兵庫県南西部、姫路港から18kmの播磨灘に、大小44もの島々から成る家島諸島がある。
海峡部の瀬戸と、広大な灘が、潮の干満によってさまざまな流れを生み出し、見るからにマダイの好漁場を形成している。
家島と言えば、かれこれ30年も前にショアからのシーバス釣りに通い詰めた時期があった。荒涼とした採石場は、あたかも「真昼の決闘場」。採石で発生した濁りと、澄み潮の境目で、良型のスズキがよくヒットしたことを思い出す。
島の産業の中心は、男鹿島や西島から切り出された石材だ。六甲アイランドや関西国際空港の埋め立てにも、家島の石が使われた。古くは豊臣秀吉が家島の石を切り出し、大阪城の石垣を築いたことでも有名である。大阪一円の土木のインフラを支えてきたのも、家島なのである。
話は逸れるが、江戸時代に船で運ばれ、そのまま淀川沿岸に置き去りにされた石が、今も存在する。その石は大阪城の石垣になれなかったことから「残念石」と呼ばれたというから、面白い。
そんな、家島諸島をポイントとする凄腕のexceedの三枝卓功船長を、釣友の北野一夫氏から紹介いただいた。
播磨灘・家島諸島でアフタースポーンを攻略
6月8日、釣具のポイント姫路網干店に近い、大津茂川の乗船場に4時半に集合し、5時に出船した。甲板はフラットで移動しやすく、キレイに整頓され、気持ちがよい。
5時40分頃にスタートフィッシング。
潮は新月大潮後の中潮で悪くない。しかし、アフタースポーン(産卵直後)のマダイは、タイラバを追い掛けるほど体力が回復していない。
この低活性のマダイをどう攻略するかが、今回の釣行の課題だ。下手を打つと終日アタリもなく、せっかく家島まで赴きながら釣り上げることができない「残念鯛」と呼ばれることになるかもだ。
5時45分、開始早々、シングルコブラカーリー(オレンジ金ドット)の早巻きにマダイがチェイスする感触があって、それから10回ほど巻いてから竿先を絞り込んだ。
船中ファーストヒットは、小ダイサイズ。バーブレスの喰わせ鈎が上唇を皮一枚で縫い刺していた。指でフックを摘むだけでスッと針が抜ける。
すぐにリリースし、タイラバを再投入。工場から届いたばかりのシングルコブラのニューカラーが、この日のパターンに合致したことも嬉しかった。
この時期、ボトムでじっとしているマダイは、それこそアリの歩くようなデッドスローで誘うと、モゾッとアタッてくることがある。しかし、フッキングには結び付かず、守備よくフッキングできた時は、喜びも一入だ。
とても神経衰弱な釣りで、アタリがあっても乗せらないので、イライラする。
このボトムをねちっこく探る釣りに対し、ハイスピードで一気に宙層まで探る、アップテンポな釣り方もある。早めに産卵を終え、体力も回復し、宙層に浮き始めた個体を狙う釣り方だ。
個体数は少ないが、活性は高いのでフッキング率は高い。迷わずに、どちらかのパターンをやり切ることが肝心で、アフタースポーンの攻略は、心の迷いが大敵である。
三枝船長は、潮を確認するために、自らタイラバを投入。他船の動きも監視しながら、やはりアップテンポの釣りを展開する。
何度かネクタイカラーを交換し、6時55分、やはり宙層までの早巻きで同様のサイズをキャッチ。ヒットカラーは、船長自らプロデュースしたコーラベースにグリーン箔、海中での光り具合がとても魅惑的なネクタイであった。
船長に伺うと「朝イチは底を無視して宙層までしっかり巻いた人にアタった。20巻きから違和感の追従が始まり、25巻きでお触り、30巻きで本アタリがでて、35巻きでヒット!」と、アフタースポーンのアップテンポで宙層まで誘う釣法を推奨。
