若狭湾に面した丹後地方では、秋によく獲れるアオリイカの新子を「秋イカ」と呼ぶ。
スルメに加工されたりもするが、大きさで言えば、400、500gの手頃なサイズが手に入った時は、迷わずイカ素麺にすること。
アオリイカの繊細な味を楽しみたいなら、いきなり醤油をぶっかけて…という、無粋な行為は慎みたい。タレは素麺つゆに限る。
ほどよい大きさに刻んだイカの身が、馴染む程度に素麺つゆを注ぎ、我が家では、この日ために冷凍保存しているスダチを絞っていただく。
こうすれば、歯にまとわりつくような、むっちりした食感と、噛みしめる度に増してくる身の甘さが、たっぷり満喫できるはずだ。
カセでエギング&ヤエン釣りを満喫!
さて、アオリイカの新子釣りが楽しめるのは、磯場が多い紀伊半島も同じで、若狭地方よりも水温が高い紀伊半島の方が、年がかわってもアオリイカが楽しめる釣り場が多い。
そんなことを、つらつらと考えながら、今回の旬魚はアオリイカがよいかな、食べたいな、と釣場速報のページを繰っていて見付けたのが、和歌山県由良町三尾川の「りき丸」だ。
速報欄に「今はアオリイカの好期。カセでエギングが楽しめる」とあるので、早速、電話を入れてみた。
2、3人乗りのカセ船を港から曳航して、ポイントに付けてもらえるので、エギングだけでなく、ヤエン釣りやウキ釣りなどの好きな釣り方でアオリ釣りができる。
シーズンになれば、青物やチヌなど五目釣りが楽しめるのも、気に入った。
今回のゲストは、シマノのフィールドテスターの吉田昇平氏。
吉田昇平(よしだしょうへい) プロフィール
「和歌山・由良町でアオリイカのヤエン釣りなどいかが」と水を向けたら、「やったことがない釣りなので、ぜひに」との返事に快諾した。
6時半、川端船長が操船する親船に引かれて港を抜けた。
取り舵を切って進むこと10分、もうポイントに到着だ。正面には分譲の別荘が並んでいる。
潮と風の方向をにらみながら、船長は2丁イカリでカセ船を固定してくれた。水深を聞くと、6mほどだと言う。
ヤエン釣りの用意ができるまで、大好きなエギングを始めた吉田氏は、早速 1パイ目をヒットさせた。
見ると、300gほどの新子が、オレンジ色のエギを抱いて上がってきた。
幸先よし、これは楽しい釣りができそうだなと、そんな予感がしたのだが、果たして…。
目の前に張り出した地磯と平行に船を掛けてあるので、尻尾を縛った小アジのエサを地磯に向かって投げる。
エサはやや小ぶりだが元気でよく泳ぐ。と言うのも、川端船長の本業は定置網の漁師で、定置に入った小アジをエサにしてくれるから、元気がよいのだ。
置き竿にして待つこと10分。それまで微動だにしなかった竿先が、激しく揺れだした。泳がせている小アジのエサに、イカが乗った合図だ。
ヤエン釣りの名人は、「イカが乗ったら煙草を1本吸い終えるまで待ってから、ヤエンを入れろ」、と言う。
でも、今日のエサはやや小ぶりだからと、少し早めにヤエンを入れてやり取りしてみたのだが、やはりヤエンの投入が早かったのか、掛かっていなかった。
何しろ10数年ぶりのヤエン釣りなので、手際が悪い。
それから3連発でイカが乗ったのに、1パイも釣り上げることができず、ようやく4度目のアタリで500gほどのアオリイカをゲット。
これは吉田氏も同じで、1パイ釣り上げるまでに、3バイはバラしてしまっていた。
こんな状態で悪戦苦闘が続いたが、ようやくヤエンを入れるタイミングも分かりだして、午後からの時合に期待した。
しかし、運が悪いことに北風が吹き始めてカセが揺れ、釣りどころではなくなったので。昼前に早上がりした。
このポイントは、アタリの多さから見ても、アオリイカの楽園のようだ。
春には「種イカ」と呼ばれる1kg以上の大型も釣れると聞いたので、春のシーズンにもう1度、挑戦してみたい。そんな、魅力溢れる場所だった。
当日のタックル
シマノ「アオリスタ」は、手感度と目感度の両方を追求した、ヤエン専用モデル。
感度のよい穂先がイカに追われて逃げ惑う小アジの動きを、余すことなく再現してくれるし、イカを乗せせてからのやり取りも、竿の柔軟さで違和感を与えない設計。
これにヤエン釣り専用スピニングリール「アオリスタCi4」を組み合わせれば、最強のコンビだ。