長かった夏が過ぎたと思ったら、いきなり冬到来。しかも週末毎に海は大シケで、船長たちの溜息も聞こえてくる。こんな季節でもマダイを釣りたいと言う、そこのアナタに耳寄りな情報だ。
瀬戸内海で出船できないような強い季節風に、めっぽう強い漁場がある。太平洋に面した高知・須崎湾は四国山地が北西風を遮り、海は至って穏やか。しかも、黒潮の影響で水温は高く、魚の活性も高い。
マダイはもちろんのこと、最近では幻のシロアマダイの好漁場として脚光を浴び、美味しい高級根魚の宝庫としても有名だ。須崎は厳冬タイラバの、隠れた穴場なのである。
須崎は遠いと思われる方もいるだろうが、大阪から高速道路が須崎まで延伸しており、約4時間の行程は、さほど苦にならない。しかも、美味しいグルメや、港から12分の山間には、柔らかい湯質の千年の美湯「そうだ山温泉」があって、釣行疲れを癒してくれる。
私が須崎のタイラバ開拓に初めて通い出してから、かれこれ11年が過ぎた。須崎市は2023年11月9日に「世界一釣り人にやさしいまちを目指します」と、人気漫画にちなんで「釣りバカシティ」を宣言。
宣言式には主催した須崎市の楠瀬耕作市長、高知信用金庫の山崎久留美理事長、来賓として原作者のやまさき十三氏、11年に亘って須崎沖のタイラバ開拓に携わってきた関係で、筆者も招待いただいた。
そんな経緯もあり、須崎市は、とても思い入れの深い町。市会議員の松田健氏や南国生活技術研究所の黒笹慈幾氏、豊後彰彦氏とは10年来のタイラバ仲間だ。
彼らが須崎沖のタイラバ漁場を探っているうちに偶然、シロアマダイの棲み家を発見。漁師も狙っていない場所で、アマダイの仲間では最も美味しいとされる、幻のシロアマダイが釣れ盛る。
そんな幻の魚を求めて、須崎で11月30日~12月1日の2日間にわたって、シロアマダイをターゲットにした「アマラバ体験会」を開催した。
今回は地元のグルメを堪能する、という欲張りな企画もあって、募集開始と同時に両日とも満員御礼となった。
体験会には2日間で延べ13人が関西各地から参加。出船前には、早朝4時から開店している「おむすびショップたけざき」で全員が名物の玉子焼き&おむすびを購入。「これは美味い」と、乗船前に、おむすびを頬張る参加者も。
7時、須崎市観光漁業センター前の桟橋に集合、同センターに所属する「遊漁船オッカム号」に乗り込んだ。
一方、地元の松田健船長が操船するエンジョイクルー号には、南国生活技術研究所代表の黒笹慈幾氏、釣友の豊後彰彦氏も乗船。さらに、釣りバカシティをを推進する公募の「地域おこし協力隊」に任命された千葉県出身の松平愛奈さん、名古屋市出身のの三輪大司氏も参加し、2船体制で出港。関西チームと須崎チームの交流釣行会になった。
初日は強い冬型の気圧配置で、さすがの須崎でも強風が心配されたが、やはり四国山地が衝立となって、風は穏やか。漁場は約30分ほど南下した、水深50m前後の砂泥地からスタート。
アマダイは貝殻まじりの砂泥地を好む魚であり、自らが入る巣穴を掘って棲息する。巣穴は崩れない泥質であることから、タイラバが着底すると、ズボッとめり込むような感触の底質である。
巣穴から頭を出していて、エサとなるエビや小カニなどの甲殻類、小魚が近寄ると、巣穴から飛び出して捕食。
だから、バーチカルに狙う時は、ボトムを叩いて砂煙を上げるようにするのがコツだ。
やや早めに5mほど巻き上げたら、ステイさせるのも効果的。ドテラ流しで探る時は、ボトムをトレースするように、重めのヘッドをセットしよう。
土佐湾の潮流は、潮汐よりも黒潮の影響が大きい。黒潮が室戸岬にぶつかり、反転して足摺岬方向に流れる「下り潮」が、1番釣れる潮。だが、この日はあまり潮が流れず、決してよい潮とは言えない。
そんな潮でも、初参加の服部愛さんが釣り上げた良型のオオモンハタを皮切りに、ガンゾウヒラメやへダイなど、高級魚のラッシュ。北野一夫氏は、念願のシロアマダイを釣り上げてご満悦だ。
シングルコブラカーリーのレッド+オレンジの組み合わせで、仲みゆきさんも良型のガンゾウヒラメ。参加者の中で最年少の山下一平氏も、小ぶりながらも本命のシロアマダイをキャッチ。
マダイや良型のレンコダイも飽きない程度にヒットして、参加者全員が多彩な土佐湾の魚種の引きを堪能した。
下船後は、隠れた名店「岡田おかず店」に立ち寄り、ビールのアテに「ごぼうの天ぷら」を購入し、名湯「そうだ山温泉 和」で疲れを癒す。緑豊かな山懐に抱かれた露天風呂が、私の大のお気に入りである。
須崎の釣り仲間との交流会は、松田さんオススメの「食事処 喜楽」。釣りたてのシロアマダイの薄造りは、コリコリした歯応えと甘さが絶妙で、「釣り上げた日にしか薄造りにできない」と言う。
釣魚に舌鼓を打ちながら、皿鉢料理や高知の美酒を堪能した。
2日目は、第1投目からシロアマダイが連発した。8時ジャストに仲みゆきさんが58cmの大型。8時45分に、本紙でもお馴染みの十川敬夫氏に良型。ヒットネクタイはシングルコブラカーリー(オレンジ)とトラッドピンテール(ゴールドゼブラ)のコンビであった。
8時54分には筆者に54cmと、シロアマダイのラッシュ。この日は潮があまり動かず、薄めのネクタイをセットした方が好釣果だった。
9時5分には、小仁鏡智氏に大型のイトヨリ、10時15分には十川氏が2尾目のシロアマダイをゲットし、大物賞の生ズワイガニ(1万7千円相当)は魚奏の辻野社長から手渡された。お世話になった松田氏には、記念品としてハピソンの計測マルチが贈呈された。
厳冬期こそ、シロアマダイのパラダイス・須崎へ。フィッシングショーOSAKA2025には、地方創生ブースに須崎市も出展し、地域おこし協力隊の松平愛奈さん、三輪大司氏もお見えになる。ぜひ、お越しください。
それでは皆さま、よいお年をお迎えください。