タイラバ激戦区、明石の攻略法を伝授

佐々木洋三(ささきひろみ) プロフィール

タイラバ、ジギング、バチコンなど様々なオフショアゲームに精通している名手。釣り雑誌や釣り番組などにも多数出演している。シマノアドバイザー、金龍鉤スペシャルスタッフ、Fishing Laboさゝ木代表

8月からマダイの好釣果が続いている兵庫・明石沖。播磨灘は大阪から近いこともあって、超人気のタイラバスポットになっている。

大潮時には7ノット (13㎞/h)を超える潮流だけに、明石のマダイは身が引き締まり、もっちりした歯応えは百魚の王に相応しい。

だから、平日でも明石のタイラバ乗合船はほぼ満席。いまや、釣り人の釣技が試される〝タイラバ激戦区〟と化している。

秋パターンへの端境期

そんな明石沖だが、例年、9月に入るとバタッと釣果が下がり、少しすると、また釣果が安定してくる。そんな端境期に、恒例のタイラバ体験会を明石市二見町の人気のタイラバ船「海豚」で開催した。

5時、12人の参加者が乗船場に集まり、ライフジャケットを着用、検温とマスクを着用し、乗船。まだ薄暗い5時半に出港した。

ネクタイはオレンジゼブラ

東シナ海に居座る台風14号の影響か、好天の予報に反して午前中は、あいにくの雨模様。雲は分厚く、海中はローライト。しかも、長雨の影響で海水は少々濁り気味だ。

澄み潮ならば、コントラストがはっきりした赤色のネクタイをチョイスするが、ローライト時は蛍光オレンジなど、明るいカラーを装着するのがセオリーだ。

全員が異なるカラー、形状のネクタイをセットし、まず、アタるパターンを探り出す。

この日、私が選んだのは「オレンジ」、「蛍光オレンジ」、「アミエビピンク」、それに明石で実績のある「海苔グリーン」だ。

各カラーに「カーリー」、「スリムカーリー」、「ストレート」と異なる形状を組み合せ、12人の参加者全員でアタるカラーや形状を探り出す戦略だ。

7時47分、右舷大ドモで竿を出していた弥谷和也氏にヒット。ゼブラオレンジの細身カーリーだった。

やはり、濁り潮のローライトにはオレンジが有効であった。船長に伺うと、「このところオレンジゼブラによくアタッてくる」と言う。

動かないヘッド!

8月までは水深10~20mのシャローで盛んに口を使っていたマダイも、ひと潮毎に30mライン、40mラインと深場に落ちていく。

そんな時期に、何かがキッカケとなって、にわかに気難しくなり、触ってもショートバイト、すぐにタイラバを放してしまう。

魚探を確認すると、マダイはボトムにへばり付いている。タイラバを通すのは、ボトムからせいぜい5mまでだ。

マダイが神経質になっている時は、極力軽いヘッドを選び、フワフワと漂うように落としていくのが断然有利。

明石のように潮が速い漁場では、底取りが難しく、慣れない入門者には辛いかもしれないが、重いヘッドをドスンと落とすと、ナーバスなマダイを散らしてしまうことになる。

また、気難しいマダイにはバイブレーションしたり、左右にスイングするヘッドよりも、動かない方が有利である。できれば体積の小さいタングステンのラウンド型が好ましい。

雨も上がり、すっかり秋晴れになった10時10分、右舷トモから2番目の呉宮興隆氏のロッドが大きくしなった。スピニングタックルでキャストし、小型のラウンドヘッドで広範囲を探っていたのが奏功した。

船長の差し出すタモに収まったのは60cm近い、体高のある見事なマダイだ。

巻きはデッドスロー

広島市水産振興センターが公表しているデータを見ると、瀬戸内海の水深10mの海水温は、海面の温度より1~2カ月近く遅れることが分かっている。

海面は8月初旬に30度近くまで達するが、水深10mの海水温がピークを達するのは9月下旬から10月初旬で、約25度まで上昇している。

9月に入り、急にマダイの活性が下がるのは、この高水温と関係しているのではないかというのが、私の見解だ。

よく漁師が「台風がきて海水が掻き回されないと、活性が上がらない」と語るのは、海底の高水温が悪影響を及ぼしていることを感じているのだと思う。

ともあれ、ボトムでじっとしているマダイを狙うのだから、巻きスピードはデッドスローだ。

ローギヤのリールで、じっくり誘い上げるのがコツである。45gのタングステンヘッドに、デッドスローでもよく動くコブラ・スリムカーリーのオレンジゼブラをセットし、私も竿を出してみた。

雨の影響か、上潮が滑る二枚潮で底を取り辛い。ハンドルを巻き上げるのは着底してから10回と決め、〝絨毯爆撃〟を執拗に繰り返した。

間もなく、小さなアタリがあってタイラバを追い始めたが、マダイはすぐにUターン。さらに執拗に攻め続けると、再び、マダイのアタリ! 今度はアタリと同時に巻きスピードを落とし、さらなるデッドスローで巻き続けると、最初のアタリから4mほど巻き上げたところで、ようやくロッドを絞り込んだ。

小気味よい引きを楽しみ、海面に姿を現すと、〝食べ頃〟と言われる40cm超えのマダイ であった。

1本針釣法

デッドスローでも、ネクタイをヒラヒラとナビかせるためには、1本針が断然有利である。ネクタイの針絡みが激減し、体験会を通じて比較してみても、アタリの数は断然1本針の方が多い。

フッキングパワーも、1本針なら針先に100%の力が掛かる。2本針なら、残念ながら半減してしまう。2本針や3本針の方がバラシが少ないというのは、大いなる誤解である。アタリ数を増やすことがまず、第一だ。

アシストラインは柔らかいPEライン(5号)を用い、アシストの長さはネクタイの長さに応じて3~4cmにしている。

自作するのが苦手な方には、金龍鉤の「鯛ラバ専用アシストフックバーブレス」をお勧めしたい。

厳しい状況の中でも、ネクタイのセッティング、巻きスピードがハマると、激戦区でも一人勝ち。この日、右舷大ドモの弥谷和也氏は潮カミという好条件もあったが、合計7尾のマダイをゲットした。それも、50cmオーバーの良型ばかり。

ちょっとしたテクニックでアタリの数は倍増する。これがタイラバ釣りの醍醐味である。

ランキング

釣り場・釣り船の情報をまるっとチェック!