腕を競い、大物を追い求める興奮。
釣り大会の熱気は、アングラーにとって何物にも代えがたい魅力。しかし、その熱狂の裏で「釣果をどう持ち帰るか」という嬉しい悲鳴が上がることもあります。
海のフードドライブとは
そんなアングラーの誇りである釣果を、未来を担う子どもたちの笑顔に繋げる画期的な取り組みがあります。
兵庫県釣りインストラクター連絡機構が推進する「海のフードドライブ」。釣りの価値を高め、社会と釣り人を繋ぐ、新しい時代の架け橋となる活動です。
大阪湾での船のタチウオ釣りの最強王者を決める「大阪湾タチウオKINGバトル」。毎年、多くの凄腕アングラーが参戦し、時に嬉しい悲鳴が上がるほどの大漁に恵まれることがあります。もちろん、その日の食卓を豪華に彩り、ご近所へお裾分けして喜ばれるのも醍醐味です。それでもなお、せっかく釣り上げた魚たち。「もっと誰かの役に立てることができれば」。そんな想いを自然と抱くのです。
この課題に光を当てたのが、兵庫県釣りインストラクター連絡機構がボランティアで展開する「海のフードドライブ」です。
その仕組みはとてもシンプルです。大会終了後、アングラーが持ち帰らないタチウオを港で回収。徹底した鮮度管理のもと冷蔵保管し、フードバンクを経由して子ども食堂へと届けられます。
この活動の主役は、あくまで魚を提供してくださる釣り人1人ひとりです。そして、その温かい思いを繋ぐために、大会主催の「つりそく」をはじめ、釣り船、フードバンクといった多くの関係者が協力し、見事な連携の輪が生まれています。
この活動には、主に2つの大きな目的があります。
①資源の有効利用: 釣り上げた貴重な命を1つも無駄にせず、価値ある食材として活かすこと。
②釣り人の社会的理解向上: 釣りが単なる趣味ではなく、社会に貢献できる素晴らしい活動であることを広く知ってもらうこと。
実際に、前年度には130件もの子ども食堂へ新鮮なタチウオが届けられました。今期も予選が半分終了した時点で、すでに多くの笑顔が生まれているといいます。
子ども食堂からは、 「お肉より高価な新鮮な魚は、本当に嬉しいです!」、「初めてタチウオを食べました。すごく美味しい!」、「高級魚をありがとうございます。新鮮だから骨も取りやすくて、子どもたちも喜んでいました」 といった感謝の声が絶えません。釣り人の1尾が、子どもたちの貴重な食体験と、日本の豊かな魚食文化を未来に繋いでいるのです。
広がる共感の輪と、未来への挑戦
この活動は、参加するアングラーの意識にもよい変化をもたらしています。 「釣れすぎたタチウオが、こんな風に役立つなんて本当にありがたい」 「素晴らしい活動。ぜひ関東でも広めてほしい」 「普段の釣りでも、個人的に子ども食堂へ届けられるようになれば嬉しい」 といった声が多数寄せられています。
もちろん、今後の活動拡大に向けて課題もあります。行政のルール上、骨のある鮮魚は受け入れられにくいという現実の壁です。しかし、同機構は諦めません。「誰が、いつ、どこで釣った、どんな魚か」という品質の管理も確立し、誰もが安心して魚を届け、受け取れるシステムの構築を今後の目標に掲げています。
「海のフードドライブ」は、釣りという趣味の可能性を大きく広げる挑戦です。アングラーの皆様の情熱と誇りが、子どもたちの健やかな成長を支え、地域社会を豊かにしていきます。この温かい輪が、兵庫から全国へとさらに広がっていくことが期待されます。
「大阪湾タチウオKINGバトル2025」の回収実施スケジュール・船宿についてはこちら