暮れになると、正月のマダイを買い求める客で賑わう明石の「魚の棚商店街」。
中でも、明石漁港から水揚げされたばかりの「前もの」と呼ばれる活きのよいマダイは人気の的だ。
刺し身はもちろんのこと、正月には昔ながらに炭火を使ってこんがりときつね色に焼き上げたマダイを食卓に飾る。
化粧塩で形を整えたヒレは活ダイのように美しく、箸を付けるのも躊躇うほど。
そんな「前もん」のマダイを、自ら仕入れに明石沖へ釣行する釣り人も少なくない。
そんな事情か、12月中旬に明石で開催した「鯛ラバ体験会」は参加を募るや否や、即座に満員御礼になった。
ところが、例年に反して、今冬はマダイの釣果が芳しくない。
お世話になるタイラバ船「海豚」の大村船長に伺うと、「この時期にこんなに厳しいのは開業以来初めて。海水温が急に下がったことや今年は台風が来ずに、海が掻きまぜられなかったこと、さらに、明石ダコの不漁やサバフグの異常発生など、明石の海が大きくかわってきたようで、漁師たちも心配している」と言う。
前夜に、出船を30分早めたいと連絡があった。下り潮が残るうちに攻めたいポイントがあると言うのだ。5時半に12人の参加者が乗船場に集まり、ライフジャケットとマスク着用し、乗船。
まだ薄暗い6時に東二見を出港した。海豚1号艇は明石の海域を見切り、小豆島へ向かった。
一方、我々が乗船した2号艇は、淡路島は北淡町西側の水深50~60mのポイントからスタートフィッシング。
朝は雲ひとつない快晴で、しかも無風、絶好のタイラバ日和となった。この日の潮回りは小潮、船速は1.2ノット前後だ。10時過ぎに転流するので、このポイントは潮が緩む9時半頃までが勝負となる。
ここで、「ネクタイのカラー選び」について述べておこう。
潮が澄んでいて、海中が明るい時は、コントラストがはっきりした赤色や黒のネクタイ、あるいは赤に黒のゼブラ模様をチョイスするのが有効である。
一方、濁り潮やローライト時は、蛍光オレンジなど、輝くような明るいオレンジ色を装着するのがセオリーである。
この日、私がチョイスしたのは「オレンジゼブラ」、「シャインオレンジ」、「ゴールドゼブラ」、「レッドゼブラ」、「アミエビピンク」、それに明石で実績のある「海苔グリーン」だ。
ネクタイの形状は「カーリー」、「スリムカーリー」、「トラッドピンテール(ストレート)」を組み合わせ、体験会に参加された皆さんに、それぞれ異なるカラーと形状でアタるカラーや形状を探り出す。
1日のヒットした時間と釣れたネクタイを潮見表と合わせて分析
この日、船長のお話では、厳しいはずの明石だったが潮読みが的中し、朝の潮にマダイのアタリが集中した。潮時が分かるようにヒットした時間と、釣れたネクタイを記してみよう。

船中のファーストヒット、松内氏のマダイ
・7時9分…ファーストヒットは左舷前から2番目で竿を出していた松内満氏。30cm前後のマダイだ。コブラのトラッドピンテール、ゼブラオレンジに「喰わせ鈎」(金龍鉤)1本針仕様。
・7時11分…右舷ミヨシ、ご夫婦で参加された桑本美尾さんが、同サイズのマダイを釣り上げた。やはり、オレンジカラーのネクタイが奏功。
・7時32分…奥様を追いかけるようにご主人の桑本明博氏も、オレンジカラーのネクタイ。
・7時36分…初参加、本格的にタイラバをするのは初めてと言う、八木章人氏が40cmを超える良型マダイをゲット。1本針仕様。オレンジネクタイ。
・7時53分…桑本明博氏、1本針仕様にコブラスリムカーリー、オレンジゼブラネクタイ。
・8時7分…武内亮輔氏、1本針仕様。コブラスリムカーリー、オレンジゼブラネクタイ。
・8時8分…大鯛ハンターの弥谷和也氏が、珍しく小ダイをゲット。
・8時11分…松内満氏が1本針仕様。コブラカーリー、ゴールドゼブラネクタイだ。この日はコンスタントにゴールドゼブラにヒットが続いた。
・9時12分…松内満氏、これまた1本針仕様。コブラスリムカーリーレッドゼブラ。
・9時13分…桑本明博氏。
・9時39分…赤星卓氏。オレンジカラー、1本針仕様。
赤星氏のマダイを最後に沈黙が続く。やはり潮が緩んだからで、船長はこの漁場を見切り、本流筋へ移動。

9時39分、赤星氏が釣り上げた、このマダイを最後に沈黙が続いた
次にマダイが口を使い出したのは転流後、上り潮が効き始めた11時半からだった。
・11時半…石橋勝氏、小ダイでリリース。
・11時36分…桑本美尾さんも小ダイをゲット。
・11時36分…武内亮輔氏、コブラスリムカーリー、レッドゼブラネクタイ、1本針仕様。このマダイがこの日、最後の1尾となった。
振り返ってみると、ヒットは上り潮の7時9分から9時39分までの2時間半、転流後の11時半から40分の10分間であったことが分かる。
下の潮見表のように、下り潮は緩く、釣れる潮時が長時間続いたこと、上り潮は潮が速く、釣れる潮が短かったことがご理解いただけると思う。
納竿の14時まではタイラバに次々とハマチがヒット。ハマチ潮となった。
・12時半…増田大樹氏にハマチがヒット。
・12時40分…八木章人氏も1本針仕様。コブラスリムカーリー、オレンジゼブラネクタイ。
・12時53分…高橋哲哉氏、1本針仕様。コブラスリムカーリー、レッドゼブラネクタイ。
・12時56分…呉宮興隆氏。
・13時2分…八木章人氏がゼブラゴールドで。
・13時7分…弥谷和也氏。
・13時16分…桑本明博氏。
・13時46分…そして、初めてタイラバ釣りを体験した伊藤ひとみさんが、納竿直前にハマチをゲット。これで全員安打を達成し、船上は大いに盛り上がった。

タイラバ初挑戦の伊藤ひとみさんがハマチをゲット
厳しいと言われる海況でも、ネクタイの選択とチューニング次第でマダイ15尾、ハマチ8尾の好釣果となった。
この日はマダイはボトムに張り付き、タイラバ着底後、デッドスローでリールのハンドルを5~8回巻くというのが基本パターン。
デッドスローでもネクタイをヒラヒラとなびかせるためには、ヘッドとネクタイのバランスが重要である。
また、メーカーによってはヘッドの形状に合わせたネクタイ留めを用意していて、他メーカーのものをセットすると、ヘッドがクルクル回転したり、イレギュラーな動きを起こすこともある。
純正パーツを装着することが大切である。

1本針仕様のコブラカーリー、ゴールドゼブラネクタイ。
もう1つは1本針仕様だ。デッドスローでもよく動くし、ネクタイの針への絡みが激減し、体験会を通じて比較してみてもアタリの数は1本針の方が多い。
フッキングパワーも1本針なら針先に100%の力がかかる。2本針なら残念ながら半減してしまう。まず、アタリ数を増やすことが第一である。
アシストラインは柔らかいPEライン(5~6号)を用い、アシストの長さはネクタイの長さに応じて3~4cmにしている。
自作するのが苦手な方には、金龍鉤の「鯛ラバ専用アシストフックバーブレス」をお勧めしたい。