「このテクニカルな釣りが楽しすぎる」と相合を崩した。
少しすると風が強くなり、いわゆる潮と風が喧嘩する状況に陥った。ネクタイカラーや形状、巻きスピードと、さまざまなパターンを試すが、なかなか正解を導き出せない。
少しキャストして斜めに引き、潮に流されたタイラバがU字を描くようにカーブする変曲点で、リールの巻き抵抗がかわったので、等速巻きからの早巻きに変速してみた。あたかも渓流でアマゴを釣る時のように。
すると、エサが逃げると思ったのか、急にガツンとアタリが。タイラバを追いかけても口を使わないマダイの捕食スイッチは、カーブの中での変速だった。
船長はキャストしての変速巻きで、ポロポロとマダイを追加している。この等速巻きからの変速巻きで食わせるには、ライン角度、タングステンのウエイトや形状、ヘッドカラーもアジャストしないとアタッてこないシビアなゲーム。
「アジャストできた人にはボコボコアタるよ」と船長。コツを掴むとアタリがでる。これがまた、テクニカルで面白いの何の。
その後は潮が止まり、ピタリとアタリが止んでしまった。初夏の潮は午前中は小さく、動き出すのは下り潮に転流する11時以降だ。
船長に家島のタイラバの話を伺うと、「例年、産卵から回復する梅雨明けから晩秋までタイラバ釣りの最盛期を迎える」と言う。
80cmオーバーの実績もあり、「ぜひ、皆さんに風光明媚な家島のタイラバ釣りの醍醐味を体験してほしい」と語る。
11時過ぎ、潮が動き出したタイミングでシングルコブラカーリー(ブラック金ゼブラ)に付けかえ、筆者はサイズアップに成功。ゼブラの金箔が太陽光でキラキラ反射し、まるで光が点滅しているようにも見える。
12時ジャスト、常連の三輪篤史氏が、やはり黒金のネクタイで良型のマダイをゲット。初夏の強い日射しの中、シルエット系のカラーにアタリが集中した。
12時13分、姫路の山下浩和氏にマアジ。13時40分、筆者の右隣、大阪の崎原卓氏がマダイをゲット。続く13時42分に、山下浩和氏がマダイを釣り上げた。
風波が強くなった14時、「これを最後の流しにしよう」と言う船長のアナウンス直後、全員が連発する好潮時に突入した。
14時1分、筆者とミヨシの大阪の北山康純氏にマダイのダブルヒット。14時6分、三輪篤史氏と筆者のダブルヒット。ネクタイはやはり、ブラック金ゼブラだ。そして14時12分、北山氏がマダイを追加して、ストップフィッシング。
筆者は小ぶりながらも6尾釣り上げて、首尾よく竿頭。「終わりよければ全てよし」。全員笑顔のタイラバ釣行となった。
アフタースポーンの気難しい状況にも関わらず、三枝船長の潮読みとテクニックには学ぶことが多かった。これからも通い詰めたい遊漁船だ。
■ベイトタックル①
ロッド:エンゲツ リミテッドNーB610MLーS
リール:炎月プレミアム150PG
■ベイトタックル②
ロッド:エンゲツ リミテッドNーB610MーS
リール:オシアコンクエストCT200PG
ライン:PE タナトル8・0.6号
■スピニングタックル
ロッド:エンゲツ プレミアム S74L
リール:ヴァンキッシュC3000
リーダー:フロロカーボンリーダー2.5~3号
フック:喰わせ鈎/バーブレス 8、10、12、14号
アシストフック:喰わせ鈎/1本鈎仕様、鯛ラバPEアシストフック「佐々木流IPPON勝負」バーブレスM、L
タイラバヘッド:水深は20~40m前後と釣りやすく、ヘッドは45~60gがメイン。30、80gも一応準備しておこう
タイラバネクタイ:コブラカーリー、コブラカーリースリム、トラッドピンテール、シングルコブラカーリー(プロト)のレッドゼブラ、オレンジゼブラ、シャインオレンジ