ハチマル、ナナマルが連発する魅惑のエリア「美保関沖」
「必ず、ハチマル超を釣っていただきます!」と豪語する、仲野肇船長(フィールズ/境港)に日頃、大阪湾や明石沖でタイラバ釣りに勤しんでいる参加者誰もが、半信半疑の表情を浮かべた。
5月11~12日、2日間に渡って開催された「佐々木洋三と行く★鯛ラバ体験会」の出船前の1コマだ。
初日は雲1つない五月晴れに恵まれた。出船してほどなく美保神社に寄港し、船上から大ダイ祈願。そこから40分ほど走った水深60mの漁場からスタートフィッシング。
ポイントは砂地で、根掛かりの心配は少ない。全員が右舷に立ち、エンジンを切ってのドテラ流し、排気音臭もなく心地よい。
風音を耳にしながらリールを巻いていると、突然、ドラグサウンドが船上に響き渡った。何と第1投目、北野一夫氏にヒットしたのだ。
ラインは斜めに出ているので、ロッドは曲がってないが、巻いても巻いても上がってこないサイズに、全員が目を見張る。「いや、ドラグが緩いだけですよ」とは本人の弁だが、目は笑っていない。
両サイドの釣り人はタイラバを回収し、待つこと10分。沖合に浮き上がり、タモに納まったのは、何と第1投目からの81cmの大ダイだった‼
仲野船長の話が大風呂敷ではなかったことを知り、リールを巻く手も真剣になる。
この日、私が用意したのはサンプルとして仕上がってきた、シングルコブラカーリーだ。0.5mmの厚みに独自のカラーデザイン、私が提唱するシングルフックとの組み合わせの真価を体験していただいた。
まず、私のブラック金ゼブラに62cm、さらに北野氏が72cmを追加、大阪福島でたこ焼き屋を営む上田幸男氏も70cm超を3尾、仲みゆきさんが61cm、菱田義和氏70cm、田中浩弥氏72cm。
ヒットすればシングルコブラカーリーに60cm超が揃い、その大ダイの濃さに一同が度肝を抜かれる。
果たして、漁場が素晴らしいのか、船長の腕か?
仲野船長が美保関沖の大ダイポイントを探り出すには、それなりの苦労があった。
普通は海図に記された天然魚礁や人工魚礁を中心に魚の付き場を探し出す。しかし、その方法では、どうしても中・小型が中心でサイズが伸びない。
逆に、何の変哲もないフラットな砂地を手探りで探し、そこから大ダイポイントを探り当てた。
海図の等深線を読み込み、わずかに谷状になった凹地を探す。ドテラ流しで、その谷筋の斜面をタイラバがかけ上がるように、あるいは、かけ下がるように船をトレースさせ、谷筋に点在する大ダイを効率よく釣り上げる方法を確立したのだ。
GPSで同じポイントに船を着けても、その日の潮流や風向きによってその谷筋をトレースできるか分からない。
釣果は潮流・風向き・海図を読み、キチンと谷筋をトレースする操船力にかかっていた。長年にわたって美保関沖の大ダイ漁場を探ってきた、仲野船長の経験の賜物である。
2日目は、強い南の風雨が吹き付ける生憎の天候となった。
前日の好漁場まで足を伸ばすことはできず、島根半島の風裏となる水深45mで、風が落ちるのを待つことに。
こんな浅場では大きなサイズは出ないだろうと高を括っていたら、あにはからんや、8時15分にまたまた、北野氏が70cm超の大ダイを引きずり出した。
風が強いので、船の流されるスピードは速い。参加者にデッドスローで巻くことを伝え、真正面から吹き付ける風雨に耐えながら釣り続けると、今度は魚奏の辻野博之社長が60cm超の良型を釣り上げた。
船長に聞くと、数日前に浅場調査を行い、この場所をマークしていたと言う。
シロイカ釣りのポイントでもあり、釣り上げるケンサキイカを大ダイが襲うので、ここにはいると踏んでいたと言う。
そして、ドラマは9時5分に! 前日に81cmを釣り上げた北野一夫氏が、今度はジャスト80cmの大ダイを釣り上げたのだ。
2日連続で80cm超の快挙、船長から2枚目の80超記念ステッカーが贈呈された。
その後は、アオハタやホウボウのヒットが続く。
少し風が落ちたので、船長は「沖に出てみよう」と言う。北西風ならば、とても出船できる状況ではなかったが、南風に強いのが美保関沖である。
前日の水深60mまで船を進め、釣り再開。12時10分に辻野氏と三宅氏が60cm超のダブルヒット。12時20分、今度は辻野氏がジャスト80cmを釣り上げた。
買い揃えたばかりの「エンゲツリミテッド」、「オシアコンクエスト200PG」に大きな鱗付けができたと、本人は大喜び。
13時、仲みゆきさんが美保関沖ならではの巨大なアオハタ、13時半に三宅正浩氏が70cm超を釣り上げ、納竿となった。
私の知る限り、これだけ大ダイを、しかもたくさん釣らせる遊漁船はないと言っても過言ではない。
ここ数年間にわたる調査では、乗っ込みシーズンに関わらず、夏でも、秋でも、船が出船できさえすれば厳冬期でも大ダイが釣れ続いている。
90cm超はもちろんのこと、100cm超も夢ではないパラダイスだ。
大きく育つ遺伝子を持った大ダイは優しく放流し、この豊かな漁場が末長く持続するよう、釣り人も協力していきたいものである。