船テンヤタチウオ上級者へのステップアップ、名手の爆釣メソッド!! 菊池雄一【深追い掛け釣法】

タチウオ特集

菊池 雄一(きくち ゆういち) プロフィール

「きくりん」の愛称で親しまれ、船タチウオテンヤ、落とし込み、ノマセ釣り、イカ(イカメタル・オモリグ)、タコなど、春夏秋冬の旬の釣りを楽しむ、マルチアングラー。ホームエリアは関西ながら、関東在住の環境を活かし、積極的に開拓中。大阪湾タチウオKINGバトル2016準優勝、タチウオKINGバトルチャンピオンシップ3位。ダイワスタッフ

船のテンヤタチウオ釣りは、タックルの進化とともに、その釣り方も旧来とは一変し、全国各地でいろいろな釣法が生まれています。

そして、それがエリアに合った釣り方なら、コンスタントに好釣果を上げることができるのも当然です。

そこで気になるのが、よく釣る人、いわば「名手」と呼ばれる人たちの釣り方。

偶然、同船しても釣座が隣同士にならない限りは、なかなかじっくりと観察できないですよね。

ここでは普段、見ることができないテンヤタチウオの名手の釣りを、タックルから釣り方までを紹介します。

今回は【深追い掛け釣法】の名手、「きくりん」こと、ダイワスタッフの菊池雄一氏の釣りにスポットを当てました。

菊池氏は、先日に行われた大阪湾タチウオKINGバトルの歴代上位入賞者たちが集うメモリアルイベント「タチウオKINGバトルチャンピオンシップ」において、後半怒涛の追い上げを見せ、見事3位入賞を果たしました。

▲3位入賞した菊池氏、写真左

それらのワザを含めて、菊池氏の釣りを大公開します。

 

深追い掛け釣法とは?

菊池氏のテンヤタチウオの代名詞的釣法ともなっている「深追い掛け釣法」。

テンヤにアタックするタチウオのアタリの質を、掛けやすいモノへと変えていく釣り方で、アタリを感じれば、すぐにハンドルを巻いてタチウオを上へ上へと追わせる釣り。

補足するように菊池氏は言います。「“深追い掛け”とは言っても、必ずしも距離を追わせる訳ではない。あくまでも目的は、『タチウオにしっかりとエサをくわえさせて、掛けやすいアタリをだしていくこと』。だから、突くようなアタリが続くだけなら5m、10mと追わせることもあるが、グッとくわえるようなアタリがでれば、50cmほど追わせただけでも掛けにいく」と。

深追い掛け釣法のメリット

そもそも菊池氏がこの釣り方を極めていったのも、自分の仕かけにアタってきた魚はしっかりとフッキングさせて、巻き上げ途中にもバラさずに確実に1尾1尾を取り込んでいくため。

だから、深く追わせるのが前提ではなく、バラさないようにしっかりとタチウオの頬付近にフッキングさせるのが前提です。なので、菊池氏は、上がってきたタチウオのどこにフックが掛かっているかを気にします。

バラしにくい、理想はタチウオの頬掛かり

菊池氏の深追い掛け釣法で、理想と言える掛かり方は、上の写真のような頬掛かり。

タチウオは合わせてもなかなか掛からなかったり、巻き上げ途中や抜き上げ時にバラシも多い魚。

普通の魚なら、針は口に掛けるのが一般的ですが、タチウオは掛かれば急浮上や引き込みを繰り返すファイトをみせる魚。口掛かりよりも、頬掛かりの方が取り込める率は高くなります。

実際、実釣当日も菊池氏はフッキングさせてからの、やり取りから取り込みまでの間のバラシはゼロ。

入れ食いの時間帯も、食い渋る時間帯も1尾、1尾丁寧に確実に取り込んでいました。

サイズが比較的安定する

タチウオは、群れによって、あるいはポイントによって釣れるサイズにバラつきがありますが、ドラゴンや良型を釣る確率を上げることは可能と言われています。

それは釣り方。

狙うタナであったり、誘いの種類であったり、一概には言えませんが、一般的にはタナは群れの芯を外す、底周辺を狙う、であったり、誘いは激しいジャーク系よりもソフトでスローなモノ、あるいは高速巻き、などと小、中型にアピールするアクションとは、少し異なるタナや誘いにヒットしやすいと言われています。

