チヌを狙って飼い付け釣りに出発!
毎年、師走になると御坊市の関電沖で始まるのが、チヌをターゲットにした飼い付け釣りだ。
そもそも、飼い付け釣りとは、いかなる釣りかと聞かれることが多いが、端的に言えば、すごくシンプルで、かつ合理的な釣りである。
水温が下がるにつれ、沖の深場へと落ちてきたチヌを、エサを撒いて魚礁の周りに集め、一網打尽とまではいかないが、よく飼いならしてから釣り上げようと言う、合理的な釣りなのである。
そのために船長は、お客さんがあってもなくても、嵐の時以外は沖へ出て、エサを撒き続けるのである。
マキエはオキアミを主体にしたものだから、マキエに寄ってくるのはチヌだけではない。
狙うタナを底近くに絞れば、イシダイやサンバソウ、ヘダイなどが食うし、タナを上げればマダイやチダイ、イサギなどが手荒い歓迎をしてくれる。
このように、釣れる魚がバラエティーに富んでいるのも、飼い付け釣りの魅力の1つなのだ。
今回は、師走も半ばに入ったことだし、すでに飼い付けが始まっているだろうと読んで、シマノのフィールドテスター立野義昭氏をお誘いして、美浜町の山見丸へ出掛けてみた。
ところが、現地へ着いて僕の読みが大外れだと判明した。
船長いわく、「まだ水温が20度もあるから、飼い付け釣りやるには、ちょっと早いかなぁ。もうちょっと冷やっこい潮が来たら始めようかと思案しとるんよ。ただ、飼い付けやっとる場所で親父がアミエビ撒いてイサギ釣りやっとるから、魚は寄ってると思うけどな。それとな、水温が高いせいか、まだアジが食いよるんよ。そやから、夜明けまでアジ釣って土産こさえてから、沖の魚礁へ走ろか」という展開になった。
アジが釣れるのは、日高川河口から10分ほど走った場所なので、あっと言う間に到着。アンカリングが終わって船が固定できたら、釣りのスタートだ。
上カゴ式のサビキ仕かけにアミエビのマキエを詰め、仕かけを下ろすと、途中で仕かけが止まって底まで下りない。マキエに狂ったアジが、落下する仕かけに飛び付いてくるからだ。
30cmほどのアジが多いが、それよりも大きなアジがダブルで食うと、口切れでバラすことが多いので、一向に数が増えない。
そして、「夜が明けたら食いが止まる」と言っていた船長の予言通り、周りが明るくなると、ピタリとアタリが止まってしまった。
アジオンリーで5尾の釣果だったが、型がよかったので十分お土産になった。
この後、沖へ向けて走ること約30分、ようやく飼い付け場に到着だ。
仕かけは飼い付け釣りと同じで、3号ハリスを4ヒロ取り、途中でエダ針を1本出して、まだ多いかもしれないエサ取りに備えた。
水深は40m余りか、天ビンが底へ着いた所から5m巻き上げて、アタリを待った。
竿をアオってエサを撒き、ゆっくり誘い上げてやると、すぐに返事が返ってきた。
いきなり竿先が舞い込んだので、慌てて竿を手にしたが、小気味よい引きに思わず鼻歌が出た。
最初は節を付けて引くので小型のマダイかと思ったのだが、35cm近くあるイサギだった。
潮は緩い上りだが、かろうじて動いている程度。それでも潮が動いている間は、アタリが続いた。
僕の仕かけに食ってくるのは大半がイサギだが、すぐ横で釣っている立野氏はチダイばかりを釣っている。2人は同じ仕かけなので、釣っているタナの違いなんだろうな。
そう思ってタナをかえてみるのだが、仕かけを上げても下げてもイサギばかりが食ってくる。こうして良型ばかりのイサギを10数尾釣り上げたところで、潮が止まった。
魚探には真っ赤になるほどイサギの魚影があるのに、全く食わない。なので11時、竿を納めた。
釣果はイサギとアジのほかに、マダイと間違えるほどよく引いた50cmほどのイラが1尾、思わずチヌか? と叫んだヘダイが1尾と、ゲストも賑やかだった。