
ギア比については、リーリングでジグを動かすことも多いことからハンドル1回転の巻き取り幅の大きなハイギアが好まれますが、深場や潮がムチャクチャ速い、大型が連発するなんて時には巻くのが楽(軽い)ローギアタイプも捨てがたい。

今回使用したロッド、キャタリナSJの0番と1番は自重100g。リールのティエラA ICは220~230g。合わせても350gを切る軽量感もアドバンテージのひとつ
ちなみにティエラA ICはPE1号を400m・2号を200m巻ける仕様で、糸巻量的にも最適でしょう。
また今回紹介するような、ライトなスロージギングであれば軽さも考慮してみるとよいでしょう。
激しい動きこそ少ないものの、一日を通して、竿とリールを動かし続ける頻度が多いスロージギングでは、「軽い」というのは快適に釣りができることにもつながります。
品名 | 巻取り長さ (cm/ハンドル1回転) |
ギア比 | 自重(g) | 最大ドラグ力 (kg) |
標準巻糸量 PE(号-m) |
ハンドル長さ (mm) |
ベアリング(ボール/ローラー) | メーカー 希望本体 価格(税別) |
150-DH | 70 | 6.3 | 220 | 5 | 1-400 2-200 |
110 | 6/1 | 36,300円 |
150L-DH | 70 | 6.3 | 220 | 5 | 1-400 2-200 |
110 | 6/1 | 36,300円 |
150H | 80 | 7.1 | 225 | 5 | 1-400 2-200 |
70 | 6/1 | 36,300円 |
150HL | 80 | 7.1 | 225 | 5 | 1-400 2-200 |
70 | 6/1 | 36,300円 |
150H-DH | 80 | 7.1 | 230 | 5 | 1-400 2-200 |
130 | 6/1 | 36,300円 |
150HL-DH | 80 | 7.1 | 230 | 5 | 1-400 2-200 |
130 | 6/1 | 36,300円 |
メタルジグのセレクト
続いてはメタルジグ。
重さや種類など、数多くあればそれに越したことはありません。
とはいえ、結構しますからね、ジグのお値段も(笑)。オフショアの場合は、事前に船長さんなどに状況を聞くことができるので、水深や主に狙える魚種なんかを聞いておくとイイでしょう。
実は今回の撮影では、清水さんにとって初場所でした。
ではどうやってメタルジグを選ぶの?というところ。
清水さんによれば「初めての場所で勝手が分からないというなら、まずは水深の大体2倍前後のウエイトから使ってみてください」とのこと。
この日のフィールドでいえば水深70~80mちょいといったところで、150~180g前後のジグを使用していました。

ソルティガFKジグTGの180g。この日最初に投入したメタルジグ
ウエイトについては、それをベースに潮の流れなどを見ながら調整していくとよいでしょう。
続いてはジグの種類。
分かりやすく、メインで使ったジグを中心に説明していきます。
主に使ったのが鉛製のソルティガFKジグとタングステン製のソルティガFKジグTG。TGとはタングステンのことを指し、鉛製のジグと比べてシルエットが小さくなるのはご存知の通り。

同じジグでも形状によってフォールアクションが異なったり、鉛かタングステンかでも「抜け感」が変わってくる。写真は同じ180gのソルティガFKジグTG㊧とソルティガFKジグ㊨。同じ重さのFKジグでもシルエットが違う
ここでは、FKジグ自体の性能は割愛しますが、左右非対称ボディでフォール時に弱った魚のようなヒラヒラした動きと、ボディから放たれるキラキラしたフラッシング効果で、まぁ簡単にいうとよく釣れるジグです(笑)。
基本的に、シャクり上げた時に一瞬ブレーキがかかってヒラヒラヒラ~と落ちていくイメージ。
そんな動きの質は基本的に同じながらも、鉛製のジグはシルエットが大きくなるので、水の抵抗をより受けてフォールスピードが遅くなります。
それならタングステン製ジグの方が、ストレスなくフォールしてくれてよさそう…と思うのですが、そんなこともなく。

鉛製のソルティガFKジグ150gでアマダイ。この時はロッドに0番を使用。つまり最も繊細にフォール時間も稼ぎながらの展開でキャッチした1匹
鉛製ジグがフォールが遅いということは、それだけフォール時間が長いということで「食わせの間」を長く見せることができるのがメリット。
また、基本的に鉛製ジグはタングステン製ジグに比べ波動が強くなるので、アピール力が増す点がイイところ。
一方で、タングステン製ジグは潮が速い時でも、シルエットが小さいため潮の抵抗を受けづらく、より直線的にスッとフォールしていきます。
このスッと落ちた時にパッと反射的に魚がヒットしてくる時もあります。

こちらはタングステン製のソルティガFKジグTG180gでヒットしたチカメキントキ
要はどちらがよいかは「その日その場所で試してみる」というのが大切になります。
ただし、上記したように波動を強くして魚を寄せたいから鉛製を…とか、小さなエサを好んでいるみたいなのでタングステンを…と頭に入れてジグをセレクトして、それがハマるととても釣りが楽しくなりますよね。
もちろん、ジグ自体の特長もあります。上のアオハタを釣ったジグはソルティガTGベイト。
こちらもTG、つまりタングステン製のジグです。同じタングステン製のソルティガFKジグTGとどう違うかといえば、まぁ色々違うのですが、大きな違いはフォールスピード。FKジグTGも速いですが、TGベイトはもっと速い。もっとストーンと直進的に落ちます。
大雑把にいえばヒラヒラ系のFKジグとストーン系のTGベイトといいますか。
ジグの形状によって、スライドしながら落ちていくのか直進的に落ちていくのかなどは異なります。そしてこれもまた、どちらがいいかはその日によって、狙う魚種によって変わってきます。
このあたりもジグの特性を理解したうえで、色々ローテーションしていくと「今日はこの感じがよさそう」とつかめてくるかと思います。
カラーについてですが、これも諸説あります。だって絶対正解があったら販売されるカラーなんて数色で終わりですものね。
さまざまなカラーがあるということは、やはりその時々でハマる色が異なるということの裏返し。
清水さんも、カラーよりはジグをいかに動かすかの方が大切だと話しています。ただし、もし迷うのであれば以下の3点を基本にしてみてはどうでしょうかと話してくれました。
・海中が暗い(深場や日がまだ暗いなど)…グロー系
・潮が澄んでいる…シルバー系
・潮が濁っている…ゴールド系
もちろんこれも絶対ではないのですが、基準をこれにしておいて、そこから組み立てていくとやりやすいかと思いますよ!
というわけで、今回はここまで。また後日、基本的な釣り方などもアップしていきます。
