明石タイラバにおけるネクタイとフック考
フィールドスタッフ3人と、明石海峡に向かった。私にはタフな状況下で、仕上がったばかりのネクタイの最終テストという目論見もあった。
梅雨の明石海峡と言えば、岡山や兵庫の河川から流れ込んだ大量の雨水が、比重の軽い水潮となって海面を滑る、いわゆる2枚潮が多発する。
濁りもキツく、ひと流し毎に刻々と潮流が変化する明石海峡。ふた流し目にはネクタイが発する波動も変化し、アタるネクタイやヒットパターンも変わってしまう。
こんなテクニカルな状況で、キモとなるヒットパターンを探り当てた人だけにアタリが集中するのが醍醐味だ。
また、投入したタイラバは、上潮に乗って斜めに流され、少し沈むと今度は、流れの遅い底潮で引き戻される。だから、着底が分かりにくい。
ほかの釣り人に遅れてタイラバを投入すると、たちまちオマツリになる。
今回の釣行には「明石海峡での釣りは初めて」と言うメンバーもおり、小型プレジャーボートでのガイドを得意とする、神戸マリーナのフルコンタクト号、廣末修三船長にお世話になった。
5時半出船、潮は小潮、天気は曇り、風向風速は北2m、南西3m。雨の予報だが、何とか天気は持ちそうだ。ボートは一気に淡路島・岩屋前の漁場へ走った。
早速、タイラバを落としてみるが潮が弱く、30分ほどやってもアタリはない。潮待ちの1時間ほど、タコエギ釣りを楽しんだ。
ファーストヒットは、「明石での釣りも、エギタコ釣りも初めて」と言う本朋也氏。全員がマダコを釣り上げ、さあ、タイラバに切りかえようという時に、小仁鏡智氏が何と2・67kgのランカーマダコをゲット!
あまりのデカさに我々は息を呑み、本人の顔は緩む。この男、何を釣らせてもデカいのを獲るなぁ。
ボートは、潮が効き始めた海峡大橋の南西側へ。何せ釣り人はマックス4人までの小型船。スパンカーもなければ、スラスターもない。そんなボートで明石の複雑な潮流の中を流す操船技術は、なかなかのものだ。
小潮回りのためか、シングルネクタイ1本では潮はまだ弱く、何となくハンドルを巻く抵抗が感じられない。そこで、シングルコブラカーリーのオレンジ金ドットと、レッドゼブラ金ドットのコンビネーションをセットしてみた。その方が波動も強いはずである。
すると、10時半、ボトムでタイラバを引ったくるような明確なアタリで、グッと竿先が絞り込まれた。重量感はあるのだが、マダイのような叩きはない。何だろう?
船長のタモに収まったのは、51cmの肉厚なヒラメであった。アシストフックは1本針で、唇の皮だけを縫い刺していた。
10時40分、今度は山本近史氏のロッドが、コンコンコンと絞り込まれた。
これは紛れもないマダイのアタリ! 産卵からすっかり回復した腹ボテの46cm。ネクタイはシングルコブラカーリーのレッドゼブラ金ドットだ。
よい潮が流れ始めたようだ。船長は潮流を見極め、流す筋を少しずつかえていく。10時50分、今度は小仁氏が43cmのマダイをゲット、オレンジ金ドットだ。
11時10分、再び小仁氏のオレンジ金ドットにヒット、この日最大の58cmであった。やはり、大物を獲る男である。
それから、しばらくは小ダイが続き、12時半、山本氏と筆者に良型がダブルヒット。どちらもシングルコブラカーリーだった。
この日、参考になったのは、船長が記録したバイトや針掛かりのデータだ。使用したタイラバは全員が45gと60g。
・バイト数:25バイト
・キャッチ:17尾
・ファイト中バラシ:3尾
・アタリ(リールはPG):底から3回転、 5、6回転、 10、11回転
・掛かり方:外掛かりまじり
過去、私がタイラバ体験会などを通じて確認してきたデータでは、アタリが断然多いのは1本針。
ネクタイの動きを阻害せず、デッドスローでもよく動く。さらにネクタイの針絡みも激減するからだ。
フッキングパワーも1本針なら針先に100%の力が、2本針なら50%×2と1本あたりのフッキングパワーは半減する。アタリ数を増やすなら、1本針が断然有利だ。
マダイの口に、どのような状況でフッキングしているか、さまざまなパターンを検証してきた。意外なことに上唇を貫通するケースよりも、下唇を外から縫い刺すパターンが多いのだ。
以前、調べた時には7割が下唇の外掛けで、これはバーチカルに釣っているつもりでも、実際には潮流を受けて斜め引きになっており、ネクタイより重いフックが下がって下唇を外から縫い刺している。
だから、アユ針のようにスッと入っていく、バーブレスで細軸の針が有利なのである。
タイラバでは下唇の外掛けも「正解だ」ということを意味している。何より、本職の鳴門のタイラバ漁師が1本針なのも、その証左であろう。
この日、山本氏は3本針を、小仁氏は1本針のバーブレスを使用した。釣り上げた数は山本氏が7尾、小仁氏は6尾とほとんど差がない。ファイト中のバラシも差がない。
最大魚は小仁氏が58cm、山本氏が46cmと、大ダイは多点針を敬遠する傾向にあるのかもしれない。もう少し、データを重ねる必要はあるが、針数による釣果やバラシにそれほど差がないのであれば、あとは美学ということになろうか。
「これを最後の流しにしましょう」と、船長が声を上げた時だった。初めての明石海峡で、岡本朋也氏の穂先が海面に突っ込んだ。
ドラグを緩めにしていたこともあるが、船上にドラグ音が鳴り響く。慎重なやり取りで船長のタモに収まったのは、この日の最大魚に迫る56cm。
岡本氏、やるとは思っていたが、有終の美を飾った1尾だった。
■ベイトタックル
ロッド:エンゲツ リミテッドN-B610ML-S
リール:エンゲツ プレミアム150PG
ロッド:エンゲツ リミテッドN-B610ML-S
リール:オシアコンクエストCT 200PG
■スピニングタックル
ロッド:炎月プレミアム S74L
ライン:PE タナトル8・0.6号
リーダー:フロロカーボンリーダー2.5~3号(ベイト3~4m、スピニング2m)
フック:鯛ラバPEアシストフック「佐々木流IPPON勝負」バーブレスM、L、喰わせ鈎/バーブレス 8号、10号、12号、14号
タイラバヘッド:水深は20~80m前後、ヘッドは45~100gを用意しておきたい。梅雨時は水潮の影響で2枚潮になることも多く、タングステンヘッドがオススメ。
タイラバネクタイ:コブラカーリー、コブラカーリースリム、トラッドピンテール、シングルコブラカーリー(プロト)のレッドゼブラ、オレンジゼブラ、シャインオレンジ