今回は鬼アジを狙って出発
桜の開花と合わせるかのように、紀淡海峡のマダイ釣りが、賑わい始めた。
マダイ釣りも魅力だが、今回は初夏が旬だと言われるマアジに的を絞って、出掛けてみることにした。
今回の相棒は「マアジは、釣りも面白いけど美味しいですよね。だから半分はその味に惹かれて釣りに出掛けるんです」と、苦笑いしながら述懐してくれたのは、シマノのフィールドテスターの吉田昇平氏だ。
吉田昇平(よしだしょうへい) プロフィール
さて、ひと口にマアジと言っても、そのタイプは2つに分かれる。
1つは、内湾の奥深くまで入り込み、瀬に付くタイプ。体高があって、ヒレや体が黄金色に輝いているので、「黄アジ」と呼ばれているタイプだ。
もう1つは、沖の瀬を転々としながら成長し、最大は50cmにもなる「鬼アジ」と呼ばれているタイプで、これが今回のターゲットなのだ。
5時過ぎ、和歌山・加太大橋近くの船だまりから出船する、日伸丸に乗り込んだ。
ポイントは沖ノ島の南西端にあるコイヅキ。潮が緩んできたのか、港を出ると、皆一斉にコイヅキ目指して走り出した。その間に、道具の用意だ。
吉田氏の竿は、シマノの「ライトゲームCI4+64M205」、リールは「バルケッタFカスタム150DH-XG」。私の竿は、「ライトゲームエクスチューン73MH225」に、「バルケッタプレミアム150DH」のリールをセットした。
僕の道具立ての方が、吉田氏の道具立てより、ひと回りしっかりしていて、小さいアタリを取るにはよい。
ただ、アジの口切れを心配するなら、吉田氏が選んだ6:4調子のライトゲームCI4+の方が、アジ釣りには向いているかも知れない。
この日、船長が用意してくれた高仕かけは6本針で、全長は12mあまり。上から4本は若草色の淡いビニールベイト、下2本の針にはグミイカ(赤い毛糸で小型の耳イカをイミテートしたギジ針)が結ばれていた。
加太独特の高仕かけは、これぐらいの長さが普通なのだ。
すでにコイヅキでは潮が動き始めていて、小さな白波が立っている。逸る気持ちを抑えて、仕かけをもつらせないように、捌きながら海底へと下ろす。
高仕かけの釣り方は、タイラバやサビキマダイの釣りと、ほとんどかわらない。仕かけを底まで落とし込んだら、すぐに底を切り、ゆっくりとリールを巻きながら誘い、タナを探るのが基本だ。
と、そんなことを頭に描きながら、底取りを終えて1mも巻き終わらないうちに、いきなり竿先が小さく震えて反応した。
ただ、この釣りも早アワセは厳禁だ。小さいアタリがでても、合わせたいのを我慢して、じっとリールを巻き続ける。
やがて、少しずつ引きが大きくなり、ギュンと竿先が抑え込まれた時に、素早く反応して竿を立てる。ここでしっかりフッキングしていれば、アジの場合は口切れしないよう、一定のリズムでしっかりとリールを巻く。
1投目から、35cmはあるアジがダブルで食ってきた。
これはラッキーと、急いで仕かけを入れ直すと、待っていましたとばかりにアタリがでる。今年の鬼アジは調子が出るのが遅かっただけに、何だか騙されたみたいで落ち着かない。
こんな調子で朝の時合が終わり、潮止まりに入ると、今までの喧騒が嘘みたいにアタリも止まった。
次の潮が動き出すまでに1時間以上掛かったと思う。鏡ような水面がざわつき始めると、ブルッ、ギュンのアタリが再び戻ってきたのだ。
船長曰く、「この潮は長くは続かんよ。まあ、あと1時間が勝負かな」と。この後、言われた通りになった。
お目当ての鬼アジは2人ともツ抜けして大満足だったが、片時も竿を放さず釣り続けた吉田氏は、鬼アジ+大サバ2尾、50cmオーバーのマダイが1尾と、嬉しいお土産が付いた。