厳寒期の明石・タイラバ事情
この冬1番の寒波が日本列島に襲来する中、タイラバに取り憑かれた釣り師たちの熱い「明石の陣」が繰り広げられている。吹き荒ぶ寒風は「寒」を超えて「痛」となり、リールを巻く手は凍てつき、感覚も遠退く。それでも、手感度を頼りに、筆者は手袋は使わない。
何よりも不思議なのは、海水温の低下とともに深場に移動するはずのマダイが、水深20~40mほどの浅場に居付いているのだ。
淡路島・東浦の通称・防衛省前のツイン鉄塔が聳え立つ沖合には、多くの遊漁船やプレジャーボートが集結。一帯は海苔ヒビの周辺で、海苔を捕食しているマダイがターゲットだ。
日和がよければ、1船100尾を超える釣果も上がっている。3月になれば、淡路島西側の室津沖でも、同様の光景が繰り広げられるはずだ。
なぜ、マダイが低水温の浅場に居付いているのか? 紀淡海峡や鳴門海峡から、海水温の高い南に降りて越冬する従来の天然物に対し、養殖マダイが台風などで逃げ出し、野生化して繁殖したものでないかと、語る漁師もいる。
温暖化が一躍を担っている可能性もある。かつては厳冬期の明石で、これほどマダイが釣れたことはなかった。このように養殖から逃れ、野生化したマダイが厳冬の「明石の陣」を熱くしたのかもだ。
強者たちが集結する、激戦区を攻略
1月12日、明石の老舗「釣り船 魚英」が主催する「第25回魚英ジギングダービー・第17回明石鯛チャンピオンシップ表彰式」が盛大に開催された。会場の設営から、新年会準備まで、家族総出で、おもてなしをするこの表彰式は、大人気。大会参加者は延べ258人に及んだ。
ジギングとタイラバ、マダコなどの明石「まえもん」の美味しい釣果に、左下の囲みの結果発表にも記しているが、豪華な賞品と賞状が手渡された。
集合写真の前列中央はジギングトータル部門の1位の東祐司氏、左が2位の小原和也氏。右は明石鯛トータル賞の優勝者で54尾釣り上げた小川裕久氏だ。彼はマダイのみならず、タコ部門でも5~8月の4カ月に392ハイ、1日で最高87ハイを釣り上げた強者だ。
淡路牛のすき焼きが振る舞われた新年会で、こうした常連の皆さんのお話を伺うのも勉強になる。(表彰式の詳細は、魚英HPで)。
2月15日、1週間ほど続いた寒波も緩み、ようやく出船できる日和となった。6時、港に集合すると、何と昨年のチャンピオンの小川裕久氏も一緒だった。魚谷吉伸船長の操船で一路、東浦を目指す。
明石海峡大橋を潜ると、澄み渡った空に昇る、日の出が美しい。同船した、チームササラボのメンバーは、ご来光に手を合わせ、好釣果を祈った。この寒波の前までは1船100尾を超える釣果もあっただけに、胸も高まる。
海苔はマダイの大好物。海苔の養殖業者は、マダイの放流を嫌がると言うが、海苔かマダイか、資源保護も簡単ではない。
釣り上げたマダイは肛門から海苔をそのまま排出することがあるが、海苔自体は消化されず、海苔に付着しているプランクトンを吸収しているのだと教わった。エサの乏しい厳冬期だけに、大量の海苔を捕食し、養分を補っているのだ。
7時、魚谷船長は防衛省鉄塔前の水深20mに船を着け、「やって〜」の合図で、タングステン45gのヘッドにセットした、シングルコブラカーリーを落とした。
海面を注視すると、潮カミで操業している海苔船から溢れた海苔が、浮遊してくるのが分かる。マダイはこの海苔を求めて、宙層まで浮き上がっている。
幅広の黒系ネクタイを、漂わすように引いてくるのがコツだ。着底から3巻き目に、「モゾっ!」とした不明確なアタリ。ネクタイだけを噛んだアタリは不明確なアタリ、フックを引っ張ったものは明確なアタリと区別し、仲間に伝える。魚の活性が判断できるからだ。
不明確なアタリの時は、巻きスピードを落とすなど、微調整を施す。
魚谷船長は、今度は水深40mの沖合に船を移動させた。この流しでは船中アタリなし。
次に、35m前後の水深を攻めるが、アタリはなかった。寒波の強風で、海水温が下がり過ぎたのだ。
海水温はマダイの活性の知るバロメータ。一般に12度を下回ると、マダイの活性は著しく低下すると言う。さらに10度を下回ると、ほとんどタイラバを追わなくなる。船長に伺うと「8度」と言うから、厳しい訳だ。
目の前に落ちてくるものには反応を示すものの、タイラバを追い掛けるほどの元気はない。だから、フワーッと落ちてくるサビキ仕掛けには反応するものの、タイラバには、なかなか口を使わない。
前日に9度だった海水温が10度に上がればマダイは口を使うこともあるし、12度あった海水温が11度に下がると、全く口を使わないという日もある。絶対温度だけではなく相対温度、つまり海水温の変化に注意を払うことも肝心だ。
低活性の中、ボトムでジッとしているマダイを狙うか? 浮き上がったマダイを狙うか?
筆者が選んだ戦略は、ボトムから6、7回転は超デッドスローのリトリーブ。それからピッチを上げて、水深の80%までは執拗に巻き続ける。水深20mならば16m、水深50mならば40mは巻き続けよう。
この時期、ゆっくりと追い掛けてきたマダイが、だいぶ上の方でバイトすることもあるのだ。しぶとく巻き続けることができるか否かで、釣果が分かれる。
ボトムをネチっこく攻め、水深の80%をややハイピッチで巻き切るのは、粘りと忍耐の釣りだ。
9時28分、デッドスローからスピードをかえた途端に、小ぶりのマダイがヒットした。
ネクタイカラーは、先週も好調だったブラックベースのシリコンに金色のゼブラを配したもので、明石では「マツケンサンバ」カラーとの愛称もいただいたもの。これで肩の荷も降りた。
それから1時間後の10時49分、今度はボトムスローでマゴチをキャッチ。この2尾がこの日、船中で唯一の釣果となった。
日によって活性にムラのある、手強い冬季のタイラバ。それをマスターできれば、タイラバ釣りに自信が付き、スキルアップに繋がること、間違いなし。
3月には室津沖にも型のよいマダイが乗っ込んでくる頃だ。厳冬の明石沖タイラバ釣りにもチャレンジしてみよう!
3月からは魚英名物の、極上の肉厚カレイ釣りも始まるぞ!
筆者の使用タックル
ロッド:エンゲツ リミテッドFS B66ML-S
リール:エンゲツ プレミアム150PG
ライン:PE タナトル8・0.6号
リーダー:フロロカーボンリーダー2.5号(4.5m)
ロッド:エンゲツ リミテッドN-B610ML-S
リール:オシアコンクエスト200PG
ライン:PE タナトル8・0.6号
リーダー:フロロカーボンリーダー2.5号(4.5m)
フック:鯛ラバPEアシストフック「佐々木流IPPON勝負」バーブレスM、L、喰わせ鈎/バーブレス 8号、10号、12号、14号
タイラバヘッド:炎月バクバクTG 45、60g、炎月タイガーバクバク30、45、60g
タイラバネクタイ:シングルコブラカーリー、コブラカーリースリム、トラッドピンテール