【裏旬の絶品マダイを釣り上げる】ネクタイカラーにコダワリ食べ頃マダイをゲット

寄稿:佐々木洋三

佐々木洋三(ささきひろみ) プロフィール

タイラバ、ジギング、バチコンなど様々なオフショアゲームに精通している名手。釣り雑誌や釣り番組などにも多数出演している。シマノアドバイザー、金龍鉤スペシャルスタッフ、Fishing Laboさゝ木代表

サザンカが咲き始める季節となった。暦の上では11月7日は〝立冬〟。早くも冬の気配を感じる季節の到来で、海水温の低下とともにマダイも深場に落ち始める。

マダイの旬は〝桜鯛〟と呼ばれる乗っ込みの季節だが、実は白子や真子に養分が回り、身の味わいは少々さっぱりしている。

刺し身が1番美味しいのは越冬に備え、身に脂が乗った〝紅葉鯛〟だ。

そのモチモチとした食感と、口内にじんわり滲み出るイノシン酸の旨味は絶品で、食通は「裏旬の鯛」と呼ぶ。

そんなマダイを美酒の佳肴に、と加太沖へ出向いた。

遊漁船KAISHIN

10月下旬、阪和道・海南インターを降りてすぐの冷水浦ボートパークから、6時に出船。雲ひとつない凪で、タイラバ釣りには絶好のコンディションとなった。

船は30分足らずで友ケ島南側の漁場に到着。神田船長はボトムを広範囲に探ろうと、全員が右舷に立ってのドテラ釣りとなった。

エンジンを切ると、船上は途端に静か、風音だけで気分も安らぐ。私はこの瞬間が大好きだ。

船長の神田泰志氏は昨年4月に遊漁船を開業。長いこと〝サラリーマン船長〟として土日だけの遊漁業を営んできたが

「海のことが気になって」と、とうとう会社を退職し本格的に遊漁船を開業した、という根っからの釣り好きだ。

「知り尽くした紀北の海で、笑いの絶えない楽しい釣りをお客様に提供するのが夢」だと語る。

最初の流しは友ケ島南側の水深は40m前後。まだ、下潮が残っているので、このポイントを選んだ。

船が風で流されるので、私はリールの巻きスピードをスローからスタート。一方、神田船長はアップテンポの巻きスピード、活性の高いマダイをターゲットにした展開だ。

マダイは潮を釣れ!

加太の潮を読むのは難しい。潮汐による流れは友ケ島、地ノ島に遮られ、一部は田倉埼灯台にぶつかり、反転流を生み出す。それも強弱があり、読み通りの潮にならないことも多い。

そこに風の影響が加わり、思ったラインに船を流せない日もある。加太で釣ろうと思えば、やはり神田船長のように潮を知り尽くした船に乗船するのが1番である。

加太では大潮もよく釣れるのだが、釣れる潮時が短い。一方、小潮や中潮は爆発的なラッシュはないが、釣れる潮時が長いというメリットがある。

「小潮・中潮の上り潮に重なるタイミングを狙うのがいい」と言う。

サバフグ対策

突然、船長の「あっ!」という悲鳴が響き、PEラインが高切れた! サバフグの仕業である。PEラインの目印をスパッと噛み切るのだ。

今年は大阪湾一帯でサバフグが大量発生しており、タチウオテンヤやジギングでも、その被害は甚大だ。タイラバのロスはまだしも、相次ぐPEラインの高切れには、気持ちが折れそうになる。

①「単色」PEを!

1m毎の白いマークは、サバフグの格好のターゲット。マーカーなしの単色のPEラインに巻きかえると、被害は激減すると言う。

カウンター付きのリールを使用すれば、マーカーに頼らなくてもタイラバまでの距離を把握することができる。

②PEは「緑色」を!

先日テストしたところでは、PEラインの色も重要で「黒色」だと切られたが、「緑色」は切られることがなかった、と言う。これは大変参考になる情報である。

③ヘッドは鉛を!

サバフグの大量発生で1人で1日に2ケタのタイラバをロストすることもある。高価なタングステンは使用せず、鉛を使用してほしいと船長。

ネクタイカラー

サバフグが猛襲する漁場をかわし、友ケ島南側の漁場から、神島や北の小島漁港の方面まで広く探るが、なかなか本命のマダイが触ってこない。思わぬ苦戦となった。

加太の海の色と言えば、グリーンというのが私の印象である。しかし、今年は例年になく透明度が高い。今年は台風が来ず、海が掻き回されないからではないかと船長は言う。

加太の濁り潮に強いネクタイカラーは、鮮やかなオレンジだ。来春発売予定のシャイン・オレンジのコブラカーリーを用意してきたが、潮が澄み過ぎて、テストにならない。

澄み潮には、シルエットのハッキリした赤や黒が定番である。私はレッドゼブラの「コブラカーリー」を、仲さんにはレッドゼブラの「コブラ・スリムカーリー」をセットしてもらい、フックはともに金龍鉤の「鯛ラバ専用アシストフック(バーブレス)」を1本針仕様でセット。同じレッドでも、この日はアピールの強い太身がよいか、細身がよいかを見極めたかった。

魚探の反応を見る限り、マダイやベイトの反応はボトムから3~5mまで。ローギアのリールを使用しているので、着底してからハンドルを15回も巻き上げれば十分だ。

やや早目の巻きスピードから、デッドスローまであらゆる巻きスピードを試すが、残念ながらマダイは触ってこない。何より不思議だったのは、あれだけPEラインをブチ切ったサバフグが、一切アタらなくなったことである。

ようやくマダイが口を使うようになったのは、午後になってからであった。それでも、モゾっというショートバイトだけで、フッキングには至らない。

嬉しいファーストヒットに

ナーバスになったマダイに、超デッドスロー巻きでボトムを執拗に攻め続けると、竿先にグッという重みが乗り、ジジジジジーッとドラグ音が静かな船上に鳴り響いた。

この上もなく、嬉しいサウンドである。50cmはありそうな重量感であった。ところが、しばらくファイトが続いた後に、突然、軽くなった。「そんな殺生な…」マダイとともにサバフグも復活を遂げたのだ。

潮も緩み、納竿間際、今度は仲さんのロッドが大きくお辞儀をした。ゴツゴツと締め込むファイトは紛れもなくマダイである。

オシアコンクエスト200PGの金属的なドラグ音を楽しみながら、神田船長のタモに収まったのは、ジャスト50cm、体高と厚みのある食べ頃の紅葉鯛であった。バーブレスのシングルフックが下唇を縫い刺していた。

サバフグの猛襲にも負けず諦めず、最後まで釣り切り、見事な紅葉鯛を上げた集中力に脱帽だ。

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