進化し続ける「タイラバ」事情について
近年のタイラバの進化を考える上で、まず、触れなくてはならないのは、タイラバ釣りを生業とする遊漁船の船長たち。
マダイの生態を研究し、船長仲間で情報を共有しあい、タイラバでマダイを体系的に攻略するパターンや、組み立てが完成されてきたと感じることだ。
釣り人の「やれ、大潮がよい」とか、「中潮の方が攻める時間帯が長いからよい」とか、「小潮は釣れない」と言う勝手な思い込みとは関係なく、どんな潮でも、その潮流に応じたポイントに船を付けて、釣果を叩き出すようになってきた。
見事な潮読み、組み立てである。
潮と風向きによってはドテラで船を流したり、船を立てたりと、操船技術も素晴らしく、世界でも日本ほど、釣り船の操船技術が巧みな国はない。
お陰さまで「佐々木洋三と行くハマるっ!鯛ラバ体験会」では金龍鉤、シマノ、ハピソン、イチバンエイトグループ各社様にご協力をいただいて、これまで22回の実釣会を満員御礼で重ねることができた。
それも、こうした凄腕船長たちの経験と努力によって支えられてきた部分が大きい。
今日のタイラバブームを巻き起こした、鳴門の釣り船 つるぎでの体験会を通して、この進化の流れを整理してみたい。
この日、潮周りは中潮。堂ノ浦の潮汐は朝4時20分に満潮から下げ始め、11時36分に干潮。
そして、上り潮にかわるとともにストップフィッシング、という潮時だ。
船長は鳴門海峡大橋の北側の漁場に船を向け、下げ始めの潮を迎えに行った。
船長の読み通り、潮が動き出すと、ヒットが連発。
6時56分、まず左舷トモから2番目の呉宮興隆氏にヒット。
続く7時11分、右舷ミヨシに陣取った親谷誠司氏に良型のマダイ。
7時19分には増田大樹氏、シャインオレンジのささラボのコブラスリムカーリーが奏功した。
7時39分、体験会初参加の北野一夫氏もコブラスリムカーリーのオレンジゼブラで良型をゲットした。
圧巻だったのは7時45分。10人乗船中、5人が同時ヒットという快挙。
潮がよく、船長の判断が冴え、私のネクタイセレクトがベストマッチ、という3拍子がうまく揃ってのことであった。
この日は曇天で、下り潮は、やや濁り気味。
シャインオレンジカラーや、オレンジゼブラにヒットが集中した。
それもラバーは一切付けないというセッティングである。
ネクタイにフサフサのラバーをセットした従来型のタイラバから、ネクタイだけのシンプルな形状に、いつの間にか変化を遂げた。
店頭に並ぶタイラバは見栄え上、ボリュームのあるセッティングの方が釣り人の目を惹く。
しかし、最近はラバーは全くなしのネクタイだけという、一見貧相なタイラバが中心である。
併せて、太身ネクタイから、スリムなネクタイへという変化も見逃せない。
「虫エサを捕食している時は細身がよい」とも言われるが、私は形状が虫に似ていると言うよりは、ネクタイの発する波動の違いではないかと考えている。
形状ばかりではない。カラーも大切で、この日は濁り潮でアピールする鮮やかなオレンジ系のカラーや、グロー粉を練り込んだものがよかった。

コブラスリムカーリー オレンジゼブラがよくアタッた1日だった
澄み潮の日にはシルエットのハッキリした赤や黒をチョイスする、というのも、今では常識となった。
さらに、黒いゼブラ模様が入ったオレンジゼブラやレッドゼブラ、金ラメが入ったものなど、シリコンネクタイにさまざまなプリントが施されるように進化した。
また、アワビ粉を吹き付けたネクタイも登場し、その多彩な展開はマダイにとっても大いなる脅威であろう。
シリコンばかりではない。ワームの素材に集魚材を練り込んだ、さまざまな形状のネクタイも店頭に並んでいる。
ちなみに、私が釣り上げた92cmの大ダイも、集魚系の炎月ネクタイであった。
9時18分、ラッシュが続く船上でタモ入れに忙しかった、仲みゆきさんも、合間に竿を出して、サクッと良型のマダイを釣り上げた。
やはり、コブラカーリーのシャインオレンジに金龍鉤のタイラバ専用の「喰わせ鈎(バーブレス)」のシングルフックである。
これまでも述べてきたが、体験会でのデータでは、フックは小型でシングルの方がネクタイがよくなびき、明らかにアタリが多いのである。
バーブレスは針外しも容易で、手返しも早い。
このように、フックは大型から小型へ、さらにシングルやバーブレスへと一段とフィネスな釣り方にかわりつつある。
玄界灘では、針は大型、フサフサのラバーをセットするのが定番であった。
先日、福岡の遊漁船マリブエクスプローラーに乗船した時のこと。
船長の龍野和浩氏に伺うと、「玄界灘でも瀬戸内海と同じ方式になってきてますよ。激戦区で磨かれたセッティングは玄界灘でもマダイがよくアタってくるんですよ」と仰っていた。
かれこれ10年以上前のことだが、玄界灘にタイラバタックルを持ち込み、「そんな柔な竿や針で玄界灘のマダイをナメているのか」と船頭に叱られた頃が懐かしい。

10時11分、玉垣元庸さんが釣り上げた良型のマダイ
10時12分、雲の合間から陽が射してくると、レッドゼブラのトラッド・ピンテールとコブラカーリーオレンジのコンビをセットした小川一幸氏にヒット。
「早替えアシスト」は楽々簡単にネクタイが交換できる「チェンジストッパー」を採用し、ネクタイローテーションが素早く行えるのが特徴である。
フックに刺すトレーラーワームなど、タイラバを構成するパーツは多彩多様に広がり、タックルケースに収納するパーツは、増殖する一方だ。
その選択肢の多さは、アングラーに迷いを生じさせる一因にも。
ビギナーズラックで釣れた時には考えもしなかったことだが、タイラバ釣りを知り、ユーチューブであれこれ学んで知識が増えると、ドツボにハマるのが「タイラバあるある」だ。
9時47分、弥谷和也氏が大型のタコベイトをセットして、マダイを仕留めた。これも常識を覆す攻略法である。
そして、9時57分、2回目の5人同時ヒットとなった。

前列は仲みゆきさん、後列左から北野一夫氏、小川一幸氏、八木章人氏、松内満氏、玉垣元庸氏
11時9分、この日の最大の60cm超のマダイを松内満氏が仕留めた。
コブラカーリーのオレンジゼブラに早替えアシストで、頻繁にネクタイを交換し、当たりカラーを探り出すという努力が功を奏。
そして、潮が止まるとアタリは遠退いた。
最後にヘッドにも触れておこう。
ヘッドの下部にネクタイをセットする方式から、ヘッドの上部にネクタイをセットするジャッカルの「ビンビンスイッチ」の登場で、ヘッドの形状は自由度を高めることとなった。
今後、どんな形状に進化していくのか、ヘッドの進化にも目を離せない。
さらに、信じられないようなネクタイが台頭しつつある。次回で紹介する予定だ。