「なんだ、この魚?」
ヒラメやアマダイ狙いの船釣りで、こんなゲストに出合ったことはないだろうか。
平たい体に、大きな口。そして、なんといっても体の中央にある、弓の的のような黒い斑点。一度見たら忘れられない、ユニークな姿のこの魚こそ、今回紹介する「マトウダイ」だ。
「外道」なんて言わせない! 実は、知る人ぞ知る食味抜群の高級魚。その魅力に気付いていないなんて、もったいない! 今回は、そんなマトウダイの生態から、釣り方、そして絶品料理まで、その魅力を余すことなくお伝えしよう。
的を持つ魚「マトウダイ」とは?
マトウダイは、マトウダイ目マトウダイ科に分類される海水魚。その特徴的な見た目から、体側面の的のような模様に由来して「的鯛」、馬の頭に似た顔つきから「馬頭鯛」とも呼ばれている。
日本近海では本州中部以南に多く生息し、水深30m~400mの砂泥底を好む。普段は群れを作らず、単独で行動していることが多い。
見た目のインパクトもさることながら、マトウダイのもう1つの特徴は、その大きな口。実はこの口、獲物を見つけると、瞬時に前方に突き出すことができる特殊な構造になっている。このユニークな捕食方法で、小魚やエビ、イカなどを捕らえているのだ。
マトウダイは、淡白でクセのない上質な白身魚。しかし、特筆すべきは、その濃厚でクリーミーな肝だ。新鮮なマトウダイの肝は、まさに絶品。醤油に溶いて「肝醤油」にして刺身でいただけば、その味わいは1度食べたら忘れられないほどの感動を覚えるだろう。
この極上の肝を味わえるのは、釣り人の特権。市場に出回る頃には鮮度が落ちてしまうため、釣りたてでしか味わうことのできない、まさに至高の味なのだ。
もちろん、身も絶品。加熱すると旨味が増し、もちっとした食感に変わる。定番のムニエルやソテー、フライはもちろん、刺身や煮付け、鍋物、酒蒸しなど、どんな料理にしても美味しくいただける、まさに万能選手。
そのユニークな見た目から、敬遠してしまう人もいるかもしれない。しかし、1度その味を知ってしまえば、誰もがその魅力の虜になるはずだ。
「外道」から「本命」へ。専門に狙う船はないかもしれないが、裏本命として、この的を持つ高級魚「マトウダイ」を狙ってみてはいかがだろうか。釣り人だけが味わえる極上の肝と、多彩な絶品料理が、あなたを待っているぞ。