
菊池 雄一(きくち ゆういち) プロフィール
船タチウオテンヤ マニュアル
〇タチウオってどんな魚??
・大きく分けて日本では3種のタチウオが存在します
本タチウオ、オキナワオオタチ、テンジクタチウオ
※口は下アゴ部分が大きい→エサの下から噛みついた際に捉えやすい
昔は伊豆半島より西に生息していたものの近年では三陸、東北にまで北上し、釣れるエリアが拡大しています。マダイのように数年後は北海道でも釣れるかもしれません。
産卵期は6~10月(水温の上昇に伴い、通年で産卵が見られるようになる)で1回に約4万個程度の浮遊性卵を産みます(性転換する魚とも言われ、大型はメスが多い)。
釣れてくるタチウオをみれば、最初に大型の群れが入った際にはメスが多く、その後にオスが釣れる傾向が高い。
ウロコがなく、体の表面の銀粉状のものは「グアニン」という物質で覆われている(マニュキュア等にも利用されるようです)。また、ウロコがない為に、体が傷付くのを嫌がる習性がある。傷付くと、そこから感染症で死ぬパターンが多いです。ですから、生息域は砂泥エリアのへり等でボトムに張り付くというよりは浮いて泳ぐことが多いのです。
また、潮が緩いと立ち泳ぎをします。逆に捕食パターンや潮の流れるタイミングでは横泳ぎをしています。幽霊魚と言われる理由は、このような事から。ちなみに、立ち泳ぎ時には魚探に映りにくいです。
成長度合いは約1年で50cm前後、3年で1m前後になると言われています。※鹿児島錦江湾の今回出会ったタチウオ(160cm・3.8kg)は、何年生きているか、凄く興味が沸く部分でありました
成長が早く、生殖能力も高い魚故に、しっかりと守ることもすれば、タチウオが枯渇することはないと私は考えています。
獰猛な反面、非常に憶病であるのがタチウオ。上記に記した体表の問題や、歯が折れると命を落とす魚とも言われ、硬いものを食べる事を嫌います。なので、エサを見付けたとしても1回で食べるのではなく、傷付けながら、捕食しても安全かを常に探っています。
好物はウロコの柔らかいイワシ(アジはゼイゴがあり、アタリが激減)、イワシよりもエサ持ちがよく、匂いの強いサンマ、エビ類、イカ類等。※コノシロ、サヨリ等を使用するエリアもあります。
上記のような習性を頭に入れた上で、ダイワができるテンヤタチウオゲームに最適な物作りは何か?という深掘りを私自身続けています。
例えば、テンヤタチウオのバイトは大きく分けて3パターン。
①食い上げ
②ステイ(ホバリング)
③食い下げ
※②と③ではタチウオは、まだ臆病な状態にある場合の捕食パターン
また、テンヤタチウオで一番掛かりにくいアタリは、③ですよね。
急にひったくるアタリと言いますか、一瞬強い引きがあるものの、アワセを入れても時すでに遅しで、掛からないバイトになります。
今年発売されました「船タチウオテンヤSS AH」では、この引き込みバイト時の力を利用したテンヤになります。
タチウオの力(食い下げ)が加わることで、針が動きタチウオの頬を貫くシステムです。

Auto Hooking
また、タチウオがヒットした後もラインにテンヤがダイレクトに装着されているが故に、強い引きを体感できる反面、強い引きで針穴が大きくなる、口が割れる等でバラシに繋がることが非常に多い釣りでもあります。
ですが、AHは引きに応じて針がスライドし、力を分散してくれることでバラシを減少させてくれます。
国内最大クラスの本タチウオが狙える
鹿児島県・錦江湾のタチウオ
私自身、7年前からチャレンジ可能なタイミングで錦江湾の“神龍”を追い求めてきました。これまでは2度の大物ヒットも、フッキング後の強いキックバックでのラインブレイクで瞬殺されてきました。
過去の反省を踏まえ、ようやく自己新記録となる160cm(尻ビレなし)、3.8kgの本タチウオを釣りあげる事が出来ました。
釣りあげるまでにアプローチ、プロセス、また釣りあげた魚の内臓等から考察してみた部分がありますので、共有させて頂きます。
水深は60m前後(湾奥~湾中でのチャレンジのみ過去経験済み)なので40号テンヤでも釣りは可能ですが、回遊の一発大物を狙う釣りの為、50号メインをオススメします。
オススメする理由
・シルエットを大きく見せられること
・重いテンヤを使用することで常にラインが張りやすくなること
→不意な食い上げ、バイト中の速い泳ぎへの対処等

基本は夜釣りで、パラシュートやアンカー打ちでポイントを絞っての回遊性の魚を狙うスタイル。群れの反応に当てるという考え方ではなく、船下に回遊してきてくれる魚へのアプローチ、狙い打ちになります。
ボトムから10mまでのヒットが大半で、初期アタリは物凄く小さいことが多い。すなわち、警戒心マックスの状態。強めの誘いというよりかは、じっと構えて待つ釣り、もしくは僅かなフォールを使った釣り方が良いのかもしれません。
160cm・3.8kgは僅かなテンションフォールからの初期バイトでした。
サンマの尻尾部分をフルに使った1本付け等に効果があることも多いそう。ただ、湾内のベイトを見ていると、小さめのトビウオ、アオリイカ類等が多く、マッチザベイトの考え方からすれば、小さめのイワシ等も良いかもしれません。
160cm・3.8kgは、サンマの旨味エキス漬け切り身の重ね付けでした。
私のイメージとしては、匂い、旨味で神龍を誘い、やや柔らかめに仕上げたサンマエサだと何度もバイトしてくれ「深追い」しやすくなるという考え方です。
船長からも教えて頂きましたが、早アワセは厳禁。
ロッドを引ったくるバイトでも、初期アタリの場合は、まだエサを傷つけにきているだけで捕食に入っていないので、深追いからのモタレ⇒頬に針掛かりでないと、キャッチ率は相当に下がるかなと思います。※口先等への針掛かりの場合、引きが強すぎて口が割れるかなと。
大型狙いに絞った場合、8月、9月が最盛期。湾口の釣り場の場合は秋以降(10月以降)もチャンス大とのこと。※産卵を意識したメス個体の狙い撃ち
160cm・3.8kgは、2025年9月4日に釣れた魚です。
胃袋、内臓を確認しましたが、卵は少し残った状態で、幾度かの産卵後のような状態。胃袋には全く何も入っていないし、産卵に集中した個体の若干アフターの気配が漂うタチウオだったかもしれないです。
最後に…狙って獲る為のポイント
過度な引っ張り合いではブレイク、針外れに繋がるかと思います。
5kgや6kgを超えるタチウオもいる、と言われる錦江湾。このサイズのタチウオのキックバックを想像してください。きっと、とんでもないですよね。
同じタックルで、同じ釣り方(錦江湾)で8kgのブリや4kgのヒラメも釣り上げていますが、神龍には瞬殺された経緯が2度あります。
針はAH(auto hooking)を推奨
強烈な引きに耐える、いなす為の半遊動スライドが強い味方になるはずです。ちなみに、これでないと獲れないのでは?というぐらいの、すごい引きですから。
私は極鋭タチウオテンヤSP EX82S-177で挑みました。
諦めない心、集中力が重要です。
実際、8時間釣りをしてアタリが1回もないことも普通にあります。また、ファーストバイトは、かすれるレベルの僅かなアタリなことも多く、いつきても戦える万全の準備が必要です。
私は、この先もさらなる大物を目指して、チャレンジを続けていきます。
ウエイトは4kg、長さは170cmも超える“神龍”を目標に。
