二十四節気では早くも「小雪(しょうせつ)」、雪が舞う季節だが、積もるほどではないことから小雪と言われた。
西高東低の気圧配置が強まり、木枯らしが吹き荒れると、海水温はたちまち1、2度も冷え込む。
例え海水温が低くても、安定していればマダイの活性はそれほど下がらないが、水温が変化した時は、人間同様に寒さが沁みるのか、マダイも急に口を使わなくなる。
高松港「第一優勝丸」で鯛ラバ体験会を開催
そんなシビアな11月下旬に、シャローのタイラバゲームでお馴染みの高松港「第一優勝丸」で、「鯛ラバ体験会」を開催することになった。
体験会の参加者は、前泊で高松に入られた家族連れの皆さんを含めて、総勢17人、2日間に及ぶ体験会である。
石川船長に伺うと、先週吹き荒れた木枯しの影響で、「海水温は2度も低下している」と言う。
初めてタイラバ釣りにチャレンジする小学生もおり、私としては、なんとか紅葉鯛を釣り上げて頂きたいと、願うような気持ちになる。
船長と相談し、少しでも活性の高いマダイが居付きそうなエリアを絞り込む。
水温の低下とともに、漁場は西の瀬戸大橋方面から東の小豆島方面へ、徐々に移動していく。
また、マダイは北西風が直接吹きつける高松側の海域よりも、北西風の風裏となる直島や豊島、小豆島の南側の海域に居付く傾向がある。
水深の浅い漁場だけに、冷たい北西風の影響を受けにくい場所がポイントになる。
厳冬期、サビキでマダイを狙う小豆島の「大角鼻」も、やはり北西風を遮る好漁場だ。
この時期のマダイは、ネクタイカラーに対して極めてナーバスだ。
同じオレンジ色でも、鮮やかなオレンジには興味を示すが、くすんだオレンジにはまったく反応しない日もある。
初日、最初にヒットしたのは、この体験会に初めて参加された工藤圭司氏だ。
新色の「シャイン・オレンジ」のコブラカーリーで、コチを釣り上げた。
続いて、私が同じ「シャイン・オレンジ」のコブラカーリー でアコウ(キジハタ)をゲット。
瀬戸内海は、潮回りが大きい時には、海底の砂泥が舞い上がって、濁りがキツくなる。
例え上潮が澄んでいても、底潮が濁るので、こんな時は濁りの中でも目立つ鮮やかな「オレンジ」や「ピンク」が圧倒的に有利となる。
突然、大ドモで竿を出していた小川一幸氏のドラグサウンドが、船中に響き、良型のハマチを釣り上げた。
魚種はかわっても、やはりオレンジカーリーのネクタイが有効だった。
続いて、胴の間で竿を出していた菱田義和氏のロッドが絞り込まれ、まずまずのサイズのマダイを、立て続けに2尾キャッチ。
やはり鮮やかなオレンジ色で「トラッド・ピンテール」型であった。
すかさずゼブラオレンジのトラッド・ピンテールに付けかえると、私にもハマチがヒットしてきた。
スピニングタックルでのタイラバテクニック習得に専念していた武内亮輔氏は、小型ながらもマダイをゲット。
やはり、「シャイン・オレンジ」色であった。
2日目は海況に変化が
ところが2日目になると、ヒットするネクタイカラーは、ガラッとかわった。
前日よりも潮が澄んできたのである。
最初のヒットは、中野幸治氏。美味しそうなサイズのマダイをゲット。
ヒットしたネクタイは、アミエビピンクのピンテール。
続いて貝原悠剛氏が、やはりアミエビピンクのコブラカーリーで良型のマダイを釣り上げた。
潮が澄んでくると、鮮やかなネクタイカラーよりも「アミエビピンク」とか、マダイの好物「海苔グリーン」カラーが奏功することが多い。
これからの季節、ぜひ、ラインナップしておきたいカラーバリエーションだ。
この日のアタリのパターンは、モゾッと噛んですぐに放してしまうショートバイトばかり。
「あっ!」とか「うっ!」という釣り人の声は上がるのだが、なかなかフッキングしない。
魚探の反応を見る限り、マダイの反応はベタ底だ。
シマノのレンタルタックルは、全て最新のローギアのリールを用意しているので、タイラバが着底したら、ボトムから6~8回も巻き上げれば十分である。
着底からひと巻き目で、引ったくるようなアタリがあり、中にはドラグを引き出すサイズもいるが、すぐに放してしまうので、釣り人の溜息が漏れる。
おそらく、巻きスピードが微妙に合っていないのである。
巻きスピードは、ハンドル1回転を2秒で回すくらいの「超デッドスロー」。
何よりもボトムにタッチする回数を増やし、しつこくマダイの眼前にネクタイを漂わせ、反射的に口を使わせるのがコツだ。
もう1つ、気を配りたいのはフックの選択だ。
デッドスローでもネクタイが、よく動くようにフックは1本針をセット。
アタリの数は、断然1本針の方が多い。
それから、ショートバイトでも吸い込まれるように、マダイの口唇を縫い刺すバーブレスのフックが断然有利だ。
オススメは私が監修した金龍鉤の「鯛ラバ専用アシストフック・バーブレス喰わせ鈎」。
クライマックスは10時半であった。
この体験会に参加した最年少、小学1年生の中野寿紀君は、言われた通りタイラバを着底させ、デッドスローで巻き上げては落とすという動作を、着実に繰り返してくれた。
すると、突然ロッドが水面に突き刺さった。
鋭敏なマダイのファイトには、さすがに耐えきれず、ロッドを船縁に乗せてのファイトになったが、大人に頼らず自分だけの力で、休むことなくリールを巻きけ、仲みゆきさんが構えるタモの中に、堂々50cmの紅葉鯛が納まった。
マダイの口唇を縫い刺したのは、ネムリ形状の「バーブレス喰わせ鈎」、ちなみに「ねむり針」とは、針先が内側を向いていて、一旦、口内に吸い込まれた針が、口から出てきて唇に掛かるという形状で、延縄漁に使用されるのも、このネムリ針である。
バーブレスと言うと、バレるのではないかと心配される方もいらっしゃるが、タイラバ釣りはロッドも軟らかく、常にテンションが掛かっている。
アユ針のように刺さりがよく、食い渋りの厳しい状況ではあったが、初めてタイラバにチャレンジする小学1年生も、見事にマダイを仕留めることができた。
彼の誇らしげな顔が眩しかった。