瀬戸大橋東側の海域で今年もマダイの乗っ込みが始まった。腹には真子や白子がパンパンに詰まり、産卵も間近だと思われる。刺し身もさることながら、白子や真子を美酒の佳肴に堪能できるのが桜ダイの楽しみだ。
毎年、不思議に思うのだが、マダイは三々五々乗っ込んで来るというイメージではなく、ある時期に突然釣れ始める。
それも瀬戸大橋に近い海域から始まり、乃生沖、大槌島、小槌島、男木島、女木島へと漁場は徐々に東へ移動していく。と言うことは鳴門方面からではなく、西の伊予灘方面から乗っ込んできた魚ではないかという予感もする。
瀬戸大橋から小豆島にかけての一帯はタイラバ釣りの好漁場。風光明媚な島々が形成する瀬戸(海峡部)や灘は、潮汐によって、さまざまな潮流を引き起こす。
潮が飛ぶと、島の裏側には反転流も発生する。船長は潮が速ければこうした反転流に、潮止まりには瀬戸の本流筋に船を入れる。
潮によって生じる無数の漁場を瀬戸内の船長たちは熟知しているので、マダイのアタリが続き、釣り人は飽きない。
さらに漁場の水深はわずか10~50mと浅く、アタリは明確だ。浅場だけに、元気なマダイがロッドを絞り込むファイトは強烈で、細仕かけでのスリリングなファイトに釣り人のノドはカラカラになる。
速い潮流は溶存酸素を増やし、魚類のエサとなるプランクトンも豊富である。だからマダイの味も極上で、アフターの釣魚料理を家族で味わうことができるのも瀬戸内の魚の魅力である。
そんな瀬戸内海の乗っ込みマダイを求めて、4月初旬に香川県高松漁港のレッドスナッパーⅡに乗船した。
船長の古川雄也氏は、若手ながらも熱心に漁場を開拓し、ベテラン顔負けの好釣果を叩き出す名船長だ。
古川船長は「朝の上り潮が残っているうちに攻めたいポイントがある」と、6時前に港を出船。瀬戸大橋方面に船を走らせ、目指す乃生沖には1番乗りとなった。
4月だと言うのに、上空に居座る寒気の影響で風は強く、想定外の寒さ。船長に伺うと、前日は朝にマダイのラッシュがあり、全員が複数安打。
トップは8尾、船中トータルで30尾を超える好釣果。それに66cm、63cmの良型がまじったと言う。期待が持てそうな海況だ。
ジャンケンで、私のポジションは左舷のヘ先に。冷たい東風が強く、船はトモから西に流れる。上り潮では1番不利な潮シモのポジションとなってしまった。
すると、左隣から小気味のよいドラグ音が鳴り響いた。TV番組「おとな釣り倶楽部」に出演していた弥園奈津美さんが、コブラカーリー(オレンジ)で美しい桜ダイを釣り上げた。
出典:シマノ
船長によれば、ネクタイはカーリー形状がよく釣れているとのことだったが、私はプロトネクタイのテストも兼ねて、オレンジのトラッド・ピンテールのセット。
イカナゴを意識したやや早巻きでリトリーブし続けると、下から12巻き目で竿先を震わすような小さな前アタリがでた。
少し巻きスピードを弛めて、モゾモゾとしたアタリを感じつつ、さらに巻き続けると、そこから10回目で竿先が絞り込まれた。
今回発売となったエンゲツXR N-B63ML-Sはティップも軟らかく、ベリーからバットの曲がりも滑らかで、こうした前アタリで弾くことなく、確実にマダイを乗せてくれるのが嬉しい。
潮が速くなり、アタリが遠退いたので、コブラカーリー(オレンジ)にチェンジ。するとすぐに、良型のマダイがヒットしてきた。
潮が速くなると、マダイはボトムに張り付く。しかし、マダイはスローの巻きには反応してくれない。
炎月プレミアムや炎月CTならば、カウンターに表示される巻きスピードが3~4のスピードによく反応してきた。
しかも、巻き方にちょっとしたコツがあった。
タイラバが着底するや否や、ハンドルを2、3回早巻きし、ラインの弛みを取るとともに、海底からタイラバが飛び上がるような演出をする。
そこから一定のスピードで巻き続けるのだが、この海底からジャンプをする演出で、マダイの関心を惹き、タイラバを追い掛けるスイッチが入るようだ。
産卵前のこの季節、海水温の低下など、ちょっとした要因でマダイの活性が下がることも。食い渋った時に絶対に有利なのが1本針である。
針は1本の方がネクタイがよくなびいて、マダイを誘う。2本にすると、フックの重さでネクタイの動きを阻害する。最悪はネクタイ絡みを引き起こす。
私はアシストラインに柔らかいPE5~6号を使用し、ネクタイの動きを邪魔しないようにしている。
フックは軽量で、刺さりのよい金龍鉤の鯛ラバ専用アシストフックバーブレス8号か、10号がオススメだ。
バーブレスなので、ネクタイに刺さってもネクタイを痛めず、フックを外すことができる。独自のネムリ形状で、唇を縫い刺してくれるので、バレる心配も少ない。
この日、絶好調の弥園さんのロッドが大きく絞り込まれた。勢いよくドラグが引き出され、なかなか近寄ってこない。そして、痛恨のラインブレイク。かなりのサイズに違いなかった。
タイガーバクバクの80gに、今度はコブラ・スリムカーリー(レッド)とバーブレス8号を結び直した。
すると、いきなりロッドが絞り込まれ、勢いよくドラグを引き出したのは67cmの大ダイであった。
同じ流しで、この日「初めてタイラバ釣りをした」と言う辻田氏が73cmの大ダイをキャッチ。全員が複数安打を達成し、私はギリ60cmオーバーの61cmをコブラカーリーでゲットすることができた。
この日のカギは、リールの巻き方、巻きスピード、そして、フックを一本にして、ネクタイをよく動かすことであった。
瀬戸内の乗っ込み桜ダイ、皆さんもぜひ、堪能してくださいね。