その日、第1投目のヒットだった。ユーチューバーの「あんぐらーKAI」こと沼田智行氏のロッドが、いきなり海面に突き刺さったのである。
マダイの突っ込みは半端ではない。電動リールはウォンウォンと咆哮を上げ、大ダイの走りをいなす。
やがて上がってきたのは、70cmを超える見事なマダイ。
「新月の大潮回りに狙いを定めたのがドンピシャでしたね。それにしても、朝イチから、こんな大ダイがヒットしてくるなんて」と、相合を崩す沼田氏。
マダイの口元に目をやると、テスト用のビッグワーム、それにPEアシストフック「佐々木流IPPON勝負」のバーブレスフックが、上唇のど真ん中を縫い刺していた。
私は、前回記事でご紹介した、カスタムラバーから切り出した、テスト用の自作カーリーネクタイをセット。
薄手生地の幅広・ロングネクタイの波動でスローに大ダイを誘い出そうという魂胆だった。
最近、波動の強い分厚いネクタイが話題を集めているが、スローな巻きスピードの時は、薄いネクタイの方がよくなびく。
以前も薄地の柔らかい波動が大ダイを誘き寄せたことがあった。その読みが、今回も的中した。
水深60m前後の砂地で、ラインは90mくらい出ていたであろうか。グッと竿先を押さえ込む、重量感のあるアタリ。リールの巻きスピードを幾分落として巻き続けると、再び、ググッと竿先を押さえ込む。
そのまま、かなり長い時間が過ぎたように感じたが、突然、絹布を切り裂くようなドラグサウンドが船上に響き渡った。
私はネクタイの動きを阻害しないように、いつも通りの1本勝負の1本針だ。慎重にマダイを引き寄せ、船長のタモに収まったのは、堂々の80.5cmの大ダイ。
それにしても、朝イチから立て続けに70cm超え、80cm超え、そして、またジャスト70cmの大ダイを沼田氏が釣り上げた。美保関沖のポテンシャルの高さには、度肝を抜かれる。
私が美保関沖に通い始めたのは、2015年秋ごろ。中海や境水道のシーバス釣りで名高い遊漁船「ジョイフィッシャー」の大原章船長から、「美保湾沖のタイラバの可能性を探ってほしい」と依頼されたのがキッカケだ。
調査初日から88cmの見事な大ダイを、同じクラブに所属するOPA!福田哲彦氏がキャッチ。さらに90cm超を求めて仲野肇船長と美保関沖の開拓を繰り返し、やがて季節を問わずに、コンスタントに80cm超がキャッチされるようになった。
美保関沖に、新たにタイラバゲームの一頁が加わったのである。
2022年4月、仲野肇船長はジョイフィッシャーから独立し、美保湾のタイラバを中心に、ジギングやメタルスッテゲーム、中海のシーバス釣りをガイドする遊漁船「FIELDs」を開業した。
ジョイフィッシャーと共に、境港のタイラバ釣りが、ますます充実することになった。
美保関沖のフラットな砂地から、大ダイのポイントを探し出すのには、それなりの工夫が必要だった。
海図の等深線をしっかり読み込み、わずかに谷状になった凹地を探し出すのである。
船の流れは、潮流(真潮か逆潮)と、風向きによって決まる。だから、ドテラ流しで谷間の斜面をタイラバがかけ上がるように、あるいは、かけ下がるようにトレース(船を流す)することが重要で、釣果は船の流し方次第と言っても過言ではない。
GPSで同じ場所に船を着けても、潮流や風向きによって、斜面をどうトレースするかで、釣果が分かれるのだ。
昔から「鯛は潮を釣れ」と言うが、ドテラ釣りの場合、潮速のみならず、潮の流れる向きも肝心である。
ドテラ釣りでは1回着底させるごとに、タイラバは船から遠退いていく。着底が分からなくなったら、ピックアップしてボトムを取り直すのが、この釣り方の基本だ。
風と潮が喧嘩をする(ぶつかり合う)と、PEラインは200m以上引き出されることもある。回収に手間取るので、リールはハイギアタイプが有利である。
翌日、桜鯛の開花宣言を聞いて、旧知のスカジットデザインズ皆川哲代表が東京から駆け付けた。
9時5分、ファーストヒットは西本清子さんにきた。火の玉ヘッドにコブラカーリーのアミエビピンクをセットし、いきなり78cmの大ダイがきたのだ。
それから2時間ほど沈黙が続き、11時、前日も80cm超を釣り上げた、自作のシャインオレンジカラーのネクタイに、この釣行最大の81.5cmの大ダイがヒット。2日連続80cm超えというのは、この歳で初体験であった。
昼過ぎには、同乗した境港市の中濱友也氏が70cm超の大ダイを釣り上げ、続いてアマダイをゲット。船上は大いに盛り上がった。
夕刻には私に巨大なアオハタがビッグワームにヒット。
仲野船長も竿を出して、68cmのマダイを追加。
納竿直前の15時半、西本さんが2尾目の78cmの大ダイを、「佐々木流IPPON勝負」PRアシスト1本針で釣り上げ、有終の美を飾った。
仲野船長によれば、「今年は例年よりも桜鯛前線の北上が早い」と言う。この原稿を書いている4月の中旬で「腹が膨らみ、婚姻色のマダイが増えてきた」と言う。
それでも「5月いっぱいは、大型の桜鯛が釣れ盛る」と話す。
大ダイ狙いのアングラーには、ぜひ、挑戦していただきたい。
使用タックル
ロッド:ゲーム炎月 B77M-S
リール:フォースマスター200
ライン:PE タナトル8・0.8号
リーダー:フロロカーボンリーダー8号(8m)
ロッド:炎月XR B610ML-S
リール:オシアコンクエストCT300HG
ライン:タナトル8・1号
リーダー:フロロカーボンリーダー4号(8m)
フック:佐々木流IPPON勝負・バーブレスM、L鯛ラバ専用アシストフック「喰わせ鈎」、シングルフックバーブレス8~14号
タイラバヘッド:ドテラバクバク 80~150g、タイガーバクバク80~150g
タイラバネクタイ:コブラカーリー、コブラ・スリムカーリー、トラッド・ピンテール(シャインオレンジ、バチコーラ、オレンジゼブラなど)