アジングといえばアジをルアーで釣ること。ルアーでのアジ釣り総称だ。
すっかり「アジング」という言葉が市民権を得ているが、「アジがルアーで釣れること」は画期的だった。
広がりを見せ始めると、その釣りの抜群の面白さもあって、一気に定着した感じがある。
そんなアジング。
その加速度的に広がりを見せ始めるよりも前、およそ25年ほど前からルアーでアジ釣りを楽しんでいたのが、今ではアジングの名手として知られる渡邉長士(わたなべ・たけし)さん。
ある日のシーバス釣りで
きっかけはこう。
根っからの釣り好きであった渡邉青年。その日も夜な夜なシーバスを釣りに地元千葉県外房エリアの漁港に足を運んだそうだ。
「それが15か16歳くらいの時だったんじゃないかなぁと思います」と回顧する。
「水面でベイトがバチャバチャとやっていたんですよ。シーバス釣りにはおあつらえ向きじゃないですか。〝これはもらった〟と思ってシーバスルアーを投げるも、シーバスからのバイトはなかったんです」
ベイトの正体が知りたい

△今ではジグヘッドリグ、スプーンにメタルジグと様々なルアーがアジング用としてあるが、当時はアジ用ルアーが存在しなかったという
好奇心旺盛な渡邉青年は、ルアーとベイトのサイズが合っていない?そもそもベイトの正体は何?と気になり、そのベイト自体を掛けることにした。
シーバス狙いの8~9cm程度のミノーを外し、リーダーの先のスナップにトリプルフックだけをつけて掛けようとしたそうだ。要はライズするベイトを引っ掛け釣りで、その正体を探ろうとしたそうだ。
ところが…そのトリプルフックをくわえて上がってきたのがアジ。
「当時は今ほど経験値も情報も少なかったですし、プランクトンイーターのイメージがあったアジですから、メチャクチャ驚きましたよ」と話す。
もう一度試してみても、やはりアジが釣れてきたという。
トラウトルアーとロッドで探求
後に、最初のバシャバシャとやっていたベイトこそがアジで、そこに2~3cmほどのハク(ボラの幼魚)がいて、そのアジのベイトになっていたのでは…と推測したという。
当然「アジング」という言葉もない当時、専用ルアーもないことから、そのサイズのルアーとしてトラウト用のルアーと、それを投げられるロッドとしてトラウトロッドで探求し始める。

△フォレストのトラウトスプーン「マーシャル」。当時1.5g表記

△スミスのICミノー(上)とICサージャー(下)

△ジャクソンのソリッドミノー3cm

△「なぜかよく釣れた」と渡邉さんが言う、オーナーばり(カルティバ)の「竹ミノー」。名前は竹ミノーだがスプーンライクなアクションだったとか

△アジング用ルアーがない当時、これらのルアーを使って経験値を増やしていったという
試してみると結果は出て、アジがルアーで釣れるという確証を得た。
さらには、「とにかくゲームフィッシングとして楽しかった」そうで、これはもっと広く知ってもらいたいと思うようになった。
アジングという言葉の名付け親!!?
ちなみに、話は前後するが〝アジング〟という言葉。記者としても印象深く、個人的には渡邉さんが初めて使い始めたのではないだろうかと思っている。確か、何かの雑誌でアジングという言葉を渡邉さんが使っていたような…。
と思って渡邉さんに尋ねてみたところ「ありましたねぇ。自分が〝アジング〟という言葉を一番最初に使ったと言い切ってしまうと、良からぬ論争を生みそうですし(笑)、誰が一番最初に…とかは自分はそこまで気にしていません。今こうして多くの人が楽しんでいることが重要ですよね」と大人の対応。
ただ、「自分が一番最初かはともかく…」ととある雑誌の写真を見せてくれた。
こちら、当時のTACKLE BOXという雑誌(現在は休刊)に渡邉さんが寄稿した際のもの。
『僕はいつも〝アジング〟って呼んでます。』とある!!
平成14年発行ということで、少なくとも2002年には「アジング」と呼んで普及活動(!?)をしていたことになる。
もうひとつ渡邉さんのお話を付け加えると「当時は〝アジングってなんだよソレ~〟と、かなり言われましたね」と苦笑する。
そして、とにもかくにもアジングの可能性と楽しさを知った渡邉さんは、これをもっと広げていきたいと思うようになったのである。
続きは後編で。