
「アイゴ」と聞くと、あなたはどんなイメージを持ちますか?
おそらく「ヒレに毒がある危ない魚」というイメージが先行するのではないでしょうか。実際、記者の私もそうでした。堤防や磯で釣れる身近な魚でありながら、その「毒」が怖くて、正直これまで積極的に釣ろうと思ったことはありませんでした。
ところが先日、知人から衝撃的な話を聞いたのです。
「アイゴ、美味しいから釣りに行くんやで」
え、あのアイゴを? 毒魚なのに? 詳しく聞くと、和歌山や三重では幼魚の「バリコ」は身近な大衆魚で、成魚も旬の時期は絶品なんだとか。
しかも、その知人いわく「酒粕で釣る」という、なんとも興味深い釣り方もあるとのこと。「毒魚」だけど「絶品」。 「身近」だけど「未体験」。
こんなに好奇心をくすぐられる魚、他にいますか?(いや、いない!) というわけで今回は、私自身が本気で釣ってみたい魚「アイゴ」について、その魅力と釣り方、そして最も重要な「安全な扱い方」を調べてまとめました。
1. アイゴってどんな魚? 「毒」と「美味」の二面性
まずは基本情報から。アイゴは堤防、筏、磯など、本当に色々な場所で釣れる魚です。
■ 危険! 絶対に知っておくべき「毒」
アイゴが「毒魚」と呼ばれる所以。それは「背ビレ」「腹ビレ」「尻ビレ」のトゲにあります。
出典:魚食普及推進センター毒の場所: 背ビレ、腹ビレ、尻ビレの硬いトゲ。
※尾ビレや胸ビレには毒はありません。
刺されたら: 激しい痛みに襲われます。毒はタンパク質なので、熱に弱いとされています。
応急処置: 刺されたら、まずトゲが残っていないか確認し、流水で洗います。その後、火傷しない程度のお湯(45〜50℃目安)に患部をつけると痛みが和らぐと言われていますが、これはあくまで応急処置。痛みや腫れがひどい場合は、必ず医療機関を受診してください。
■ 美味! 知る人ぞ知る「絶品魚」
危険な側面ばかりが強調されがちですが、アイゴは「食」の面でも注目すべき魚です。
バリコ(幼魚): 関西、特に和歌山や三重では、アイゴの幼魚を「バリコ」と呼び、珍重します。バリコの干物などは、高級品として扱われるほど。
成魚の味: 旬は秋から冬にかけて。脂が乗ったアイゴの刺し身や煮付けは、一度食べたらやみつきになる美味しさだとか。
「臭い」は処理次第: 「アイゴは磯臭い」というイメージもありますが、これは締め方や下処理の方法で劇的に変わるそうです。
2. アイゴ釣りの魅力とは?
なぜわざわざ毒魚のアイゴを狙うのか? 理由は明確です。
身近な場所で釣れる手軽さ: 遠征しなくても、近所の堤防で狙えるのが魅力です。
強烈な引き: サイズの割に引きが強く、掛かった瞬間の「ギュン!」という引きは釣り人を夢中にさせます。
食べても美味しい:(前述の通り)正しく処理すれば、持ち帰ってからも楽しみが待っています。
3. アイゴの釣り方と、あの「酒粕」のウワサ
アイゴは雑食性で、色々な釣り方で釣れます。
シーズン: ほぼ通年釣れますが、食味の旬は秋〜冬。バリコ(幼魚)は初夏〜夏によく釣れます。
釣り方:
サビキ釣り: バリコ(幼魚)狙いや、成魚もアミエビのマキエに集まってくると、サビキに掛かることがあります。
ウキフカセ釣り: グレやチヌ狙いの外道として有名ですが、本命で狙うのも面白いです。
エサ: オキアミ、アミエビ、海藻類など。
そして、例の「酒粕」。 知人の話では、マキエに酒粕を混ぜるそうです。どうやらアイゴは酒粕の匂いに強く惹かれるらしく、集魚効果が抜群なんだとか。これは一度試してみる価値がありそうです!ス―パーで売っている酒粕でOKですが、釣りエサの浜市さんで、専用のエサも販売されています!
出典:浜市4. 【最重要】釣れたらコレだけは守って! 安全な処理と持ち帰り方
アイゴ釣りのハイライトであり、最も緊張する瞬間です。安全に楽しむために、以下の手順を徹底してください。
■ 必須アイテム
フィッシュグリップ(魚バサミ)
プライヤー(針外し)
キッチンバサミ(万能バサミ)
【STEP 1】 素手で触るな! フィッシュグリップで掴む
釣れたアイゴは、絶対に素手で触ってはいけません。必ずフィッシュグリップで下アゴなどをしっかり掴みましょう。アイゴ専用のこのアイテムが超気になる!

がまかつさんの「アイゴバサミDX GM1856」
【STEP 2】針を外す
フィッシュグリップで固定した状態で、プライヤーを使って慎重に針を外します。
【STEP 3】 毒バリを全てカット!
ここが一番大事です。持ち帰ると決めたら、釣ったその場で、毒のあるヒレ(背ビレ、腹ビレ、尻ビレ)をキッチンバサミで全て根元から切り落とします。
なぜカットするのか?
クーラーボックスや袋に入れる際、誤って刺さる事故を防ぐため。
帰宅後の調理が圧倒的に安全になるため。
絞めたり、死んだりしても、毒バリの毒は残っています。「死んでるから大丈夫」は通用しません。必ずカットしてください。
【STEP 4】 締め方と血抜き(臭み対策)
毒バリをカットしたら、エラを切るなどして血抜きを行います。 アイゴの臭みの原因は内臓(特に腸)にあることが多いので、可能であればその場で、可能でなければ帰宅後すぐに内臓を傷つけないように取り除き、サッと洗うと完璧です。
【STEP 5】 しっかり冷やして持ち帰る
血抜きと処理が終わったら、氷が効いたクーラーボックスでしっかり冷やして持ち帰りましょう。
5. おすすめのアイゴ料理
下処理をしっかりしたアイゴは、まさに絶品!
出典:魚食普及推進センター刺し身(薄造り、背越し): 鮮度が命。独特の風味とコリコリした食感が楽しめます。
煮付け: 甘辛く煮付けると、ご飯にもお酒にも最高です。
塩焼き・唐揚げ: シンプルに焼いたり、揚げたりしても美味しい魚です。
出典:フィッシングマックスフィッシングマックスさんのウェブサイトには「アイゴの一夜干し」の紹介が!これも美味しそうですね。
「毒魚」というイメージが先行するアイゴですが、正しい知識と装備(フィッシュグリップとハサミ!)さえあれば、決して怖すぎる魚ではありません。 むしろ、身近な場所で強い引きと絶品の味を楽しませてくれる、非常に魅力的なターゲットです。
記者の私も、近いうちに「酒粕」を買い込んで、初のアイゴ釣りに挑戦してこようと思います! 皆さんも、安全対策を万全にして、アイゴ釣りにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

