菊池氏はあくまで想像の範囲と断った上で、「追わせることにより、エサを突いたタチウオだけでなく、周りの個体の活性も上げて、より大きな個体にアタックさせている時もあると思う」と言います。

これは、実釣日に菊池氏が釣り上げたタチウオのサイズを見れば、周りで釣れていたタチウオよりも平均的にサイズがよかったことからも、その考察はある意味、的を射てると思われます。

菊池氏の釣り方&深追い掛け釣法のやり方

では、菊池氏の釣り方と、深追い掛け釣法とは、どうやるのか、これらを紹介していきます。

初アタリがでるまでは、ジャーク&ステイでタナをサーチ

まずは狙いのタナまで仕かけを下ろし、そこから誘いの開始です。

菊池氏の釣り開始時の誘いは、ジャーク&ステイ。2、3度小さく竿をシャクりながらハンドルを1~2回巻き、ステイを5秒前後入れながら、まずはアタリがでるタナをテンポよく探っていきます。

東京湾などに比べると、大阪湾は狙うポイントの水深は比較的深めの所が多く、タナの幅も広いことが多いので、釣果を伸ばすためには、タナを探り当てることが重要です。この日、菊池氏は朝イチに水深110mほどのポイントで45mぐらいまで誘い上げて、アタリのでるタナを探っていました。

菊池氏いわく「洲本沖のような水深100mを超えるような深場では、当たりダナは1つではなく、2つ、3つと存在していると思います。数を釣ると言う意味では、手返しの観点から少しでも浅いタナで活性のよいタチウオを釣っていった方が有利。だから、競技会などで数釣りを狙う時は少しでも浅いタナで食いの芯を見付けるようにしています」。

初アタリがでれば…

初アタリがでてからが、深追い掛け釣法の開始。

しっかりと食い込むアタリや、大きく穂先を跳ね上げる食い上げアタリは別として、菊池氏は大抵は初アタリでは合わせません。

それは、先ほどからも述べているように、「確実にフッキングさせて取り込みたい」から。

では、アタリがあれば、どうするのか。

間髪入れずに、リールを巻きます。

この間髪入れずに、が大事です。

タチウオがエサにアタックしてきた直後に、エサを逃がしてやるイメージ。

これによって、タチウオのエサを追う気を増幅させていく訳です。

そのリールの巻き幅は、タチウオの活性次第。

初アタリでは1回転させたハンドルですが、次から次へとコン、コンと穂先を突き上げるアタリの連続に、その巻き幅、速度は徐々に増し、最後はハンドル3回ほどを高速巻きにしたところで、大きく竿先が引き込まれました。

ここで、グッと肘を引くような力強いアワセ。

針掛かりすれば、あとは竿を水平より上目に構えて急な引き込みに対処。ドラゴンを思わせるような大型や良型の引きには、得意の膝を使って竿で溜めます。

ハンドルの巻き上げ幅

菊池氏の深追いはアタリがある度に、リールのハンドルを巻いていく訳ですが、この巻き幅は先ほども記した通り、タチウオの活性次第。

ファーストバイトではハンドル1回転の巻き上げでしたが、活性が高く、次から次へとアタリが続く時は、竿先が引き込まれるまで、あるいは穂先を浮かせて止まるまで、ドンドン巻き上げて誘い上げていきます。その上げ幅は、ハンドル2、3回転に及ぶ時もあります。

逆に、活性が低い時には、この巻き幅が狭まります。ハンドル1/2回転、あるいは1/3など少しの移動距離のこともあります。

この判断はアタリ次第。巻き上げてステイを入れた時、次のアタリが弱かったり、間遠いならば仕かけの移動距離を少なく、反面、アタリが力強かったり、連続する時はその距離を長めに取って、タチウオの捕食スイッチを入れていきます。

始めは小さくアワセどころのなかったアタリも、このアタった直後の誘い上げによって、徐々にしっかりと力強いモノへと変わっていくのが分かり、掛けやすいアタリがでます。

合わせるタイミングは、しっかりと穂先を持ち上げた時や、モタれるようにテンヤの重みにタチウオの重みが加わった時、さらにはグッと引き込んだ時など。どれも一瞬の突いただけのアタリとは違い、掛かるだろうな、と思えるしっかりしたアタリです。

