「鯖(サバ)街道って知らんか!?」
そう言われたのは、先輩編集部員と一緒に福井県小浜市を走っている時のことでした。
「いや知りません」と答えた不勉強な記者でしたが、その後気になって調べてみたのでした(エライ!)
名産の多い豊かな海「若狭湾」
福井県の北部西端「越前岬」から京都府北端の「経ヶ岬」を結ぶ内側海域を若狭湾と呼び、日本海側では珍しいリアス式海岸が見られる。沖では寒流と暖流がぶつかり、豊富な栄養を含んだ海流は若狭湾に流れ込んできます。
若狭湾内にある「小浜湾」も同じく豊かな海。そこにある小浜漁港は歴史も古く、豊かな海からは名産と呼べる多くの魚も水揚げされています。
若狭グジ(グジとはアマダイのこと)、若狭カレイ、若狭フグなど、聞いたことのある名前も多いかと思います。
そんな豊富な魚を、時の朝廷があった京都まで運ぶのに活用されたのが「鯖街道」です。主には魚介類を運び、そのルートはいくつかあったようです。とにもかくにも小浜若狭から京都への物流ルートが「鯖街道」というわけです。
18世紀後半になると、多くのサバが水揚げされるようになり、運ばれる魚介類の中でもサバが多くなっていたことから、後年になって「鯖街道」と呼ばれるようになりました。
小浜から京都の出町柳(現在の出町商店付近)に至る鯖街道。小浜で揚がったサバを塩で締めて商人が運び、京都・出町柳に着く頃には丁度よい塩梅だったのだとか。
若狭国といえば「御食国(みつけくに)」の一つです。御食国とは朝廷で食べる食材を納める国のことで、淡路・伊勢・志摩もそうであります。若狭国から、多くの美味な魚介類、寿司などが運ばれていた記録が残るそうです。
サバの水揚げは減少。「鯖街道」の名に恥じぬ復活を目指す
そんな鯖街道の起点である小浜市のある福井県。しかし、県内では昭和49年のピーク時に1万2607トンあったマサバの水揚げが、平成26年には県内で31トン、小浜市漁協管内で1トンにまで減少したそうです。
そんな中にあって、平成27年4月、文化庁が定める「日本遺産」第1号に鯖街道が認定されました。これを契機に、小浜市ではもう一度サバを復活させようと「鯖復活プロジェクト」を展開しています。
生(刺し身)でも食べられるサバの養殖を始め、ブランド化に力を入れています。小浜湾に設置された生簀(イケス)に稚魚を放流、エサや管理状態を工夫し、身が高品質で脂が乗り、天敵である寄生虫(アニサキス)の発生を抑えることができるといいます。
「鯖街道よっぱらいサバ」爆誕
そんな小浜市ですが、鯖復活プロジェクトの協力な相棒ができたようです。
サバ料理専門店「鯖や(本社:大阪豊中市)」が小浜市と連携提携を結んだのです。
「鯖や」はサバ寿司、加工品の販売や飲食店の運営を行っている会社です。
もしかしたらトロサバ専門店「SABAR(サバー)」の名で知っている人も多いかもしれません。そのSABARを運営している会社です。
鯖やでは、小浜産のサバほか食材の積極採用をする方針を打ち出しました。また「鯖街道よっぱらいサバ」というブランドで、サバを提供していくと言います。これは養殖鯖のエサに酒粕を使ってブランディングし、消費者に取って付加価値の高いサバを目指すといいます。
同時にクラウドファンディングを募り、「SABAR鯖街道よっぱらいサバブロジェクト」というファンド名で3月8日から募集を開始。最終目標金額は「いいサバ」に掛けて1億1380万円。半額が集まった時点で事業を開始する予定です(一口25,000円)。
漁師体験の提供など、地元を盛り上げる活動をする釣り船も

かどや丸・角野正典船長
閑話休題。そんな小浜湾にはたくさんの釣り船があります。特にケンサキイカ(マイカ)はハマると凄まじい釣れっぷり。イカメタルで胴突き仕掛けで、昨シーズンは「爆乗り体験」をした読者の方も多いのでは?
そんな小浜湾の釣り船の一つ「かどや丸」は、釣り船での営業はもちろん、地元小浜を見直す、盛り上げる活動をしています。
伝統的な料理法である「へしこ」や小浜湾産ワカメの販売、子どもたちに向けての漁師体験の提供などなど。ちなみに「へしこ」はサバを塩漬けにしたものをさらに麹漬けにしたもの。国内産のサバに無農薬の米ヌカを使ったへしこは好評。
体験では「うまし漁村の会」というプロジェクト名で、ワカメの種付けや刈り取り、タコ籠漁体験など、季節ごとに多くの体験事業を提供しています。
釣りでは今年もケンサキイカのフィーバーに期待しながら、そんな地元の地道な活動にも目を向けると、心もなんだかホッコリするかもしれませんね。