小物用袖針4号しか使っちゃいけないタイラバ大会に参加
「第5回金袖杯」が岡山県玉野市田井港の遊漁船・セトマリンで開催された。
本大会はダイワのテスターを務める後迫正憲氏が発案。タイラバ針を寒バエやモロコ釣り、サビキの小アジ釣りなど小物用袖針4号に限定し、超小型のフックで、いかに大きなマダイをキャッチするかを競うものだ。
ルールは「がまかつ金袖4号」のみを使用し、針数の制限はなし。ちなみに、通常のマダイ針と言えば、線径(針の直径)は1mmなのに対し、金袖4号の線径わずかに0.33mm。断面積にすれば鯛針の1/10に過ぎない。
もう30年も昔のことだが、PEライン0.8号に、バスロッドというタックルで、玄界灘にタイラバ釣行した時のこと。船頭からは、「玄界灘のマダイをナメとるのか!」と大目玉を食らったことがあった。
袖針の4号と言ったら、それ以上の話である。指でも曲がるし、簡単に伸ばされる。マダイに噛まれたら、容易に折れることは想像に難くない。
そんな針で、いかにマダイを仕留めるのか?
この、けったいな大会の参加者は下のリストの通り、タイラバに関わる各社の錚々たるメンバーだ。
赤澤康弘氏(シマノ インストラクター)
後迫 正憲氏(ダイワ フィールドテスター)
佐々木洋三氏( シマノ アドバイザー、SASALABO 代表)
田中 亜衣さん(ジャッカルプロスタッフ)
中井一誠氏(ダイワフィールドテスター)
主原剛氏(NUHTECH 代表)
古谷英之氏(ダイワ 紅牙開発)
松島彰吾氏(ラグゼ 桜幻開発)
松本宏氏(天龍 企画営業課)
山際公洋氏(タカミテクノス)
中井一誠氏とは、もう30年以上前からのシーバス仲間。それこそ、旧交を温めるといった想いで参加した。
MAX44cmまでということは、40cmを超えたら、入賞だろうか? 出場を積み重ねてきたメンバーは攻略方法も理解しているであろうが、初参加とあっては、皆目想像が付かない。ちなみに今回初参加は赤澤康弘氏、田中亜衣さん、そして、筆者の3人だった。
大会の舞台となったのは、風光明媚な島々が美しい備讃瀬戸だ。ちなみに、岡山県はカキと海苔の養殖が盛んで、全国有数の生産量を誇る。これは、中国山地に発する岡山県の一級河川の吉井川と旭川、高梁川の三大水系が、里山の豊かな恵みを児島半島の両側に注いでいるからだ。
備讃瀬戸はその中心に位置し、広大な灘から島々が密集した瀬戸へと流れ込んだ東西からの潮流と、里山の恵みが急流で攪拌され、豊富な栄養と良質なプランクトンを育む。
この辺り一帯はマダイの産卵場となっており、春先には大型の桜ダイが乗っ込む。マダイも幼魚を育む栄養価の高い海を選んでいるのだ。
そんな備讃瀬戸に、今回お世話になったセトマリンさんはあった。
秋雨前線が停滞する中、朝からあいにくの雨模様、浦吉船長は持ち前の笑顔で、参加者を暖かく迎えてくれた。
そぼろ雨降る中、船は喜兵衛島に近いポイントに到着。第1投目、着底と同時に、筆者のタイラバにショートバイト。5本針のうち、1本が延ばされていた。「う〜ん、手強いな!」。
針を交換していると、赤澤氏にファーストヒット。浦吉船長のタモに守備よく納まったのは、26cmのマダイであった。金袖4号を4本セットしての釣果であった。
「もう仕掛けを落としているなんて信じられないわ」と、まだ仕掛けを結んでいた亜衣さん。
ヒットしようものなら、「タイ頑張れ〜!」のヤジが飛び、バラそうものなら、やんやの大喝采。私はおもちゃのロッドで29cmの小ダイをゲット。このように、大の大人が小ダイを本気で競い合う大会なのだ。
初めてのことで、正しいかどうかは分からないが、筆者のセッティングを紹介しよう。
何しろ、線径0.33mmという繊細な針だけに、1本針では破損のリスクが高すぎる。
断面積は通常のタイラバ針の10%、だから、10倍の10本にすれば、強度は保てそうだが、フッキングのパワーは1/10になってしまう。その上、針が絡むし、結ぶ手間もかかる。思い切って5本針としてみた。
アシストラインはPE0.8号を3cm。針が小さく、タタキも小さいので、太いラインは簡単にスッポ抜ける。テストの結果、0.8号ならば瞬間接着剤を使わなくても、抜けないことが分かった。
次に悩んだのが、アシストのセッティング。段違いにセットすると、順番に針が伸ばされそうである。5本共に同じ長さにして、口の周りに2本でも3本でも絡めようと考えた。
リールは、パワーギア(炎月プレミアム150PG)にPEラインは0.4号、リーダーは2号2ヒロ。
明石の2枚潮対策に使用しているタックルで、2枚潮でも真っすぐ仕掛けが落ちていくので、重宝している。
ネクタイはシングルコブラJr.ブラック金ゼブラの1本掛け。曇天にも晴天にも、威力を発揮するカラーだ。ロッドは全長1mほどのフルソリッド。皆からは、おもちゃのロッドと揶揄された。
釣り始めて小一時間、ミヨシが妙に騒がしい。山際氏、亜衣さん、松島氏のトリプルヒットだ。周囲の「タイ頑張れ〜!」コールに、亜衣さんの「タイ頑張るな〜!アイ頑張れ〜!」に、一同大爆笑。
松島氏はスピニングロッドで30cm台をゲット。4本針の1本が折れ、1本伸び、残り2本で耐えたと言う。何しろ、ドラグはズルズル、掛けたら、騙し騙し引き寄せるのがコツだ。
この大会、隙を見て他人のドラグを締めることは公認のルール。中井氏は、まるでマジシャンのような手付きで、すれ違いざまに他人のドラグを締め上げる。投入前にドラグを確認するのがクセになってしまった。
そして、この日1番の手応えがきた。慎重に引き寄せると、首尾よく36cmのマダイをキャッチすることができた。5本針のうち、1本は折れ、1本は伸び、残り3本での釣果だった。
この日、優勝したのは44cmを釣り上げた、タカミテクノスの山際公洋氏。金袖メジャーを振り切る44cmは、現行のルールになってから過去最大のサイズと言う。セットしたフックは4本。アシストはPE1.2号、長さは3cm同長だった。
勝者の弁を伺うと、「ミヨシが潮カミだっただけに終始アタリが多く、運がよかった。柔な袖針をフォローしてくれたのは、ティップからロッドエンドまで、完全ワンピースのソリッドロッド全体でよいクッションの役割を果たしてくれたから」と語る。
準優勝は同寸36cmが田中愛衣さん、松本宏氏、佐々木 洋三(筆者)の3人。
制約を課すことで新たなチャレンジ、新たな発見がある。日頃、いかに楽なタックルで釣行をしているか、筆者にとって改めて気付きの多い大会となった。主催者の皆さまの努力に感謝します。