激戦区のタイラバを制すのは”1本針”! 攻略法を名手が解説

寄稿:佐々木洋三

佐々木洋三(ささきひろみ) プロフィール

タイラバ、ジギング、バチコンなど様々なオフショアゲームに精通している名手。釣り雑誌や釣り番組などにも多数出演している。シマノアドバイザー、金龍鉤スペシャルスタッフ、Fishing Laboさゝ木代表

激戦区のタイラバ攻略術を実釣を交え解説

4月上旬、私が所属する釣りクラブ「ルアー&フライ サントリーオーパ!」の例会が兵庫・明石の釣船、魚英で開催された。

好調の室津沖

今年は早春から大きな潮回りの時に、淡路島室津沖、それも水深20~30mの浅場で、50cmを上回る良型が釣れ盛った。

浅場だけに、そのファイトは超パワフルだ。

最初のダッシュは青物かと思わせるほどの勢いで、ドラグを引き出す。

そのスリリングなファイトに喉はカラカラ、タモに収まったマダイは、真子も膨らみ始めた、見事な「桜鯛」である。

カラーよりも巻きスピード

漁場は、海苔ひびが張り巡らされた所で、好物の海苔を食べに集まってきたマダイかも知れなかった。

アタってくるネクタイカラーは「海苔グリーン」はもとより、「オレンジゼブラ」、「蛍光ゼブラ」、「レッドゼブラ」、「バチコーラ」、「シャインオレンジ」など、さまざまなカラーに実績がある。

私の印象では、ネクタイのカラーをあれこれ悩むよりも、潮の速さによって巻きスピードをどうチューニングしていくかで、釣果が分かれると感じた。

この日も、室津沖での釣行を楽しみにしていたのだが、例会が開催された日は小潮回りだった。

岩屋沖では7時45分をピークに、20時14分までダラダラと下り潮が続くパターンだ。

魚谷直毅船長は、室津沖の漁場は諦め、東の漁場に進路をとった。

まずは、淡路島北淡の江埼灯台の前の漁場からチェックを入れる。

魚探ではボトムには反応が映し出されているようだが、マダイは口を使ってこない。

まだ、潮が効いていないようだ。

ファーストヒットは良型のマダイ

江埼を見切り、今度は松帆の浦から明石海峡大橋の橋脚へ向かって船を流した。

橋脚に近付いた辺りで、私の左隣に陣取った中立公平氏のロッドが絞り込まれた。

小気味のよい叩き方は、マダイ特有の引きだ。

タモに収まったのは、50cm後半の良型のマダイ。

スリムカーリーのオレンジゼブラの1本掛けで、船中ファーストヒットとなった。

中立氏に伺うと、「このところ、明石ではオレンジゼブラが好調だ」と言う。

そのネクタイだけで、やや遅めの安定した巻きで、宙層まで誘い上げて食わせた。

ほどなくして、田中浩美氏にガシラがヒット。

田中氏には、この後も立て続けに合計6尾のガシラを釣り、「ガシラ大王」の称号が授与された。

マダイは後が続かず、下潮が少し速くなってくると、船長は大橋からさらに東の漁場へと船を進めた。

「ボトム付近にマダイの反応がありますよ」と船長のアナウンス。

春先は水温も安定せず、マダイの食い気もムラがある。

そんなナーバスなマダイを、どう攻略するか。

食い渋った時こそ1本針

私が選択したのは、シングルフック。

関西イチの激戦区と言われる明石で釣行を重ねた経験から、導き出された答えである。

タイラバはネクタイをなびかせて、その波動でマダイの関心を惹く釣りである。

フックを1本にすることで、ネクタイの動きを邪魔しないこと。

しかもアシストラインを柔らかいPEラインにすることで、デッドスローでもネクタイがよく動き、アタリの数が増えることを、タイラバ体験・講習会を通じて検証してきた。

もちろん、マダイの活性が高い時には、2本フックや3本フックにもヒットしてくる。

問題は、春先のように食い渋ったナーバスなマダイに、いかに口を使わせるかである。

では、細いPEラインはマダイに噛み切られる心配はないのか?

例え、太いアシストラインを使用しても、マダイの歯に噛まれれば、ひとたまりもなく切られる。

ネムリの入った針(針先が内側を向いたもの)を用いて、1度口の中に吸い込まれた針が口の奥深くには掛からず、口元まで出てきて、口唇にフッキングさせることで、針もアシストラインも歯の外側にあるので、噛み切られるリスクが軽減するのである。

船中最大をキャッチ!

ヘッドはタングステンの70g(シマノヒューストンバクバクTGヘッド)に、シングルフックをセット。

ネクタイはスリムカーリーのオレンジゼブラとコーラGラメグローのワームをセット。

ボトムから宙層までスロー&ステディリトリーブで丁寧に巻き続けていると、15巻き目で、フワフワ・モゾモゾするような微妙は感触がソリッドの竿先に伝わった。

穂先の不自然な動きを見つめながら、巻きスピードをさらに落とすと、今度はチョンチョンと竿先がお辞儀をする。

そして、ロッドティップが海中に引き込まれ、一気にドラグが引き出された。

来たぞ! そこそこの重量感がある。

ハンドルを巻き、プレッシャーをかけ続け、ようやく船長のタモに収まったのはジャスト60cm(帰港後の計測では58・5cm)、体高のあるマダイだった。

フックは上唇の真ん中を下から縫い刺し、想定通りのフッキング。

バーブレスなので掛かりもよく、手で簡単に外すことができた。

また、ほかの釣り人のPEラインが絡んでも、返しがないので容易に抜け、傷つけることもない。

釣り上げた時にタモの目に深く刺さって貴重な潮時をロスすることもない。

誤って指に刺してもすぐに抜ける、のよいこと尽くめだ。

タイラバ釣りは、2本針がスタンダードになったのは、そのバラシの多さに起因するのかも知れない。しかし、データをとって比較すると、1本針だからバラすということはないし、アタリの数は明らかに1本針が多い。

鳴門海峡でタイラバ漁を営む本職の漁師たちが「1本針」を用いているのが、何よりの証左であろう。

私はゲームフィッシングの美しさという観点から、また、リリースすることを考慮して、「1本針+バーブレス」が、マダイ釣りのスタンダードになればいいのになぁ、と思うのだが。

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