私の知る限り、タイラバをはじめ、ビシマやテンヤ、フカセ、サビキなど、マダイほどさまざまな釣り方が存在する魚もいない。
古来、百魚の王として崇められてきた魚だけに、日本人のDNAの中にそれが刷り込まれ、いつしか季節ごとの、さまざまな釣法に、関心を持つようになったのかも知れない。
また、マダイは雑食でエビ、カニ、オキアミ、フジツボなどの甲殻類をはじめ、イソメやタコ、そして夏場はイカナゴやイワシ、冬は海苔と多くのエサを捕食する。
季節の端境期にはエサもかわるので、それに対応した釣り方を意識することも大切だ。
さらに、乗っ込み、産卵、アフタースポーン、夏場の高活性期、秋の深場に落ちゆくパターンとマダイの生活サイクルに合わせた釣法を理解することや、大雨による水潮、赤潮など、自然環境の変化を把握して、それに対処していくことも必要である。
私がお勧めしたいのは、まず、ご自分が得意とするホームグラウンドに通い詰め、今述べてきたようなシーズナルなパターンをしっかり理解すること。
頭の中にそうした座標軸を持つことができれば、各地の漁場に出掛けても、その座標軸を水平移動することで、概ねの攻略法を理解することができるはずだ。
実釣を基に、アフタースポーンのマダイ攻略法を解説
そんな訳で、今回は、4月下旬に東二見の海豚2号で開催した「鯛ラバ体験会」での釣果をもとに、産卵疲れで活性が下がった、いわゆる「アフタースポーン」のマダイの攻め方を解説しよう。
「昨日までは盛んに口を使ったマダイも、今日はさっぱり」というのが、産卵期のマダイ釣り。
マダイは海面で近くで魚体を擦り合いながら産卵、放精し、何日かに分けて放卵する。
この時期、釣り上げたマダイの卵巣や白子が徐々にしぼんでいくことから、何回かに分けて産卵していることが分かる。
産卵後にボトムでじっと休んでいるマダイを狙うのは、ボトムを超デッドスローで狙うが基本だ。
しかし、早くに産卵を終えた比較的大きな個体はすでに回復しており、宙層までの早巻きに反応してくるケースもある。
6時10分、40cmを超える良型をキャッチしたのは、三木から参加いただいた中村幸司氏。
ストレート系のSASALABOのトラッド・ピンテールのシャインオレンジカラーで、宙層までの早巻きで、ガツンと食わせた。
最低でも、水深の半分くらいはタイラバを巻き続けるのがコツである。
6時19分、続いて釣り上げたのは福島区から参加されたユーチューバーの沼田智行氏。
自作の海苔カラー(黒)のネクタイで美しいメスのマダイをゲット。
やはり、宙層までやや早めの巻きスピードで巻き続けて、食わせている。
これに対して、超デッドスローにこだわったのが、この体験会に常連参加の松内満氏。
6時半に、コブラカーリーオレンジゼブラがよくなびくように1本針仕様で、40cmのマダイをゲット。
彼はアフタースポーンの釣りをよく心得ていて、超デッドスローの遅巻きでマダイを誘う。
巻きスピードは、ハンドル1回転を2秒で回すくらいの、それこそアリが歩くような超デッドスローのスピードだ。
産卵後のマダイは、ボトムでじっと体を休め、動くエサを追いかける元気はない。
だから、ボトムから2mも巻き上げれば十分。
リールのギア比にもよるが、ハンドルを6~8回も巻けば十分で、何よりもボトムにタッチする回数を増やし、しつこくマダイの眼前にネクタイを漂わせ、反射的に口を使わせるのがコツだ。
アタリは、ロッドの穂先がほんの1cmほどお辞儀するような極めて小さなもの。
そんな、モゾモゾするようなアタリから、ロッドが絞り込まれる。
相当イライラさせられる神経衰弱の釣法だが、首尾よくキャッチできた時の喜びは、一入である。
同じタイミングで、本体験会初参加の平山義彦氏が、やはりでコブラカーリーで同サイズのマダイを釣り上げた。
さらに8時22分、やはりデッドスローにこだわった平山氏は、良型を追加した。
続いて、神戸から参加された玉垣氏にマダイがヒット。
ネクタイはシルエットが小さく、スローでもよく動くコブラ・スリムカーリーのレッドゼブラであった。
今が潮時と読んだ仲みゆきさんは、すかさずロッドを出して、堂々の50cmオーバーをゲット。
やはりデッドスロー巻きである。
ネクタイをレッドゼブラのスリムカーリーに交換した沼田氏は、今度はデッドスローにチェンジして、小ぶりのマダイを追加した。
この日、ネクタイのカラーは関係なく、巻きスピードを早くして、回復後のグッドサイズを狙っていくか、超デッドスローでねちっこく狙うかの2パターンに、釣果が分かれた。
はっきりと戦略を定め、その釣り方をやり通した人にアタリがきて、迷うと釣れなくなるという、典型的なアフタースポーンのパターンだった。
ヒットの続いた前半に沈黙した池田の菱田氏は、10時11分、スタッフのアドバイスで、タングステンヘッドに交換した途端に、50cm前後のマダイをゲット。
ネクタイはコブラカーリーのゴールドゼブラとシャインオレンジのコンビネーション、それにシングルフックであった。
食い渋る時期には、小型タングステンヘッドに1本針というのが、断然有利だ。
11時40分、福島区の上田幸男氏が、やはり1本針のバーブレスで、マダイをゲット。
正午には三木の中村氏が、食い渋る中、やはりシングルフックでネクタイをよく動かして釣果を出した。
そして、ドラマは13時。
コブラ・スリムカーリーのゴールドゼブラとオレンジゼブラの組み合せに近日発売予定の「早替えアシストフック(シングル)喰わせ」で、松内氏はこの日最大の64cmのマダイを釣り上げた。
そして、納竿間際の14時に北区の川崎氏が、レッドゼブラのトラッドピンテール(ストレート系)の早巻きで良型をヒット。
船長によれば、各船が苦戦する中で、外道も含めて全員安打を達成することができたのは、なかなかとのこと。
直感でも構わないので、デッドスローか早巻きか、攻めるパターンを決定し、それに即したネクタイをセッティング。
アタリが少なく、ついつい悩みがちになるが、迷うとなぜか釣果が遠のくのが、タイラバ釣りの「あるある」だ。
自信を持って初心貫徹、それからネクタイをよく動かすため、1本針は断然有利。
ぜひ、お試しいただきたい。
使用したタックル
ロッド:炎月 XR N B63ML-S(シマノ)
リール:炎月プレミアム150PG(シマノ)
ライン: タナトル8(0.8号)
リーダー:フロロカーボンリーダー3号(3m)
ヘッド:ヒューストンバクバク 45、60、70、90g(シマノ)
ネクタイ:コブラカーリー、コブラ・スリムカーリー、トラッドピンテール(SASALABO)カラーシャインオレンジ、バチコーラ、オレンジゼブラ、レッドゼブラ、海苔グリーン、アミエビピンク
フック:金龍鉤鯛ラバ専用アシストフック(金龍鈎)
・喰わせ鈎/バーブレス 8、10、12、14号
・凄腕グレ尾長 6、7、8、9号