釣り場の情景~写真から思い出される記憶 Vol.4【京都府・久美浜湾】

釣り人なら「記憶に残る釣り場風景」というものがある人も多い。それがよく通うホームグラウンドでも、1度しか行けなかった所でも。編集作業の折、以前に釣り場で撮った風景写真を見ていると、いろんな記憶が浮かんできた。今回は、京都府・久美浜湾。【編集部 倉橋卓司】

日本海側にもチヌのカカリ釣り場は各地に多数点在するが、京都府の北西端にある久美浜湾は超メジャーな釣り場のひとつ。

例年、釣りクラブなどの釣り大会やイベントが開催されるなど、釣り場のキャパも十分で、もちろん釣果実績も高い。

そんな久美浜湾は、記者には想い出深い釣り場のひとつ。と言うのも、筏やカセのカカリ釣りで、「初めてチヌを釣った釣り場」である。

それまでも、父と各地の筏へカレイ釣りに出掛けては、合い間にダンゴを練っては、〝チヌ釣りらしき〟ことはしていたが、チヌには全く縁がなかった。

1度だけ、徳島県堂ノ浦の筏でカニエサを使った時に、コン、コン、グーッと押さえ込んでいくビデオやテレビで見た教科書通りのアタリを目の当たりにしたが、初めて「チヌ!!」と確信できるアタリに緊張からか、頭からの合わせるという指令に、腕が全く反応せず、只々数回力強く押さえ込まれる穂先を見て、身体は動かずに固まっていた。

久美浜湾と言えば、例年春シーズン(4月1日~7月10日)と秋シーズン(8月20日~11月30日)に分けられて解禁と禁漁期間が設けられているが、初めて久美浜を訪れたのは、もう20数年前の週刊釣場速報の記者になって初年度の秋の解禁直後。

秋の久美浜湾開幕と言うことで取材に出掛けた。この時、上がったのが西中渡船の大型筏。10人近い釣り人たちと一緒に上がり、取材をしていた。

そんな時、携帯電話が鳴る。電話の主は、当時、福井県敦賀の五幡で釣具店、筏渡し、貸しボートを営んでいた「きはら釣具店」の店主、木原氏。聞けば、「城崎温泉に家族で旅行に来ているが、空き時間に釣りをするところはないか?」とのこと。

木原氏は磯のグレ、チヌなどで各地に遠征に行くほどのベテラン。筏のチヌ釣りに関しても名手と言うレベル。自分が今、久美浜にいることを話すと、同じ筏に釣りに来てくれた。

合流後、すぐにチヌを釣った後、「お前もやれよ!」と、木原氏は横で小粒のアケミの丸貝を撒いてくれた。なので、記者も小粒の丸貝エサで仕かけを下ろした。

そして、記者がほかの釣り人の写真を撮りに行っている時、木原氏の大きな声が聞こえた。「おい、アタってるぞ!!」。振り返ると、尻手ロープを付けた竿が竿受けから落ちそうになっていた。

瞬時に、記者の竿を手にして合わせた木原氏。記者が慌てて戻ると、「ハイっ、チヌや」と、まだ引きが伝わる竿を渡してくれた。この魚が記者のカカリ釣り人生で、初のチヌとなった実寸29cm。

半分釣ってもらったと言えば、それまでだが、釣れる時はこんなもの。この1尾以降、初めてチヌアタリを体験した時には動かなかった腕が、チヌと確信できるようなアタリにも怯むことなく、しっかりと合わせられるようになった。

記者のチヌカカリ釣り歴の序章で、大きな第一歩を踏み出させてくれた木原氏と久美浜湾は、自分のチヌカカリ釣りの原点と言える存在であり、釣り場である。

感謝!!

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