タチウオがエサをしっかりくわえる、この瞬間に導くのが「深追い掛け釣法」の神髄なのです。

タックル&仕かけ

当日の菊池氏のタックルは、ダイワの「極鋭タチウオテンヤSP91H-165AGS」と「シーボーグ200J」。

ロッド

アタリを認識した瞬間に、即ハンドルを巻いてタチウオの活性を高めていく釣りが基本なので、アタリを判別できる穂先の感度は至上ポイント。

SMT(スーパーメタルトップ)&AGS(エアガイドシステム)を装備した超高感度穂先の「極鋭タチウオ」シリーズは、菊池氏の釣りにベストマッチするロッドです。

この日は深場の洲本沖を中心に狙ったため、数あるシリーズの中でも、深場でもしっかりとテンヤに動きを伝えることができ、また微妙なアタリもより判別しやすい「極鋭タチウオテンヤSP91H-165AGS」を使用しましたが、穂先から穂持ちへかけてのしなやかさが特長の「極鋭タチウオテンヤSP82S-185AGS」も深追い掛け釣法には適したロッドで、菊池氏も愛用するロッドの1本です。

リール

電動リールは、スモールモンスターと呼ばれる軽量でコンパクトな「シーボーグ200J」。

センターに配置されたアルミJOGパワーレバーで、巻き上げ操作やクラッチのオンオフはワンハンド。大きくて見やすくなったセンターパネルはもちろん、前モデルよりもさらに軽量化されており、釣りの快適性は最高レベル。

PE2号を300m巻けるラインキャパで、深場攻略にも安心のスペックで、テンヤタチウオには最適なアイテムです。

テンヤ

ダイワからは、「快適船タチウオテンヤ」シリーズが発売されていますが、この日使用したのは新製品となる「快適船タチウオテンヤSS AG」。

フォールスピードとレスポンスのよさが抜群のタチウオテンヤです。

大阪湾・洲本沖のような深場では、仕かけを早くタナまで沈めることで手返しがよくなり、釣果を上げるコツのひとつ。そんな時、素早くタナまで一直線にフォールしてくれるテンヤは重宝します。ベテランの中には、では同じ快適船タチウオテンヤシリーズのTG(快適船タチウオテンヤSS 40TG)を使用すればイイ、と思う人もいるかもしれません。そう、その選択肢は正しいモノです。

ですが、昨年の大阪湾エリアはサバフグが湧いたシーズンで、ラインを途中でカットされてテンヤを失うシーンが多々ありました。この日もポイントによってはサバフグの姿もチラホラと見え、同船者の中には複数個テンヤをロストした方も。

そんな時、菊池氏は「この快適船タチウオテンヤAGはフォールスピードにコダワったテンヤ。TGと並ぶまではいかないけど、従来のテンヤに比べれば圧倒的にフォールは速い。TGに比べて価格も安いので、サバフグの被害がある時は、このテンヤがコスパも抜群」と言います。

