菊池 雄一(きくち ゆういち) プロフィール

11月3日(日)、和歌山・加太の三邦丸様にて開催された「タチウオKINGバトルセミファイナル2025」。多くの強豪が集う中、私、菊池雄一はここで敗退となりました。
悔しい。しかし、この敗戦を次に活かさねば意味がありません。
セミファイナルに至るまでのプロセス、そして当日の状況分析、反省すべき点をここに記します。トーナメントという極限の状況下での思考が、皆さんのタチウオ釣りの何か少しでも参考になれば幸いです。
当日の状況と最大の敵:「大雨後の濁り」


抽選の結果、私はあおさんぽうの左舷トモから3番目の釣座。午前5時45分に出船し、実釣スタートは6時過ぎ。
気がかりだったのは、数日前の大雨の影響です。 見た目では分かりにくかったのですが、ポイントの所々で濁りが入っていたと予測しています。
なぜなら、船が流れるラインが少し違うだけでアタリが活発になったり、直後にパタリと止まったり、という状況が顕著に続いたからです。
ご存知の通り、タチウオは濁りを嫌います。 特に「泥濁り」は、呼吸の際に泥がエラに入り、命に関わる危険性すらある。
だから「捕食はしたいが、濁りの中でむやみに口を開ける回数は極力減らしたい」…これが、この日のタチウオの心境ではなかったでしょうか。
まだ暗い時間帯、日が昇っていないこと、そしてこの「濁り」が重なり、スタート直後は全くアタリが出せない苦しい展開でした。同船者も同じ状況だったと思います。
敗因分析①:焦りが生んだ「誘いのズレ」
大雨前は半日で100尾超えの釣果も出ていたエリア。魚が沢山いることは間違いありません。
わずか3時間の短期決戦。スタートダッシュを決めたい焦りが、私を迷わせました。
アタリが欲しいあまり、「縦の誘い(アタリ棚のサーチ)」の間隔、つまり巻き上げるスピードが早すぎたのではないか?…今、猛省している点です。
どういう意味か?
この日のように濁った状況では、まずエサを認識させる「横の動き」(ジャークやダートなどキレのあるアクション)が有効でした。 しかし、肝心なのはその後。タチウオが反応する「一瞬の間」を与えるため、そのレンジで長く見せる必要があった。
焦りの中で、その「間」を取る前の「縦の誘い(=巻くスピード)」が、ほんの少し早かったのかもしれません。
敗因分析②:「食い上げない」アタリの正体

濁りがキツかったことを証明するように、当日は「引き込みバイト」が多かったのも特徴です。
高活性時のような、獲物を確実に認識した「食い上げのバイト」ではありません。 エサをつまむように(確認するように)触り、最終的に引き込む。
これも、濁りの中で口を大きく開けたくないタチウオの心理が働いた結果だと推測しています。
敗因分析③:戦略の「迷い」と「欠如」
限られた時間の中で、戦略の「迷い」は致命傷になります。

1. エサの選択
高活性時以外、アタリの質・力感はイワシエサが抜群でした。しかし、どうしてもエサ持ちの部分でサンマに劣る。エサ交換の回数が増え、手返しに時間を要す…この「迷い」の中で釣りを続けてしまいました。 エサ持ち抜群のサンマエサを使うにしても、この日のような状況下では、もう少し緩めに仕上げておくべきだった、という反省もあります。
2. テンヤカラーの選択
3時間勝負なので、私は「グロー系」に的を絞って展開しました。 しかし、疑いの時間帯を持つべきでした。特に「ケイムラ系」です。
洲本沖で言うところのアカキン(ケイムラ系)のようなカラーを忍ばせておいても良かったなと。 ケイムラは低水温期だけでなく、雨や曇りといったローライトのタイミングで爆発的な効果を発揮することが非常に多いからです。この状況判断ができませんでした。
今回、ロッドは「極鋭 タチウオテンヤSP EX82S-177」をチョイスしました。 確実にタチウオに「追わせ」て食わせ、頬掛かり(カンヌキ)に掛け、バラシを軽減する。今期、私が一番信用するロッドです。
この選択は間違っておらず、ヒットしてから巻き上げ途中のバラシはゼロで展開できました。
しかし…道具の性能に助けられながらも、魚を獲りこぼした事実があります。 「追わせ」を意識したタックルだったにも関わらず、焦りから早合わせしたタイミングでの「身切れ」が3回。さらに巻き上げ中の「PE高切れ」が1回。 これが非常に、非常に悔やまれます。
総括:ファイナリストとの「差」

見渡す限り、そして実際の釣りを見ていても、本当に実力者ばかりだった2025年のセミファイナル。
限られた時間の中でのいち早い状況判断、そして事前に決めた戦略に固執しない臨機応変さ。そこがファイナルに進まれた方々との「差」だったと感じています。
実際、私は8時30分を過ぎた「転流後」に大失速しました。 アタリが出せない中、濁りを考慮して「ボトム付近」に的を絞りましたが、これが裏目。実際は「60~70mライン」にハニースポットがあったようです。
日頃からの状況判断に、今後も磨きをかけていきたい。 アタリがある棚、誘い、エサにも常に「疑い」を持ちながら予測を立て、様々なアプローチを試み、その精度を上げていけるようなアングラーを目指します。
最後に、ファイナルに進まれますアングラーの皆様、改めましておめでとうございます。 それぞれの環境、スケジュール等ある中かとは思いますが最善を尽くされ、最終ゴールを迎えた時に笑っていられますように。
全力応援させて頂きます。 ありがとうございました。



























