名手がタイラバ大会を徹底レポート! 表彰台に上がったのはまさかのビギナー

寄稿:佐々木洋三

佐々木洋三(ささきひろみ) プロフィール

タイラバ、ジギング、バチコンなど様々なオフショアゲームに精通している名手。釣り雑誌や釣り番組などにも多数出演している。シマノアドバイザー、金龍鉤スペシャルスタッフ、Fishing Laboさゝ木代表

3年余り続いたコロナ禍もようやく収束し、余儀なく自粛していた釣り大会が各地で再開されるようになった。

昨今のブームで一層の広がりを見せているのが「鯛ラバ大会」である。何しろ〝落として巻くだけ〟で初めての方でも、女性でも、子供でも〝百魚の王〟マダイと出合えるとあって、人気急上昇。

そんな訳で、4月下旬に岡山で開催された「Fishing Buddy  鯛ラバ大会」にお招きいただいた。

岡山のタイラバ大会

前夜に岡山に入り、主催者の亀山清会長、三宅正浩副会長からお話を伺った。

根っからの鯛ラバ好きが集う釣りクラブFishing Buddyが開催する本大会は、今回で5回目、参加者は毎年増加の一途だと言う。

児島湾や下津井の名だたるタイラバ船の三裕丸、浅野遊漁、内浜丸の3隻をチャーターし、総勢24人が1尾の長寸を競うルール。優勝賞金2万円、参加賞として、かめや釣具岡山妹尾店からたくさんのご協賛をいただいたと言う。

翌朝5時に下津井港に集合し、5時半にスタートフィッシング。私が乗船したのは三裕丸だ。船長の三垣裕二氏とは旧知の仲である。

漁場は港を出て、瀬戸大橋の西側に10分ほど走った浅場からだった。この日は中潮で7時までが下げ潮、7時過ぎから満ちへの転流となる。私の釣座は左舷大ドモだったので、朝のうちは有利なポジションとなった。

魚探にはマダイの反応が映り、ボトムから数巻き目で小さなアタリがあるが、なかなかフッキングしない。

産卵を控え、気難しくなっているのか、まだ産卵に絡んでいない小ダイのショートバイトかもしれなかった。

下津井沖の漁場

下津井港は瀬戸内海のど真ん中に位置し、四国へ渡るの瀬戸大橋の直下に位置する。

東の鳴門海峡、西の豊後水道から入った潮流はそれぞれ豊富な栄養と良質なプランクトンを運び、この瀬戸大橋周辺で交わる。

広大な灘から、島々が密集した瀬戸へと流れ込んだ潮は急流を生じ、東西からの潮を攪拌する。だから魚は身が締まって美味しい。

下津井の魚が美味しいのは、瀬戸内海の潮流の影響だけではない。岡山県は牡蠣と海苔の養殖が盛んで、全国有数の生産量を誇る。

これは中国山地に発する岡山県の一級河川の吉井川と旭川、高梁川の三大水系が里山の豊かな恵みを児島半島の両側に注いでいるからである。

こうした豊かな漁場は世界にも例を見ない。下津井沖の砂地はマダイの産卵場となっており、春先には大型の桜鯛が乗っ込む。マダイも幼魚を育む栄養価の高い海を選んで、産卵に来ているのだ。

余談になるが、下津井のマダコは明石ダコに勝るとも劣らない美味。また、食通の間で話題になる「アオウナギ」は児島湾で釣れるものが極上品とされる。

イカナゴを意識

7時、三垣船長はさらに西側の漁場に船を進めた。日曜日ともあって周辺にはプレジャーボートが数多く出船している。

香川県の遊漁船と岡山の遊漁船は多くの漁場が重なるが、瀬戸大橋西側の漁場には地の利も有利。潮毎に多くのポイントを熟知している。

水深は40m、水色はやや濁り気味だ。

参戦者の多くがカーリータイプのネクタイをデッドスローの巻きで誘う中、私はイカナゴを意識し、ストレートタイプのゴールドゼブラ色のトラッド・ピンテールをセットし、気持ち早めの巻きで誘い上げ。

すると、穂先が震えるようなショートバイトが続き、ようやくロッドが絞り込まれた。船長のタモに納まったのは、45cmの食べ頃サイズマダイ。7時15分、船中でファーストヒットとなった。

鯛ラバ専用PEアシスト(バーブレス)が下唇の薄皮を外側から縫い刺し、バットの柔らかいフルソリッドのロッドだからキャッチできた1尾。

アワセを入れていたら、間違いなく口切れを起こしたに違いない。この刺さり具合から見ても、マダイの活性はあまり高くない。

7時25分、同じ仕かけで2尾目をゲット、サイズアップし、ジャスト50cmだった。

8時5分、私の右隣、大阪から参加された加藤稔氏にマダイがヒット。ほぼ同サイズのマダイが船長のタモに納まった。やはり加藤氏も早めの巻きスピードである。

転流後、徐々に潮が早くなり、海水の濁りも強くなってきた。

濁り対策でネクタイをオレンジゼブラのコブラカーリーにチェンジするとすぐにアタリ。尾ビレがスッと伸びたスタイルのよいマダイだった。

8時半、今度は加藤氏がやはり同サイズのマダイをキャッチ。「シーソーゲームですね!」と照れ笑い。しかし、このサイズではともに入賞にはほど遠い。

満ちの潮にかわり、船は瀬戸大橋東の漁場へ大きく移動、及生岬沖の水深40m前後を攻めた。今度は潮カミとなったミヨシにアタリが集中した。

13時半の納竿まで、8人の参加者が乗船した三裕丸の釣果は、マダイ17尾、マゴチ1尾、アコウ1尾、ニベ2尾となった。マダイは最大で50cmであった。

表彰式

表彰式では、私がご挨拶と講評。それにしても驚いたのは、3位までの入賞者は皆さん、タイラバ入門者。

優勝はタイラバ歴3回目という女性アングラーの武井育未さんが、内浜丸で63cmの大ダイを釣り上げた。

準優勝は61cmを浅野遊漁で釣り上げた白神貴弘氏。この方はタイラバ歴1年半。3位はタイラバ歴がたった2回目という小野晴生氏が内浜丸55cmを釣り上げた。

並みいる強豪やベテランをよそに、入門者が優勝するのも〝タイラバあるある〟。主催者の皆さま、お疲れさまでした。

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