カラーは3色がラインナップされていますが、この日の菊池氏のメインカラーは大阪湾の定番、グローが強烈な「ルミノーバグリーングロー」。

ほかのカラーでも十分に釣れていましたが、当日はこのカラーで終始アタリが続いていました。

開発スタッフの菊池氏に、「中でもの、お気に入りカラーは?」と聞けば、「明滅ルミノーバブルーグロー」だとか。

こちらは「ブルー夜光が入っているので、グローとはまた違ったアピールができる」のが、その理由だそうです。

大阪湾では、この時期に多い濁り潮に効くグローですが、ブルーグローも効果的なカラーになるかもしれませんね。

エサ

菊池氏のエサは、イワシとサンマ。これらを状況に応じて使い分けています。基本的には朝イチや活性の低い時はイワシ、高活性時で数釣りを狙う時はサンマを使用します。

イワシ

イワシは、頭のクチバシの部分を落として(イワシが大きいと頭全体を落とすことも)、テンヤの端にピッタリと合うようにセットして巻きます。

この付け方だと、イワシがテンヤと一体化してしっかりと固定されやすいので、タチウオのバイトがあってもエサがズレにくくなります。

また、活性が低い時はイワシの腹を割いて、テンヤの軸を隠すように包み込むと、違和感を与えにくいとのこと。同じイワシエサでも、活性に合わせて付け方を変えていきます。

サンマ

菊池氏のサンマは、特製のオリジナルサンマ。

元々油分の多いサンマですが、このエサは、それがよりパワーアップしたように見えます。

と言うのも、このサンマは菊池氏特製のレシピで作られているんです。

そのレシピと言うのがこちら↓

ベースになるのが、ダイワの「アミノソルト激〆タチウオ」。

そして、それに追加するのが、味の素、顆粒のアゴだし、昆布だし、カツオだし

これらを混ぜたものを1枚ずつ丁寧に裏表に塗っていき、タッパにサンドイッチ状態にして寝かせる。

すると、液体を入れてないのに、サンマの水分が出て、ほどよく締まる。

これが硬すぎずに絶妙な加減で身が締まり、サンマの旨味成分もしっかり残ると言います。

状況に応じたテクニック

朝イチは底を取らない

菊池氏の釣りの展開は、大阪湾の洲本沖などの深場の場合、朝イチは底を取りません。

タナは上から狙っていくそうで、アタリがなければ徐々に誘い始めのタナを下げていきます。最初の目安は水深の2/3より上辺り。水深100mなら、まず1投目は75~55mを狙って、ジャーク&ステイ(1ストローク1~1.5m)で2、3度仕かけをタナに通します。これでアタリがなければ、次は10m下げて85~65mをと言う具合に、10mずつ狙うタナを深くしていきます。

そこでアタれば、次は初アタリの5m下から誘い上げる展開にしていくそうです。

フォールの釣り

基本的には、菊池氏はジャーク&ステイがメインの誘い上げの釣りですが、状況によってはフォールの釣りも展開します。誘い上げで反応がない場合は、誘い下げていく訳です。

例えば、アタっても次のアタリに繋がらずに追いがない。

そんな時は、そのタナの周辺で誘い下げます。

やり方としては、竿先を上に構えた位置から、ゆっくりとテンションフォール。

テンヤの重みを感じながら、極ゆっくりと竿先を下ろしていきます。

竿先を下の位置まで下ろせば、リールのクラッチを切って竿先を再び上に戻し、同じようにテンションフォールで誘い下げていきます。

で、この時にアタッたらどうするのか。

余程しっかりとくわえたアタリでない限りは、深追い掛け釣法で確実に食わせるそうです。つまり、アタればハンドルを巻くんです。

カーブフォールも有効

フォールの釣りは、菊池氏が言うにはかなり有効な釣りで、上記のようなフォールの仕方もあれば、アンダーでキャストしてカーブフォールさせるのが効果的なこともあるとのこと。

先日行われた、大阪湾タチウオKINGバトルの上位入賞者だけが集った大会(タチウオKINGバトルチャンピオンシップ)で、3位に入賞した要因の一つが、後半にこのカーブフォールで爆ったこと。

仕かけをフォール中に、偶然食い上げたのが狙っていたよりも浅いタナで、菊池氏は「タチウオはもっと上にも浮いている」と直感し、そのタナに合わせてクラッチを入れてラインの出を止め、カーブフォールをさせていると、大きく持ち上げるアタリが連発。それを全てモノにしていったそうです。

基本は、ジャーク&ステイやストップ&ゴーなどでの誘い上げの釣りながらも、「何事も答え合わせができるまでは、決め付けはしない」と言う菊池氏の柔軟な考え方が、カーブフォールの釣りで爆釣、という結果に結び付いたんですね。

 

各個人には自分に合った釣りスタイルがあると思いますが、名手の釣り方を参考にするのもステップアップへの近道。

自分に合う部分だけを取り入れて、自己流に進化させていくのもアリですね。

ダイワ(DAIWA)

1958年の創業、リール、ロッド、ルアー、用品などあらゆる釣り物のフィッシングタックルを扱う総合ブランドとして、国内、海外に多くのファンを抱えている。ジャパンクオリティの品質の高いアイテムを日々開発、その過程で、世界初となるテクノロジーも数多く輩出している!

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